表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV22.2万突破!!】△▼異能者たちの苦悩 △▼-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-  作者: ネームレス
第一章 シシャの回遊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/457

第24話 上級アヤカシ 鵺(ぬえ)

 林の中を駆けてきた繰と九久津毬緒の兄九久津堂流(くぐつどーる)

 九久津堂流もまた九久津に似た美男子だった。

 現在の九久津毬緒よりも三、四センチほど背が高くて百八十センチくらい。

 髪も九久津よりやや長く、儚げな瞳が理知的にみえる。

 ただひとついえることは兄弟揃って美男子ということだ。


 「堂流。あ、あれって、ぬ、(ぬえ)じゃない?」

 

 繰はただならぬ気配に立ち止った。

 急に止まったために草叢には靴の足跡がくっきりとついている。


 「なんで上級アヤカシが?」


 つき従う九久津堂流も繰の一歩うしろで止まる、そこで左右の景色をゆっくりとたしかめてから自分たちのすこしさきにある小さな人影に気づいた。

  

 「繰さん近くに子どもがいます」

 

 「えっ!?」

 

 驚く繰をよそに沙田は両手で握り拳を作ってはしゃいでいた。

 

 「スゲー!! きょ、恐竜だ~!!」


 鵺はサルの顔にタヌキの胴体、そして手足はトラで尾はヘビのアヤカシだ。

 沙田は子どもながらにとてつもない経験をしている自覚があった、そしてその興奮もついにピークに達した。

 

 「おお!!」


 「鵺を恐竜と勘違いしていますね……?」

 

 「子どもは無邪気でいいわね。ふぅ~」

 

 繰は溜息をつきあきれ果てて肩を落とした。

 裸足で地雷原を歩くほどの危険な上級アヤカシに遭遇した子どもがヒーローアトラクションのごとくはしゃいでいたからだ。

 繰はいまだかつてこんな光景に遭遇したことはなかった。

 どんな現場に訪れてもそこには金切声(かなきりごえ)を上げて恐れ(おのの)く人たちか、あまりの恐怖でまるで夢や幻のようにキョトンとしている人のどちらかだからだ。

 

 「美子ちゃんと同い歳くらいでしょうか?」


 「それなら毬緒くんとだって同じ歳(・・・)でしょ? ってそんなこといってる場合じゃないわ。相手は鵺よ?」


 「どうします?」


 「アヤカシに襲われそうな子どもを放ってはおけないでしょ? でも鵺が出現するなんて予測情報はどこにも……」


 「じゃあ、俺が……。事後報告ってことでいいですよね? あっ、待ってください。なにか気配がします……」

 

 九久津堂流は肢体(したい)を動かさず視線だけを流しピンポイントである場所に狙いを定めて振り向いた。

 

 「繰さん。あれ」

 

 繰は九久津堂流の目線が示している方向を見た。

 

 「えっ!! なに、どういうこと? あ、あの少年と同じ顔」


 雑木林の中にいる沙田に似た少年は鵺に向かっておもむろに手をかざした、その延長線上に鵺がいる。

 瞬間空気が歪むとソニックブームのような衝撃波が辺りの木々を巻き込み一帯を割いていった。

 轟音とともに鵺の腹部にその衝撃波が命中すると、鵺はそのまま――ジャバンと落水した。

 鵺はなにが起こったのか理解できぬまま痛みに身をよじらせてバシャバシャと水飛沫を上げてもがいている。


 「うわ~この恐竜は空も飛べる水棲恐竜か。図鑑で見たことあるぞ!! プレシオサウルスの仲間かな~。なんか苦しんでる!? あっ、淡水だから? じゃあ、この恐竜は海水でも生きれるんだ~!?」


 この当時の沙田は恐竜図鑑にはまっていて恐竜の生態系に詳しかった。

 危険なアヤカシだと知らないがゆえに怖れることもなく、子どもながらの無謀さで水際まで近づいていった。


 ――グァァァ!! 


 鵺は唸り声をあげ、いまだに噴水のように血飛沫(ちしぶき)を飛び散らせている。

 口から流れでた鵺の血は液体に垂らした絵の具のように池を徐々に染めていく。

 鵺の体躯(からだ)は自身が吐き出した赤い水の中にどっぷりと浸ていった。


 「あれは(ツヴァイ)?」


 繰は疑問符を宙へ投げかける。

 

 「おそらく」


 「あの少年が発現させたの……?」

 

 繰の言葉が音として成立するより早く林の中からもう一発鵺に向かって黒い衝撃が放たれた。

 二発目の音速の衝撃波は、いまだに池を転げまわっている鵺の体の中心(タヌキ)を的確に射抜いた。

 

 ――ジュワッ。


 鵺は木炭(すみ)に水をかけたような音とともに蒸発するように消えた。


 「……なんて強大な力なの? あの子が高校生くらいまでに成長したら……」

 

 繰は草叢の中に投げ捨てられたように転がっていた虫カゴに目をやった。

 おそらく母親の手で書かれたであろう黒いマジックの「沙田雅」という漢字とふりがなの「さだただし」という名前があった。


 (沙田雅……さだただし……サダタダシ……あれは御名隠(みなかく)しかも……)


 「繰さん鵺は消滅しました。いきましょうか?」


 「ええ。ところで通報ってなんだったの? 正確に教えて?」


 「はい。網タイツを被った六体の人体模型が上半身スエットで下半身は丸出しで走っているそうです」


 「へ、変態ね!?」


 「ええ、通報時も変態(・・)メタモルフォーゼ(変態)編隊(・・)を組んでいるといってました」


 「なんなのその通報は……」


 「ギャグですかね……?」


 「ま、ま、まあ、堂流、急ごうか?」


 「はい」


 ――――――――――――

 ――――――

 ―――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ