#10 入学式と対面式 その6
講堂の壇上に5人の男女が並んでおり、新入生を左右から挟むように座っている一部の在校生の表情が一瞬で凍りついている。
在校生は「この5人が今年度の主要殺戮メンバーなのか」と察したようだ。
一方の新入生は少しだけざわめき始めている。
「うわー……うちの高校の生徒会は逆ハーレムじゃん……」
「本当だ」
「1番右側にいる女の子、去年のミス白川らしいぜ?」
「確かに可愛いよな……」
「それに対して、男子はあまりパッとしないよね」
「言えてるー」
「そうかなぁ……?」
修の周りでもひそひそと話していた。
その時、彼は壇上に立っている女子生徒と視線がぶつかったような感覚があり、彼女もその感覚があったらしいが、すぐに視線をそらす。
「そ、それでは、左側から1人ずつ紹介をしていきたいと思います」
その女子生徒が緊張しているせいか一瞬だけかんでしまった。
彼女は小声で「お、お願いします」と1番左側に立っている眼鏡をかけた男子生徒にマイクを手渡し、少しかがみながら、元の立ち位置に素早く戻った。
「生徒会長の高橋 雄大です」
「副会長の小笠原 達也です」
「書記の木沢 聡です」
「会計の木崎 政則です」
マイクは順番に回っていき、再び彼女の手に戻ってくる。
他にも話してほしいことがあったけど、それで時間が圧したら話にならない。
そのため、あえて役職と名前だけで済ましたのだろう。
「本日のこの対面式の司会進行を務めています、副会長の小笠原 鈴菜です」
自分のことを鈴菜と呼んだ女子生徒がマイクを受け取り、話し始めた。
在校生がいる席から彼女の熱狂的なファン(?)であろう男子生徒が「鈴菜ちゃーん!」「今日も可愛いよー!」などと叫び声が響いている。
「静粛に。この式典のあと、体育館裏にきてくださいね?」
鈴菜は彼らに向かってやんわりと脅し文句らしきものを口にした。
エスカレーター組の新入生はこの言葉に対して驚きを隠せない模様。
一方の外部生はなんのことか分からずにきょとんとしていた。
「以上で生徒会役員の紹介を終わりにします。新入生を含めた正式なメンバーは生徒総会の時に紹介できると思います。一応、主要であるこの5名でよろしくお願いします」
「「よろしくお願いします!」」
「さて、毎年恒例ですが、今年度も生徒会役員の募集をさせていただきますので、新入生はふるってご参加していただけると幸いです!」
最後に彼女は新入生に向かってニコッと微笑みかけるように加入を促す。
修は視線がぶつかった先輩である鈴菜に対して少しだけ胸の高鳴りが起こった。
周囲から言われていたように、「彼女の可愛さ」だけではなく、「彼女の魅力」を感じてしまっているようだ。
「…………(どうしようかな……この高校は委員会とかは全員入らなきゃいけないのかな? まぁ、入るかどうかは僕次第だけどな……)」
しかし、この高校の生徒会は「闇組織」という噂がある。
彼はそんなことはありえないだろうと肩を竦めるのであった。
2016/11/10 本投稿