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静かなひとへや  作者:
2/9

2.小さないきもの

目覚めると、眼前に他者の顔があった。

反射的に手が出、それを渾身の力で殴り付ける。倒れ、悶絶するその生き物。

その姿を見た事で、私は思い出す。そういえば、昨日これを拾ったのだったと。殴ってしまった、それを確認する。あぁ、これは小さな方だだ。か弱そうな様をしているというのに、かわいそうな事をしてしまった。おまけに鼻血をだしている、ううん、反省でもしようか。

私は念入りにヘッドフォンを付けた。この部屋に他者がいると言う事は、私の望まない音が、耳に届いてしまうかもしれないと言う事だろうと考えて。

テーブルの上の袋から、一枚の食パンを取り出し、口に含む。少し乾燥している様で、旨い言いがたい味だった。

布団に包まりながら、いつも通りに食事を終える。その間中、視線が突き刺さってはいたけれど。いつも通りはいつも通りだ。私が、そう思っているのだからそうなのだ。

視線を返してみると、目を逸らされる。警戒でもされているのだろうか。

私が視線を外すと、視線は私の方へと戻ってくる。それに気付いた私が視線を返せば、また目を逸らしていく。よほど、私と目を合わせたくないらしい。嫌われるようなことでもしたのだろうか。心当たりは、ある様な無い様な、微妙なところだ。

尿意を感じ、むくりと起き上がる。小さな生き物が、震えたのが目に入る。けれど、構うつもりは無い。すみやかに用を足した。


部屋へ戻ると、まっさきに小さな生き物が視界に入った。何と言う事か。私の貴重な食糧を貪っている。

とりあえず、生き物を食糧から引きはがす。ついでに、軽く殴ってもおく。なにせまだ小さいのだ。躾は必要だろう。

あぁ、六枚も入っていたというのに。もう、四枚まで減ってしまった。小さなナリをして、大食いな奴だ。私ならば、一枚を三度に分け食べるのに。

小さな生き物は、部屋の隅で挙動不振にしている。注意の声を出そうと息を吸い込み、そして気が付いた。声を出す事は、久しくしていなかったのだったと。仮に、声を出していたところで、それは私に聞こえていはしないのだ。

「………。」

声の出し方は、これでよかったのだったろうか。小さな生き物の反応からでは、わかる事ができなかった。

どうするべきかと、一瞬だけ悩む。

書いてつたえよう。

それが頭に浮かぶまでに、しばらくの時間がかかった。ばからしい。他に何があったというのか。

近くにあったボールペンを手にとり、机に殴り書く。


「たべものはたべるな みずはのむな でんきはつかうな」


ボールペンを適当な所へとなげとばし、書いた言葉を生き物へと見せた。不安げな顔をされる。


「じぶんでかってになんとかしろ」


つけたした言葉は、そんなふうだった。この生き物にまで金をかけたりしてしまえば、私のほうが飢え死にしてしまいそうだ。

生き物が飢え死にするのは構わないけれど、私が飢え死にするのであれば大いに構う。大いに困る。

あぁ、けれど死体はできれば見たくない。そうなる前には追い出そうか。

考える事にすら気だるさを感じ、布団に包まった。今や此処で無ければ、私は物事を考えられないも同然になってしまっているのだ。たまに思考が強制終了されてしまうのが、問題ではあるけれど。

どうしたものか、緩く頭を働かせた。気晴らしに、寝返り等も打ってみる。

左手が、生暖かい物にあたった。妙に軟らかい、不快な感触。

「………。」起き上がるのが、億劫だった。

このまま放置しておこうか。放り出してしまおうか。私は頭を動かした。そこにいるであろう生き物を、視界におさめるべくにして。

小さな生き物はそこにいた。今は私から目線を外す事もなく、ただひたすらに、気持ちがよさそうに眠っていた。

随分と気持ちがよさそうで、うらやましく、妬ましく、そして多いに気に入らない。

ああ、畜生、負けるものか。私だって、もっと気持ちがよくなれるのだ。負けるものか、と。私は気張り、眠りにつく。悔しい事に、あまり、気持ちがよくはなかったけれど。

2/29に細部修正。何か色々と酷すぎやしいかと我ながら思ったため。

だけど大して改善してない…また後でやりますね。

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