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静かなひとへや  作者:
8/9

8.見つからない

ばさばさと嵩張る、手の内の紙束が煩わしい。これが貴重な情報源で、そこそこに大切なものである事はわかっている。あまりぞんざいには扱わず、扱えず、だからこそ余計に煩わしい。

何故、これほどまでに大きいのか。読みにくい事この上無い。いらない記事などいくらでもありそうなのだから、もっと小さくすれば良いのに。乱暴に床に投げおいて、小腹を満たそうとパンを漁る。メロンパン、クリームパン、揚げドーナツ、砂糖だらけの甘ったるいパン。

生き物どもが、勝手に買って来たのだろう。やけに賑やかな形相の袋が私を迎えた。ひどく甘そうで飾りに凝った菓子パンばかりで、私の好みとは程遠い。小さい生き物の趣味だろうか。そうだとしたらかわいらしいが、大きい方の趣味だとしたら、それはなかなか気味が悪い。

適当に、手元のパンを頬ばった。じんわりと広がる、行き過ぎた甘み。まずく嫌いだと感じたけれど、私はそれをもう一度噛んだ。

床に座り、屈んで新聞を凝視する。

手元が暗く、文字は読めない。仕方が無いので写真だの絵だのを追い求め、バラバラと乱雑にめくっていく。大きな生き物の写真、もしくは小さな生き物のか。どちらか一つでもありはしないか。

最後までめくり終えたところで、それはどちらも見当たらなかった。何だ、私に、わざわざ取らせていておきながら。とんだ期待外れだと一人嘆息をし、新聞を屑箱の方へと投げ飛ばした。役に立たなかったのだから、わざわざ返しに行かなかろうが構わないだろう。私の望みに、答えてくれはしなかったのだ。義理立てをする理由もない。

きちんと日が昇ったら、もう一度テレビをつけてみよう。それでやつらのニュースを探して、見当たらなければ睡眠をとろう。

どうせならば、全く見当たらないほうが。そのほうが、却って気持ちが良いかもしれない。

ほんの少しの情報だけでは、決して気分は晴れないだろう。私は、もやが溜まるなど嫌だ。全てを教えてくれるのなら、それに勝る事はないのだけれど。

随分と珍しいことに、眠気はやってこなかった。ただただそのまま座ったまま、長い時間が経過していく。

そして随分と久しいことに、退屈だと、そう感じた。ああ、嫌だ嫌だ。何が退屈なものか。素晴らしい事だ、こうしていられるのは、素晴らしい事だ。どうにか自分を言い聞かせようと言葉を駆使し、私は頭を幾度も叩いた。そのうちに、強く頭が痛んでしまって、私はそうする事をとうとう止めた。

けれど頭の痛みは晴れず、じんじんとしつこく残っている。耳鳴りが、鳴っていた。静かに響く耳の音は、ヘッドフォンから流れていた、雑多の音を全て殺して、私の中に、その部屋の中にこだましていた。

私は寝る気も無くしてしまって、音を聞く気も無くしてしまって、その場に座って、生き物達の寝顔を見た。安らかだった。すやすやと、寝息を立てて眠る姿は、それを形に表しでもしたかのようだ。

小さな生き物の、小さい頭に掌を置いた。静かに、とても静かに、その手を私は、左右に小さく動かしていた。このまま、握り潰してやろうかと。頭の中を、そんな事が横切った。そうすれば、さして強くない私の力で、この子の脳は飛び散るだろう。想像ならば、いとも簡単に素早く出来た。何度も何度も、頭の中でイメージ映像は反復される。

私は、手にありったけり力をこめてみようとして、息を吸い込み、手に集中した。そして 何もしなかった。

もう一度、力をこめてみようとして、またしてもできず途中でやめた。腹だたしくて、いらだたしくて、大きな生き物のばかでかい背中を、力の限りに蹴飛ばしてやった。

びくりともせず、大きな生き物は寝息をたてる。気がつく様子はまるでない。それが妙に気に食わなくて、私は何度も背中を蹴った。

はい、63日ぶりの更新でした…orzいい加減執筆スピードどうにかしたい…。見捨てず読んでくださる皆様、本当ありがとうございます…!

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