#16 学級担任と生徒会担当教師
同じ頃、職員室では……。
この私立白川大学付属高等学校は中高一貫校のため、そこには中学校と高等学校、両方のたくさんの教師が次の時間の準備をしているため、少し慌ただしい。
「渡貫先生、お疲れさまです」
「お疲れさまです、佐藤先生」
「あの、1つ訊きたいことがあるのですが……」
そんな慌ただしい時間帯に佐藤は椅子から立ち上がった、渡貫と呼ばれた男性に声をかけた。
彼は彼女に「佐藤先生、なんでしょうか?」と問いかける。
「生徒会役員についてお訊きしたいのですが……」
「もしかして、もうすでに役員に入りたい人がいるのですか?」
「えぇ。私のクラスに1人だけですが、生徒会役員をやりたいという生徒がいまして」
渡貫は佐藤の話に耳を傾ける。
彼は「ほう……」と軽く相槌を打った。
「そんなに生徒会役員をやりたいという生徒が速やかに出てくるとは思いませんでした。去年は締め切り間近に数名入った状態でしたので」
「ところで、委員会活動と生徒会役員の「二足のわらじ」と言ったらおかしいかもしれませんが、そのような学生がいるのかなと思いまして……」
彼女は渡貫に今現在知りたいことである「委員会活動と生徒会役員の並行は可能か」について訊いてみる。
おそらく、彼からは「不可」と言われるかもしれないが、修以外の生徒は全員委員会が決まっているにも関わらずに、彼だけ決まらないというのは……と思っていたのかもしれない。
「その質問は毎年、新入生の全クラス担任から訊かれます。新入生はまだ高校生活が始まったばかりというわけで、委員会活動と生徒会役員の両立は不可でしょう」
「……そうですか……」
彼からの答えを聞いた佐藤はやはりそうだったかと思い、そのように言うしか方法がなかった。
「あっ、授業が始まってしまいますので、戻りますね! 渡貫先生、お忙しい中、ありがとうございました!」
彼女は左手首につけた腕時計を見、慌てて教室に戻ろうとする。
その時、「佐藤先生」と渡貫が佐藤を呼んだ。
彼女は疑問に思いながら、「ハイ?」と返事を返す。
「その生徒は女子生徒ですか?」
「いえ。男子生徒ですが……」
「一応、役員に伝えておいた方がいいかなと思っていましたので」
「それはなぜですか?」
「佐藤先生も存じ上げているとは思いますが、この高校の生徒会役員は女子生徒が1人しかいませんので」
「確かに、対面式は女の子は1人しかいなかったですね」
「その生徒に伝えておいてください。よろしくお願いしますと……」
「分かりました。それでは、失礼します」
佐藤は彼にそう言うと、「早くしないと!」と言いながら、自分の受け持つクラスへ戻っていった。
2016/12/22 本投稿
2016/12/25 サブタイトルの話数の誤字修正
※ next 2016/12/25 3時頃予約更新にて更新予定。