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静かなひとへや  作者:
4/9

4.可かしなひととき

小さな生き物は、私から目を逸らさなかった。何という、珍しいことだろう。

そのままで、長いこと見つめてみた。それでも目を逸らしはしない。少し感心するのと共に、私は少しだけおかしく思った。

何故、この生き物は今に限って目をはなさないのだろう。特に、これといってきっかけらしき事もなかったはずだ。

一応考えてはみたのだけれど、理由はわかりそうにもなかった。ただの気まぐれか何かなのだろうと自己完結させ、部屋の奥へと戻る。

流石にもう、寝る気はおきない。私は、愛用しているクッションの上に腰を下ろした。

小さな生き物は、まだ私をみている。

視線を送り返してみる。生き物は、特に変化をしめしはしない。

不思議にはおもった。けれど、それで何か害があるというわけではないのだ。私は、小さな生き物の事は放って置くこととした。

いつも通りに、音だけを垂れ流しながら生活した。いつも通りにくつろぎ、いつも通りに食事をした。

食事の時には、また私の物を食らう気ではないのかと気を張りもした。けれど、大きな生き物から与えられでもしたのだろうか。小さな生き物は、私の近くで、私の買った覚えのない物を貪っていた。

おまけにそれは、私の食べ物よりもはるかに食欲をそそる物であるように見えたのだ。その事が少し気にくわず、ところとごろで邪魔を仕掛ける。大人げがないのは、一応、承知の上の事のつもりだ。しかし奇妙な事に、小さな生き物はそれをも喜んでいるように見えた。

もしかすると、そういった性癖でもあるのだろうか?

私がぼぉとしている時、小さな生き物はずっと私に纏わり付いていた。本当に、昨日とはえらく違う行動をとる奴だ。

ひたすらに口を動かし続け、時折、私が表情を変えればはしゃいだ。もちろん、小さな生き物とは関係がない事で、私の表情は動いたのだか。日が、落ちている事に気が付いた。何時頃になったのだろうか。と、とうの昔に売り払っている時計を探した。時計などあるはずがないと気が付いたのは、何度か視線が部屋中巡回してからの事だった。

小さな生き物は、まだ私の側にいる。

そして変わらず、疲れるだろうに口を動かす。いい加減、私に意思が伝わっていないと、気が付いてもよさそうだけれど。

小さな生き物の、生暖かい体温が欝陶しい。けだるさを感じながら、無駄だと知りつつ振り払う。けれど、感触がない。そう気付くと同時に、欝陶しい体温が離れた。

避けたのだろうか。怪訝に思い、顔を上げる。

私の側に、小さな生き物はいなかった。顔を赤くほてらせて、玄関へと駆けている。

大きな生き物がいた。

慎重に、丁寧に、恐る恐ると小さな生き物を撫でているその生き物は、片手にこじんまりとしたダンボールを抱えていた。私の姿を見ると、目も合わせぬまま頭をたれる。そして怖ず怖ずとすまなさそうに、私にそれを差し出した。

なんのつもりだ。

私の考えている事が顔に出でもしたのかどうなのか、大きな生き物は、滑稽なほどに必死の形相になり、そのままの状態でジェスチャーを始めた。一応、私に喋りかけても無駄だと察してはいるらしい。

大きな生き物の手は、箱の真上で秩序なく動き回っていた。ダンボール箱を開けろ、という仕種だろうか。

意図を掴みきる事はできないまま、ダンボールを奪い取る。

嬉しそうな顔。

私の推測は当たっていたようだった。大きな生き物に、安堵の表情が浮かぶ。

ハサミなどありはしないのだ。私は力ずくにテープをはがし、剥がれたものはそこらに投げた。

邪魔な物達を剥がしきり、箱の中を確かめる。

黒い箱があった。人の頭が二つ三つ入りそうな、丸みをおびた黒い箱。

私が不覚にも驚いていると、小さな生き物がよってきた。

随分と輝いた眼をしていて、黒い箱を見てはしゃいでいる。

邪魔だったのでそれを押しのけ、段ボール箱から黒い箱を取り出した。それについで、細々とした物達もが沸いて出る。

欝陶しい。

こんなものを、自分でどうにかしようだなど、思えるはずがない。

もとはと言えば、大きな生き物が持ってきた物だ。

一式を押し付けた。自分で、どうとでもするがいい。

大きな生き物は、一瞬、驚いたようだったが。けれど、すぐにそれの設置に取り掛かった。小さな生き物が、その近くをうろちょろとしている。しばらくたつと、設置が終わったのか、両手を上げて喜んでいた。

流石に気になったので様子を見に行き、しげしげと眺める。

スイッチを押せば、画面が光り。テレビなどを久々に見れた。

大喜びの生き物達が、目の端に写る。よっぽどにこれが嬉しいらしい。

死んでもいいと言わんばかりの喜びようを眺めながら、電気代はどうしようか、と。そんな心配を、ぼんやりとした。

…やたら遅くなってしまいましたが、四話目ようやく完成しました。

次回辺りからは話し進む予定です、あくまで予定ですが。一応プロットじみたものはあるので。こんなのにも(笑)


受験がおわったら、俺、小説書くんだ…(

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