表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV21.7万突破!!(11月1日/日間15位/月間もランクイン中)】△▼異能者たちの苦悩 △▼-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-  作者: ネームレス
第四章 ヒポクラテスの誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/450

第161話 平成(へいせい)・修文(しゅうぶん)・正化(せいか)/H・S・S

 「どうした?」


 「現状報告です」


 「そうか。それで?」


 「そのご空飛ぶ刀を目撃したという追加情報はありません」


 「そうか……しかたがないな」


 「あの。こんなことをいうのも烏滸(おこ)がましいのですが……」


 近衛の部下は恐縮しきりにいった。


 「かまわん。いってくれ」


 「はい。お言葉に甘えさせていただきます。その刀を目撃したという一般人は本当に空飛ぶ刀(それ)を見たのでしょうか?」


 「一般の協力者がうそをついているとでも?」


 「はい。目撃者はたった独り(・・)じゃないですか? 近衛さんが信じるならたしかな理由はあると思うのですが……」


 「空飛ぶ刀を見た一般協力者は”戸村伊織”という」


 「女性ですか?」


 「ああ」


 「あの。そのどこにその情報が信頼のおける情報だという根拠があるのでしょうか?」


 「彼女は病院の看護師だ」


 「じゃあ。国立六角病院の?」


 「そうだ。九条と一緒に診察することもあるそうだ」


 「なるほど」


 部下は近衛のその言葉を聞くまで空飛ぶ刀などどこか眉唾物(まゆつばもの)で近衛が信じている(・・・・・)からという理由だけで自分もただ受け入れていた。

 ふつうであれば国が一般協力者の空飛ぶ刀の目撃情報をなんの証拠もなく鵜呑みにすることはない。

 

 部下の信頼度がここで極端に高まった理由はまず戸村伊織(そのじょせい)が国立六角病院の看護師だったことだ。

 国立六角病院の看護師であればアヤカシをはじめ忌具、魔障は身近なもので知識としても一般人とは天と地ほどの差がある。

 また魔障専門医の九条と一緒に働いているということが銀行の格付けのようにさらに信頼度を高めさせた。


 そんな場所(・・)に身を置く人間であり、さらに上司である近衛と同期の九条(いし)の同僚。

 明確な物証は提示されていないにしろ”戸村伊織”は信じるに値する人物だった。


 「疑ってすみません。刀のことは引きつづき調べます」


 「ああ。頼むよ。それになにか疑問があればすぐにいってくれ? 高校生の沙田くんでさえガツンといってくるからな。――じゃあ、情報管理を見直したほうがいんじゃないですか? バシリスクのときにそういわれたよ。それを官房長に進言すると官房長自身もそう思ってたみたいだけれど」


 「か、官房長まで意見が伝わってしまうなんて。と、とんでもないです」


 部下は当局内において神にも等しい官房長の名が出て目を見開いた。


 「なにをいってるんだ。おまえだって国交省の職員。超のつくエリートだろ?」


 「いえいえ。あっ、つ、つぎの情報です」


 「国家一種に合格したんだろ?」


 「ええ。まあ、はい、それは」

 

 「謙遜するな。それをエリートというんだよ」

 

 「は、はい」

 

 部下も近衛に褒められて悪い気はしなかった。


 「自信を持て」


 部下はこくっとうなずき一枚の紙を広げた。


 「つぎの情報を読み上げていきます」


 「わかった」


 「――現在拘留中だった男は消えた。というよりも消失(・・)。恐らくは本来の世界に戻ったんだろう。政府、財務局及び造幣局が調べた結果間違いなく本物でこの日本(くに)の技術の粋を集めた硬貨だ。個人や大規模な犯罪組織でも偽造は不可能――」


 「なるほど」


 近衛はとくに表情も変えずにそれを受け入れた。


 「あ、あの近衛さん。これはどういうことか僕が訊いてもいいのでしょうか?」


 「かまわないよ。ここ数ヶ月のあいだ日本各地で謎の偽造硬貨が使用されたのを覚えてるか?」


 「あっ、はい。ありましたね。最近も北海道コンビニエンストアで777円硬貨が使用されたとか。じゃあ、その777円硬貨は本物だってことですか?」


 「そうだ」


 「でも、あれはたしか修文(しゅうぶん)30年という聞きなれない元号(げんごう)の硬貨だったはずですが。今は平成です。それが本物とはどういうことですか?」


 近衛はおもむろに部下の方へと向き直した。


 「昭和が終るときにつぎの元号の最終候補は三つあったとされる。それが平成(へいせい)修文(しゅうぶん)正化(せいか)


 「そうだったんですか?」


 「ああ、そして昭和のあと平成になった。それはなぜかというと三つの新元号をローマ字表記したとき平成(HEISEI)修文(SHUBUN)正化(SEIKA)の頭文字は”H””S””S”になる。このため昭和の”S”とバッティングを避け頭文字が”H”の平成になったとされている」


 「そんな経緯(いきさつ)があったんですか!? でもそれが修文硬貨とどう繋がるんですか? だって本物という鑑定が出てるんですよね……? あっ!?」


 「察しがいいな。おまえはやっぱりエリートだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ