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ミドラディアス  作者: 睦月マフユ
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第105話「覚醒されし真なる神剣の力」

 バサラの姿を眼前に捉え、陸徒と空也は走りながら戦闘の体勢を取る。すかさず空也が魔術を唱えて牽制を行う。


―荘厳なる地より生まれし精よ、万物を押し潰す巨岩となれ―

壷燐岩ストーンフォイル!」


 放たれたものは地の術。空間に無数の岩を出現させ、敵を襲うものだ。岩はバサラ目掛けて飛んで行くも、直撃することなくそれを回避ながら後方へ移動される。

 空也もこれは想定内だったようで、表情ひとつ変えず、寧ろ作戦通りといった様子。先の牽制術によってバサラを後方へ移動させることで、戦闘不能となった者たちとの距離を取って、シェリルが救助に当たりやすい状況を作り出したのだ。


「ナイスだ空也。これでみんなをシェリルに任せて思い切り戦えるな」

「うん。この戦い、絶対に負けられない!」


 先の戦闘フィールドから離れ、アルファード城下町の東門のあった場所が遠くに目する位置。バサラと対峙した陸徒と空也は、一定の間合いを取った状態だ。お互い睨み合った暫時の膠着が訪れる。


「ふっ、真打ち登場とやらか。だが、誰だろうとこの我に勝つことなど叶わぬ」

「戦う前からわかりきったような口言ってんじゃねえよ!」

「貴様ら下等生物の勝利など初めから存在しない。完全体となった我の前では、全てが無力だ」

「の、わりにはアクシオたちの竜の力や、ティーダたちの術に随分とやられてたじゃねえか」

「減らず口だな」

「へっ、どうせ図星だろうよ。とにかくだ、みんながここまで繋いでくれた想い。まとめてぶつけてやるぜ!」

「今まで僕を散々悪いことに使ってきた恨み、何百倍にして返すからね!」


 兄弟は共に目で合図をすると、同時に動き出してバサラへの攻撃を開始する。


―悠々と蠢く地の流れよ、砂の豪波と化せ―

砂塵衝サンドブラスト!」


 先手を切ったのは空也。先にも語られた通り、魔術書はおろか武器すらなにも持たずして魔術を唱える。

 発せられたものは地属性の初級術。多量の砂の礫で敵にダメージを与えるものであるが、この程度の術ではバサラ相手に通用するとは思えない。

 だが空也自身もそれは織り込み済み。術の現象が起こる前から次の手を打っていたようだ。


―満ち猛し燃ゆる炎よ、空を裂いて彼を貫け―

火炎弾(ファイヤーボール)!」


 即座に唱えられた次なる術は火属性。直径1メートル程度の炎の球を生み出しぶつけるものだが、今回は先の地の術が発動された後の、ほんの僅かな時間差で起きていた。よって炎は砂と混ざり、高熱を纏う砂塵となりてバサラに襲いかかる。

 少なからずダメージは与えているようだ。バサラは顔を歪ませて、炎の砂を手で振り払う動きをしている。

 これはシルフィの固有技である二重詠唱ダブルスペルを用いた、2種の魔術を複合させる技と酷似している。空也が同様の技を会得しているわけではないが、俊速の呪文詠唱によって、それを擬似的に引き起こしていたのだ。


「空也のやつすげえな、いつの間にあんな技術を。こいつは、俺も遅れを取るわけにはいかねえ!」


 開幕から空也の卓越たる魔術の攻撃によって、陸徒も感化されたのか、倣うようにしてすかさず剣を振るう。

 繰り出されるは、重量級の大剣をものともせずに連続で斬りつける攻撃だ。対象のバサラへと蒼白の大刃を何度も叩きつける。だが剣が当たる度に見えないバリアのようなものを出現させて、物理的なダメージを流されてしまっていた。


「ちっ、ただの物理攻撃じゃラディアセイバーでもダメか。やっぱりアクシオたちの竜の力みたいに特殊な攻撃じゃねえと。よしっ、空也っ!」

「兄ちゃんなに?」

「今みたいな魔術、もっと頼む!」


 陸徒はなにか思いついたかのように頭上に電球を光らせ、空也へ指示を送る。どうやらひとつ企みがある模様だが。


―久遠の時を調べる強き風よ、全てを切り裂く刃となれ―

風流旋(ウインドスラッシュ)!」

―清らかなる精霊の涙よ、凍てつく刃となれ―

氷冷雨(フリーズレイン)!」


 兄の指示の意味を読み取ったかは定かではないが、気乗りした様子を見せながら、勝気な表情で魔術を唱える弟。さすがにシルフィの二重詠唱には届かないものの、続け様に行った超速詠唱は、最早他の追随を許さないレベルだ。

 それだけでなく、初手は地と火、次は風と氷。ただ闇雲に2つの属性を掛け合わせたのではなく、それぞれに相性の良い属性を加味して複合させている。

 今度の術は、現れた氷の棘を風の刃が砕き、それが飛散して鋭い氷片が舞い踊る吹雪と化してバサラへと命中させた。そこへすかさず陸徒が動き出す。


「宿れっ!」


 魔術が発生している空間へ剣を突き刺すと、刀身に風と氷の両属性を纏わせたのだ。陸徒はしたり顔を作りそのままバサラへ属性を宿した斬撃をお見舞いする。


「どんどん行くよ兄ちゃん!」


―清浄なる神の閃光よ、白放満ちて闇を消し去れ―

極光壁フラッシュウォール!」

―今呼び起こすは天の怒号、放て紫を紡ぎし数多の霹靂―

幾千雷サウザンドアーク!」


 次なるは光と雷の属性だ。雷は強烈な稲妻と共に光を生み出す。従って光属性との相性は言うまでもなく、悪を浄化する神のいかずちとなりて、敵を蹂躙する。この組み合わせの複合属性は、かつてシルフィがシエンタの丘にて魔族を葬った時にも披露されている。

 空也の手によって放たれた術は、バサラの体を光の柱が包み込み、その中へ数多の雷が降り注ぐ。


「空也の奴、容赦ねえな。こんな派手な術じゃ迂闊に近寄れない」


 術の効果が治まりかけた頃合いを見計らって、陸徒が身を投じると同時に、剣に属性を纏わせては大振りの一撃をバサラへお見舞いする。これにはひとたまりもなく、バサラへ強烈なダメージを与えているようだ。


ー澄みし水神の吐息よ、全てを貫く撃砲と化せ

水閃撃アクアレーザー!」

―悠然たる深緑よ、枝針を紡いで槍となれ―

枝龍線(ラウディックブランチ)!」


 これを機と言わんばかりに、続けて放たれた術のは、水と木の属性。木は植物であるから、その栄養素となる水との相性も抜群だ。水の術を吸収した木の槍は、巨大かつ強靭なものへと変え、バサラの体を次々と突き刺していく。


「さぁてもういっちょだ! 宿れっ!」


 今回はこれまでとは異なり、複合された属性纏いではなかった。水は木に吸収されていた為、水の地形属性の効果は希薄であったからだ。よってラディアセイバーには木属性のみ纏わせた状態だ。

 だがこれは、単なる木属性纏いだけに留まるものではなかった。刀身への視覚的な変化は見受けられないものの、陸徒が斬撃を繰り出す度にバサラの体に異常が発生する。


「ぐっ、な、なんだ……これは」


 バサラは突然膝を落とし、急激に力を失ったかのような反応を見せている。


「へっ。こいつの攻撃はなかなか効くだろ!」

「き、貴様……一体なにを、した」

「木の属性を纏わせたラディアセイバーで斬るとな、相手の体内に種を植え付けるんだ。その種は、徐々に宿木、つまりお前のエネルギーを吸収して育っていく」


 これが陸徒自身に訪れた変化であった。空也がレクサスの生まれ変わりとして真に覚醒したことによって、同じ血を引いてる陸徒にもその影響が発生していた。

 今までは、神剣ラディアセイバーに属性を宿し、それを刀身に纏わせる功法は1種の属性のみ可能とされていた。それが2種を複合された属性に加え、他の属性との組み合わせによって強化されたものを纏う事で、通常より異なる効果を得られるようになっていた。

 木属性の纏い攻撃については、従来は敵を攻撃した際に、蔓を鞭のようにしたり、葉を刃のようにして追加の斬撃を与えるものであった。それが今し方使用されたものは、水の属性を吸収して強化された事で効果に変化されたもの。詳細は陸徒の前述と同様だ。


「お、おのれ……。この我が、貴様ら如きに、負ける、な、ど……」


 体内に植え付けられた種にエネルギーを吸収され続け、バサラの顔や胴体が次第に痩せこけていく。そして最後の言葉を発した後、体表を貫いて木々が生えてくる。それは忽ちに大きな1本の木へと成長すると同時に、バサラの息の根を止めた。


「つ、ついにやった。バサラを倒した!」

「これが、覚醒した兄ちゃんとラディアセイバーの真の力」

「しっかし、木の属性を宿した攻撃って、今までこんなんじゃなかった。パワーアップするとすげえ恐ろしいもんになるんだな」


 陸徒は自身が行ったことながらも、あまりの恐怖が沸き立つような現状に慄いていた。それは、シルフィがドヘルズペインの群れから逃れるために、森の中で唱えた木属性最上級術を彷彿とさせるものであった。

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