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静かなひとへや  作者:
7/9

7.脳をうごかす

気がつけば、テレビの前に座り込んでいた。アナウンサーが喋るばかりで、なかなか字幕が出てこない。不親切な番組だ、私のことなど考えてもいない。

くいいるようにして見つめていても、もう、生き物達の写真も話題もでてきはしない。

何かの間違いだったのだろうか、とも思ったけれど、私は眠らずにそこにいた。テレビの画面が、不規則にゆれる灰色になる。それでもまだ、私はそこに座っていた。

砂嵐が映る画面は、騒々しくて少し苛立つ。寝不足が理由か、苛立ちが理由か。頭が痛むのを感じながら、砂嵐から目を反らした。理由もわからず、苛立ちを感じる。

手元の物を、確認もせずに掴み上げた。乱暴に、力の限りに壁に投げる。それは数日前に食べたパンの袋で、力無くぶつかりへなへなと落ちる。

もちろん、そんな事をしたからと言って苛立ちが消えるはずもない。かえって、私は苛立つ事となってしまった。

ああ、もう。

寝起きからして最悪な事だ。二度寝をしようにも、眠気がやってきていない。形ばかりのあくびをし、その虚しさにまた苛立つ。

でたらめにチャンネルを変え続けて、番組を放送しているところを探し続けた。けれどろくなものがなくて、結局スイッチを切ることとなった。

もしやこのテレビは、私を挑発でもしているのではなかろうか。なんにしたって、私に対して不親切すぎる。

私は苛立ちを抑えきれぬまま立ち上がり、とりあえず腹を満たそうとパンを漁る。今までは節約やら何やらのために、ひどく小食になっていた。だけれど、成金じみたデカブツがバックについた以上、そんなしみったれた節約をする意味はない。

久々に口を大きく開き、パンの半分ほどを口に含んだ。表面に、うっすらとカビが生えていたのが目に入る。たいした問題ではないのだけれど、やはり多少は不愉快になる。

何もつけず、生のままで食パンを次々と食べていく。三枚、四枚といったところで、腹がいいかげんに苦しくなった。けれど、これを食べ終えてしまえばまたやる事もなくなってしまい、苛立ちが残るばかりになる。

私は無理矢理にパンを口に押し込んで、無理矢理に何とか喉を通した。時折突っかかりむせてしまうが、今は水道代とて節約はしない。ああ、裕福とは素晴らしきかな。

パンを全て詰めてしまえば、とうとう真実やる事が無くなる。手が所在無く、だらり垂れる。パンの袋が、クシャリと音をたてて潰れた。

見るべき物も見当たらず、やるべき事などあるはずも無く、私はその場で途方にくれた。

途方に暮れて暇を弄べば、先程の映像が頭をかすめる。テレビの画面に映し出された、そこで寝ている生き物の顔。

あれはきっと、ニュースと呼ばれる類いの物で。そこに出演しているからには、こいつらが何か非凡な事に関わっているという事で。

その事について考えていると、ふいに、気持ち悪さが全身を巡る。乗り物酔いでもした気分だ、頭がふらくらと落ち着かない。これは、眠さのせいだなどでは無いだろう。ええい、慣れない事などするべきではない。おまけに、この生活に入ってからは、私はろくに脳みそを働かせてはいないのだ。

脳みそが悲鳴をあげる前に、さっさと考える事を放棄してしまえば良いのだろう。けれど、今はそうはしていたくない。

先程のニュースの、こいつらの。どうしてこいつらが出ていたのか、それを私は知らなければ。やっかい事に、知らず知らず巻き込まれるなどまっぴらごめんだ。

しかし、困ったことに情報源が何も無かった。新聞などは取っていない、パソコンだなど売ってしまった、雑誌だなんて買うはずも無い。

・・・隣の部屋の住人は、ニ、三日留守にすることもザラだ。勿論、その間新聞は放置されている。

無駄に重いドアを開き、そこの様子を伺った。郵便受けから飛び出ている、いくつもの紙の束。良かった、どうやら留守にしておいてくれていたようだ。今日の私は運が良い。

紙の束を全て纏めて引っこ抜いて、その場でちらりと一面を伺う。暗闇でろくに見えはせず、写真も誰が写っているのかまるで判別ができない。仕方が無い、部屋に戻って読むこととしよう。

何も、盗むというわけではない。ただ、ちょっと拝借するだけだ。有益な情報が無ければ、すぐに戻しておいてやろう。

辺りに誰もいないことを確認し、私は自らの部屋に戻った。顔もわからぬ隣人よ、今日はあなたに感謝しよう。

春休み中とかいいつつ、相当遅くなってしまいました七話目です。

高校生活は楽しいですが忙しいです・・・。今後も一ヶ月とかあいてしまったりするかもしれませんが、どうか見捨てず見ていてくださると幸いです。

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