表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV21.7万突破!!(11月1日/日間15位/月間もランクイン中)】△▼異能者たちの苦悩 △▼-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-  作者: ネームレス
第三章 魔障の展延(てんえん)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/450

第113話 ―NOT FOUND― 消されたデータ

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 九久津堂流 Sterben(ステルベン)



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 (ステルベンか……)


 九条がいちばん嫌う単語、いや医療関係者のすべてが避けたいであろう言葉が画面の中央を占領していた。

 九条は医療用語で「死」を意味するその言葉を回避するように下のハイパーリンクをクリックした。

 ――カチャ。っとすぐに下層ページに移行した。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 NOT FOUND



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 「はっ!? 中身がない……? 読み込みエラーか? もう一度」


 九条の指先は反射的にマウスボタンを押していた。

 ふたたび同じファイルを読み込む。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 NOT FOUND



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 一度、画面が点滅して再読み込みをしても結果は同じだった。

 九条はまたそこから数回マウスを――カチャ、カチャ。とクリックした。


 「変わらないか。厚労省内の能力者データベースに九久津堂流は存在しているのに中身だけがないなんて……。Aランク情報か?」


 九条は左手で頬杖をついたまま右の指先はいまだにクルクルとホイールを転がしている。


 (まさかお役所仕事だからリンクが切れてるってわけじゃないよな? 現実問題、各省庁を横断するデータベースはややこしいからな。……これも【能力者専門校】の生徒が実習で使ったやつかもしれないし。……【九久津堂流】のデータ自体は院内には存在しているし厚労省に死亡届けも出されている。手続き的には正しい手順を踏んでるよな。……その先でデータが消されてるってことはアヤカシ対策局の上層部が消した可能性が高い。だとするとファイルの中身は九久津堂流の死因に付随することではなく暴かれたくない別のなにかか? たいていは国家機密だけど……)


 九条は一度天上を仰いだ。

 二、三度、瞬きをして目を休めてふたたび画面に向かう。


 (まさか!?)


 九条の思考が冷静さを取り戻し溜息をついた。


 (考えたくはないけど九久津くんのいうとおり解析部にミスがあったってことか。解析部のミスならファイルを削除するこのうえない理由になる。ただ厚労省のデータベースに九久津堂流の名前が存在している以上、厚労省からの完全削除を狙ったものではない。この先の調査は救偉人の権力(ちから)がないと難しいか。一条に頼むか、それとも官房長に(じか)に頼むか? 悩みどころだ)


 九条の手持無沙汰の指がまるでストレッチ運動とでもいうようにマウスホイールをスクロールしていた。


 (まだ誰も気づいてはいないけど、九久津くんが【毒回遊症ポイゾナス・ルーティーン】になるためにはバシリスクの毒の原液が必要。だとするとその毒の原液をいつ誰がどうやってバシリスクからとり出して九久津くんに渡したのか……? おそらくは医療従事者だが九久津くん自身(・・・・・・・・)に毒を手渡したのは顔見知りだと考えるのが自然。毒を入手するタイミングは九久津堂流がここに運ばれ荼毘(だび)にふされるまでのあいだか?)


 九条はデスクに置かれていたポケットティッシュふたつぶんほどのメモ用紙をピリっと破きなにかの計算をはじめた。

 

 (今の九久津くんの病状からざっと計算した結果。最低でも初期段階で九久津堂流の血液が八百ミリは必要。そこから毒の原液を抽出してさらに培養し体に貯蓄していけば理論上、現在(いま)の九久津くんの【毒回遊症ポイゾナス・ルーティーン】の検査値(けんさち)には到達する。ただ衆人環視(しゅうじんかんし)の中で八百ミリを採血するなんて果たして可能か?) 


 九条はあまりに非現実的な考えに一度、考えをあらためた。

 だがやはりそれしかないと思い直す。


 (周りは医療関係者ばっかりだぞ。そんな不自然な採血をスタッフが見逃すか? いや、そんなことはありえない。ただでさえ右脇腹の致命傷で大量出血してるときに血を抜くバカはいない……。仮に臨終後(りんじゅうご)であったとしても血液の凝固がはじまっていて循環も停止している。静脈から血を抜くのは不可能。かといって動脈を傷つけるなんてことも無理だ。そいつはいったいどんな方法を使ったんだ?)


 九条はふたたびペンをマウスに持ち替えた。


 (ここまでの情報を結びつけて総合判断するなら解析部のミス。いや九久津くんのいうとおり意図的に仕組んだ裏切者がいる?とするなら……そいつは国家に従事する人間であって魔障医療の知識がある者、かつデータベースをも編集できる人間。さらには九久津堂流の体内から血液を抜き毒を培養できる者にかぎられる)


 九条はそこまで考えると完全に行き詰った。


 (……だめだ。どう考えてもこのすべてを満たす人間なんて思いつかない)


 九条の焦燥を表すように指先はまたマウスホイールをクルクルと転がしている。


 (い、いや、待てよ。ひとりいる。そうだあの人なら!?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ