表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV21.6万突破!!(11月1日/日間15位)】△▼異能者たちの苦悩 △▼-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-  作者: ネームレス
第一章 シシャの回遊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/449

第22話 六角第三高校への帰還

 「九久津くん。あとは私が話すわ」


 アスファルトを弾く音の中から柑橘系の匂いと女の人の声がした。


 「繰さん」


 九久津が振り向くのと同時に俺も振り返る。

 さっき校長は後日話すからとなにも教えてくれなかったのに……。

 もしかして俺が自分から九久津にいろいろ訊くのを待ってたとか、か?

 

 「校長……?」

 

 「沙田くん。さっきは驚かせてごめんね?」

 

 「えっ、いや。とりあえず話さえ聞かせてさえもらえれば……」

 

 「わかったわ。九久津くんは理由を知ってるだろうけど、まあ一緒に聞いてね?」


 「はい」


 九久津がそういったあとに校長は細めの眉がキリっと上げ険しい表情になった。

 話すのを躊躇っていた様子だったけど、上唇が重力に勝つとそこからはスムーズに話をはじめた。


 「戦後、学校を建設するのには地価が安くて広い土地が必要だったの、それが理由で多くの墓地跡地が選ばれた。これは都市伝説でもなく、まぎれもない事実なの」


 「それは聞いたことがあります。でも、あれって本当だったんですね?」


 「ええ。経済的観点から見ても理に適ってるわ」


 「でもね。やはりそういう場所には(よど)みが溜まる。悪い気や、瘴気なんて呼ばれるようなもののことね。そしてそれは気体のように上昇して停滞するの」


 「だから最上階にあんな場所が?」

 

 「ええ」


 校長はコクリとうなずき――その淀みの影響でアヤカシが産まれる。とつづけた。


 俺のいった――だとしても。と重なった。

 最上階の四階に淀みが溜まったところでそれがどうなるんだ? あっ、それがあの人体模型とヴェートーベンになるのか?


 「沙田くん。きみを四階に呼んだ理由を話す前に六角第三高校の校長に会ってきてほしいの、そっちのほうが話が早く進むと思うから」

 

 「えっ? 六角第三高校って俺の転校前の高校ですけど……?」

 

 「ええ。そう、そして、そこの仁科(にしな)校長に会ってきてほしいの」


 「六角第三高校にもなにか秘密が?」

 

 「それはいってたしかめて。すぐにとはいわないけれど近いうちに。いくまでの交通費は私があとで払うから」

 

 「わかりました」

 

 「仁科校長にはもう話はとおしてあるわ……」

 

 「はい」


 なんか妙な流れになってきた。

 もしかして俺は今まで知らず知らずのうちにアヤカシに関わってたのか? 「シシャ」もアヤカシに含まれるんだよな……。


 「ということで今日はここで解散。ふたりとも気をつけて帰ってね!?」

 

 校長は俺と九久津を気遣ったのかポンと背中を叩いた、なんだかよくわからないけどいくしかない。


 「あっ、はい」


 「俺はこっちだから。じゃあな沙田」


 「おう。じゃあ、また明日」


 九久津は校長に一礼すると「六角駅前行き」のバス停へと歩いていった。

 俺の生活にとつじょ訪れた非現実。

 九久津はそれを和らげるクッション役だったのかもしれない。

 なんとなくだけどそう思った。

 九久津の背中が見えなくなったあと俺も校長に挨拶をして「六角第四高校前行」きのバスに乗った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ