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さっきの店で話をしていた時、彼女の家は店から歩いて15分くらいのところにあると聞いた。

駅からは大分と離れているが職場に近いのでそれ程不便に感じない、と話していた。

彼女の住んでいるアパートは緑の多い一戸建ての住宅地の中にあり、こうやって彼女と2人で歩いている周りの静けさに驚いてしまう。


道路沿いの家の庭先は、植木鉢が並べてあったり、三輪車が玄関の前にとめてあったり生活感があふれていた。

夜の9時、普通の家庭では食事や風呂をすませて戸締りの住んだ屋内で家族団らんテレビでもみているのだろうか。


しんと静まりかっているので、黙って歩いていたら、彼女と僕の靴音だけが響く。


話しをすると、その辺りの調和を乱してしまうのでは

大分先に大きい通りがあるのか、時折車のクラクションが遠くから鳴る

静かさに絶えられなくなって、僕は横を歩いていた彼女の手を探し、握った。


まただ・・・しばらく会っていない恋人とこうやって手を繋いでいたことを思い出す。

毎週末に彼女と過ごしていた時間

一緒に買い物に出かけて家で料理をしたり、DVDをみたり、時々遠出してみたり・・・


彼女は元気なのだろうか


お互いに仕事が忙しくなって、2人の関係がフェードアウトしてったことに、あの時は寂しいなんて思わなかったのにどうして今はそう思うのだろう。


しばらくそのまま歩いていたら

手を繋いだまま何もいわないから不思議に思ったのだろう、彼女が聞いた。



「どうしたんですか?」



「周りがすごく静かだから」



「こわい・・・とか」


僕は苦笑した


「怖くはないよ、でも寂しい感じはするよね」


「私は・・・いつもと違って今は向井さんが一緒にいるから寂しくないですよ」






いつもの帰り道を、今は向井さんと歩いてる


どうして今こうやって2人でこの道を歩いてるのかわからないけど、でも嬉しい気持ちに変わりはなかった。


今まで話すらろくにできなかったのに、今は2人きり


向井さんのこと、今日お話してすごくいっぱい知った


更に送るって言われた時は激しく動揺したけど

当然って顔してる向井さんの態度にホッとしている

このまま、甘えていいのかな?



私の住んでいるアパートの前にたどり着いた。

手はまだ握ったまま

もう、お礼を言って手を離さないといけない

でも、離したくなくて、お別れの言葉が言い出せなかった。


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