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学園都市の災難起点  作者: イノカゲ
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『超能力バトルを砕く!』3

 あの後、吹っ飛ばされた刃哉は桜の木に落下することとなった。

 それが逆に良かったのか怪我はなく、さらに落ちた場所が白樺寮の近くだったこともあり、それ以上の災難に巻き込まれることもなく、無事に白樺寮に辿り着くことが出来た。

 寮には白樺しらかば寮・青凪あおなぎ寮・赤星せきせい寮の3つがあり、生徒達はランダムに部屋を割り振られていて、部屋は2人で1部屋、同学年の生徒とペアになる。(兄弟や姉妹などは申請をすれば同じ部屋になれるらしい)

 通知されたのは寮名と部屋の番号だけで、まだ誰と同じ部屋になったのかは分からない。


「214号室だったよな。たしか」


 刃哉は髪についた桜の花びらを取りながら、白樺寮の階段を登る。

 手すりや壁は木製に見えるのだが、触ったところ特殊合金のようだ。

 やはり、どの建物も対能力者対策は怠ってはないらしい。

 二階へと上がった刃哉は214号室の前に立つ。ドアにはカードをスキャンさせるような機械が付いている。


「そういえば、部屋に入るのには学生証を使うんだよな。えっと学生証は……」


 上着のポケットに手を入れる。入っていない。それからズボンのポケットを、次に後ろのポケットを探す。


「……」


 二週目。すべてのポケットを探しても学生証の入っている生徒手帳が見つかる気配がない。


「やらかした……」


 相変わらず最後まで上手くはいかない。いつも通りといえばいつも通りなのだが、性格の問題なのだろうか。


「学生証は後にしても、部屋に誰かいるなら説明して入れてもらおう!」


 どこに行けば再発行して貰えるのかも分からないし、そもそも施設を全く把握出来ていない現状では、それが一番の策だと思う。

 中に誰かいないかとコンコンとドアをノックすると、ドアがその力で開かれる。


「あれ?ドアに鍵が掛かってない?」


 流石に部屋を出るのに鍵を掛けないで出て行く人はいないだろうから、誰か鍵を掛け忘れたまま部屋に入ってしまったのだろう。


「あの〜誰かいませんか?」


 恐る恐るドアを開いて、中に声をかけるも返事はない。

 部屋の電気はついていて、自分の荷物が置いてあるところを見ると、ルームメイトが荷物を受け取って置いてくれたらしい。

 部屋の間取りは10畳ほどの広さにキッチンと本棚があり、左側に見える2つのドアはシャワーとトイレだろう。

 右側には二段ベッドが1つあって下側の布団が荒れているので、すでにルームメイトがいるのは確かだ。


「これは……」


 そのベッドの上に赤色の手帳、一年生用の生徒手帳が置いてあった。失礼だが、誰がルームメイトとなのかだけ確認させて貰おう。

 生徒手帳を手に取り、中を開いて学生証を確認する。


「俺のじゃん!」


 そこに書いてあった名前は皇 刃哉。自分のものだった。


(どこかで拾ってそのまま持ってきたのか?どっちにしろありがたい。神はまだ俺のことを見捨てていなかったようだ。)


 刃哉がそんなことに感動していると、部屋の中のドアから鼻歌が聞こえてくる。

 どうやら同居人はシャワーを浴びていたらしい。出てきたらしっかりと感謝の言葉を言わなければならない。

 するとすぐにドアが開かれ、同居人が姿を現わす。

 爽やかな青い髪、すらりと伸びた手足と色白の滑らかな肌。胸は控えめなものの、スレンダーなその体型が、滴る雫によってさらに魅力を増している。

 入浴によって上気した紅色の頬がまた可愛らしい。

 というか、全裸だった。


「うおぉぉぉぉ」


 刃哉は固まったまま全身を見た後、理性を取り戻して、今日一番の大声を出ながら後ろに振り返る。


「おや、すまない。変なものを見せてしまったね」


 一糸纏わぬ姿の少女は、恥ずかしがる様子もなく、何事もなかったように話しかけてくる。


「悪い!まさかシャワーを浴びてたとは思わなくて」

「別にいいよ。入ってもらうためにわざわざ鍵を開けておいたんだから」


 それに、と少女はあっけらかんと続ける。


「こんなもの見たってなにもならないよ?」

「とりあえず服を着てくれ!!」


 全く服を着ようとしない少女に刃哉は、切実にそうお願いした。




 少女は、首元がダラっと伸びたTシャツに深緑のガウチョパンツを身につけ、二段ベッドの下に腰掛ける。

刃哉は見てしまった罪悪感から少女に向かい合う形で、正座して床に座った。


「では改めて。私の名前は白神しらかみ 雪奈ゆきなだ。君は皇 刃哉くんだろ?」

「ああ」


 まだ湿っているその青い髪には見覚えがあった。


(朝、助けた少女だったのか)


 きっとその時に生徒手帳を落として、持ってきてくれたのだろう。ただ、そこで1つの疑問が浮かぶ。


「あれ?でも白神さんは1年生なんだよな?」

「堅苦しいなぁ。雪奈と呼んでくれたまえ。その通りだよ。私はまだピチピチの高校1年生さ」

「入学式はどうしたんだ?」


 あの時間にあそこにいたということは、刃哉と同じく時間に追われていたはずなのだが、全く急いでいる様子は見受けられなかった。


「私は入学式には出ないよ。これでも特待生なんでね」

「特待生?」

「知らないのかい?仕方ないなぁ。このユキさんが教えてあげよう」


 雪奈は足を組んで得意げに解説を始める。その仕草もまた、なんとも可愛らしい。


「特待生っていうのは、ある一定の基準に到達したために、早期的に学園に入学した者のことを言うんだ。今年は私を含めた三人が12月から特待生としてこの学園に入学しているよ」

「つまりはその3人がこの学年のトップ3ってわけか」

「まあ、そう思ってくれて構わないかな」


 これ以上研究所にいても仕方ない優秀者は先に学園に入学させる、そんなところだ。

 理にかなっているし、実力主義に否定的ではない俺としては特に異論はない。


「これからよろしくね。刃哉くん」

「こちらこそ」

「じゃあ、私は昼寝をするから。部屋は空いてるところを自由に使ってくれたまえ」

「わかった......ってちょっと!!」


 なぜか雪奈はせっかく着たTシャツを脱ぎ始める。あまり膨らんではいないとはいえ、女子の胸は、男子にとっては刺激が強すぎる。


「寝るときは何もつけない派なんだ。それに私は気にしないぞ?」

「気にして!」

「こんなのを見ても誰もなにも思わんさ。」

「だから脱ごうとしないで!」


 それから小一時間奮闘の末、なんとか寝るときはしっかりと服を着るという約束を交わすことに成功した。

 高校生活1日目。色々な災難に巻き込まれた、もとい巻き起こしたものの幸先の良いスタートをきれたはずだ。


 雪奈が寝ぼけて服を脱ぎ始めたのは、また別の話である。

 

 

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