『超能力バトルを砕く!』5
相変わらずの短文ですいません
なんとか着替えを乗り越え、自分の教室(雪菜は隣のB組)へ登校した。学園内に寮があるため、登校というのとは違う気もするが、あまり気にするところではないだろう。
「おはよう」
「よう、響」
教室に入った刃哉に真っ先に声をかけてきた響に挨拶を返し、隣の席に腰掛ける。
席の位置としては、後ろから2列目の左から3番目。左隣には響が座っており、右隣には赤髪のツインテール少女が本を読んで座っていた。
髪の色から推測するに、炎系だろう。まあ、見た目からして面倒くさいオーラが滲み出ているので、話しかけはしない。
「今日の授業用に服持ってきたか?」
「服?」
「そう、服」
鞄を机の横に掛けて座った刃哉に、響が体を横に向けて話しかける。
「今日の午前中の授業は模擬戦だぞ?」
「そんなのやるのか」
「うん。それで服装は自由なんだけど……その様子だと用意してなさそうだね」
「まあな」
そもそも授業には何があるのかを知らない。教科書も渡されていなければ、時間割りも聞かされていない。
研究所上がりじゃないからかもしれないし、後で先生にでも聞いてみるとしよう。
「まあ、俺は別に制服で大丈夫だしな」
「武器は使わないの?」
「使わないよ。逆に邪魔になる」
直接拳を当てる戦闘スタイルの刃哉にとっては、武器を使うという考え自体がなかった。
鍛えていると言っても人並み程度の筋肉しかないため、変に重たいものを持っては移動が遅くなる。それに、武器を使うより殴る方が効率的である。
「お前は何か使うのか?」
「色々使うんだけど……今日はこれかな」
響が鞄から取り出したのは短い棒だった。手元のボタンを押すとシャキンと伸びて、40センチほどの長さになる。
「警棒か」
「うん。電気を通しやすい金属で作られた警棒なんだ。ほら、電気を溜めやすい体質だって言っただろ?伝えるものがあればどうにかなるんだよね」
「なるほど。他には?」
「トンファーとかよく使うかな」
「打撃系の武器を使うってことだな」
「まあね、相手に直接電気流す方が早いし」
強化系の能力者以外にもこういう目的で武器を使う者は多々いる。武器に関しては自分で設計すれば、学園側が用意をしてくれるというのは随分と気前がいい。
超能力者育成を掲げる学園なだけはある。
「お前ら、朝礼始めるぞ」
そんな話をしているとガラガラとドアを開けて萩坂先生が教室に入ってきた。
友達と話していた生徒達は素早く自分の席へと戻っていく。
きっと、肩から担がれた大剣がそうさせたのだろう。その大剣は初日に見たのと同じ形でおそらく汎用型だ。
やはり推測通り、あの日使っていたのは特注品ではなかったようだ。
「今日の模擬戦だが、場所は第1グラウンドだ。B組も同時に授業しているけど、あまり気にするな。対戦相手は自由だが、なるべく同じレベルの者と試合をするように」
その言葉を聞いて周りの生徒達は「一緒にやろう」などとパートナー探しを始めている。
「俺はどうすれば?」
刃哉は手を伸ばして質問する。レベルがわからない刃哉は近しいレベルも何もない。
萩坂は空いている左手を顎に当て、少し悩んだ後、ニヤリと微笑む。
「お前は、望月 凛に相手をしてもらえ」
「望月……って誰です?」
「隣に座ってるだろ」
先ほどまで本を読んでいた少女の方を見る。
赤髪のツインテールに群青色の瞳。顔立ちは少々幼さが残っているものの態度は凛としている。
だが、なぜだろうか。目が笑っていない。
「あ、あの……他に選択肢は?」
「私と戦うか?」
「望月さんでお願いします……」
あの人と戦ったら殺されそうなので、遠慮しておいた。しかも、そこで何かやらかしてしまえば、今後の生活に影響しかねない。
関わりたくないと思っていた人に限ってこういう機会が回ってくるのは、不思議である。
「模擬戦に関しての詳しい説明はグラウンドでするから、着替えるものは更衣室で素早く着替えて、グラウンドに集合」
そう言って教室から出て行くと、生徒達は鞄を持って教室を出て行く。
「お前大丈夫なのか?」
「何が?」
ほとんどの生徒達がいなくなった中、警棒を片手に立ち上がった響が刃哉に尋ねる。
刃哉は、質問の意味ががわからなかったので、尋ね返した。
「望月さんって特待生だよ」
「まじか……」
特待生ということは雪奈と同等の力を持っているということだ。正直勝てるかなんてわからないが、あの雪奈がどれだけの強さなのかは知っておきたい。
「好都合かねぇ……全く神様は俺の味方をしてるんだか、なんだか」
「どうかした?」
「いや、こっちの話だ」
「そっか。じゃあ俺も着替えに行くね」
そう言って響も教室から出ていく、ら
神様なんて信じてはいないが、 恨めるのは神様くらいしかいない。運がないことはいつも通りだが、ここまでくると論文さえ書けそうな気がする。
この能力の限界を知るにはいい機会なのは確かだ。
(流石に死ぬことはないよなぁ……)
学園生活始まってから2回目の命の危機を感じながら、グラウンドへ向かう。