悲報[前編]
母との電話を終えた後、すぐに世那の携帯電話に掛けた。
コール音が3回ほど鳴り響いた後、寝ぼけ眼の声がきこえてきた。
「…はい。どうしたの、こんな朝早くに」
「今から君の実家の方に行く!僕が着くまでに出れるようにしておいてくれ」
「はぁ?どうしたのよ、何かあったの」
「とりあえず頼む!」
僕は返事も聞かずに電話を切った。
玄関を蹴飛ばすように家を飛び出して、マンションの階段を全速力で下りた。そして雑にドアを開閉して車に乗り込んだ。
早朝につき道は全く混んでおらず、自宅から30分程の世那の実家へ急いだ。
数分前、僕は母と電話でこんな会話をした。
「新、お父さんがさっき、―――――息を引き取った」
「……は?」
頭が真っ白になった。
「昨日の昼間、いつもみたいに畑で仕事をしていたら倒れちゃったの。それで病院に運ばれて、ずっとびょうきだったみたい。私たちが知らなかっただけで」
名前は難しくて、なんか分かんなかった。
笑ってそう言った母には、黒いものが見えた気がした。電話で向こうの景色は見えやしないけど、何か黒いものを感じることができた。
「まだこんな時間だし、日が昇ってからでも良いから。お父さんに会いに来てあげて」
「すぐ行く」
僕は間髪を入れずに即答した
「世那にも伝えとく」
「…うん。気を付けてね」
ツー、ツーと規則正しい不快な音が耳に残った。
――――――ついこの間、あんなに元気で話していた人が、
死んだ?
嘘だ。
車の中で、僕の脳内は悲鳴をあげた。
ちょうど信号が赤に染まってしまい、「…くそっ」と苛立ちを表してハンドルを拳で殴った。
苛立ったことの理由がそれではないことは、明確だった。
6話目、読んで頂きありがとうございました。
他の話より大分短くなってしまい、すいません。全くの私情ではございますが、この物語はじっくり展開していきたいと考えているので、お付き合いして頂ければ光栄です。
今後も宜しくお願い致します。
飴甘海果