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自己紹介から始めよう

真夏。


それは、日差しが強く、照りつけるような太陽。

それは、ミンミンジージーやかましい蝉の鳴き声。

そして、夏休み前の恒例のテスト………


あー、


「勉強なんか◯◯◯(ピーー)だっ!」


「朝から自主規制なこと言わないでよ」


前に座る後藤がなにかぼやいたが関係ないね。

俺は今、この問題集をどう料理してやろうか考えるので頭がいっぱいだ。


「ただ燃やすんじゃあつまらないな。煮てやるか…それかトイレに流して……」


「…なんの話してんの?」


後藤に異常者を見るような目で見られた。

まぁ、今の独り言だけ聞いたらそう思われても無理はない。

俺は仕方なく解説をしてやることにした。


「さっきのテストでこいつは俺を裏切ったんだ。制裁を加えてなにが悪い?」


俺はこいつに賭けてたのに…!信じてるからなって念を推したのに…裏切りやがって‼


「…要するにヤマが外れたんだな」


俺の嘆きに後藤は呆れながら俺から問題集をもぎ取った。


「あっ!なにすんだよ!」


「問題集に罪はありません。ヤマが外れたのは山手の見当違いのせい」


「う、うるせー!昨日寝ちまったんだよ!範囲やりきれなかったんだからしょうがねぇだろっ

だからこそ、賭けてたのに…っうゔ…たとえお前に罪がなくとも俺は恨み続けるからなっ」


問題集に向けて叫ぶ。


あぁもう…昨日寝ちまった俺の馬鹿ぁ…


後藤は問題集をパタパタさせながら裏声を出した。どうやら問題集の声らしい。


『理不尽っ理不尽だよご主人~

それに俺、ヤマ張るならここって事前に後藤くんにマーカー引かれてたはずだよ~』


「え…どこ」


「ここ」


後藤は地声に戻ってページをめくる。すると確かに赤いマーカーが引かれたページが数ページ。


な、なんだと!?


「おまっ…事前に言えよお!」


「聞かなかった山手が悪い」


後藤はきっぱりそう言い切ると問題集をこちらに返した。


「言ったろ?問題集に罪はないって」


ドヤ顔で言われた!腹立つ!

俺は思わず問題集に語りかけていた。


「問題集…悪かった。お前が悪いんじゃない。真の敵は後藤だったんだな」


「なんだよそれ」


後藤が軽く笑い、俺もなんだかんだいいながら同じように笑った。



自己紹介が遅れたが、俺はどこにでもいるフツーな高校生。山手だ。


こういう言い方で自己紹介するラノベなんかの主人公ってたいがい隠された力とか持ってて、読者に『普通っつってるけどお前全然普通じゃねえよ!』とつっこまれたりするけど、あいにく俺は普通に普通だ。


なんでこんな普通を強調するのかっていうと、目の前の後藤が俺を凄い力を持った霊媒師だと思い込んでいるからだ。

思い込みってのは怖いもんでなかなか消えてくれない。ちょっとしたおふざけにより、俺は後藤の中で最強の存在になっちまった。

おかげで、高校生活は散々だ。

男二人で心霊スポット巡りしたり、こっくりさんやらされてクラスメイトの知りたくなかった異常性を垣間見たり、とにかく見栄張ったっていいことなんて一つもない。


だから誰かに自己紹介する時は、ありのままの自分、つまり普通の高校生と名乗ることにしたんだ。


前置きが長くなったが、俺についてはこれ以上とくに語ることはない。次にさっきからちょいちょい出てきてる後藤について語ろう。

俺の高校生活を語るにはこいつについて話さないと始まらない。


後藤は俺の友達だ。


好きなものは幽霊やオカルト。


仲良くなったきっかけは話すと長引くのでまたいつか話すとして、後藤が大の霊マニアだってこともあり、霊媒師だと思われた俺は後藤にすぐなつかれた。


俺の方もいろいろと振り回されつつもこいつといると退屈しないのでそばに居たりする。


そんなこんなで結局厄介者と一緒にいるため、俺がたとえどんなに普通でも厄介ごとに巻き込まれたりするのは当然といえば当然なわけで。


今回の騒動も後藤絡みの『当然な』災難だった。





くだらないテスト明けの会話をしていると、教室の前の方からざわめきがおこった。

驚きが伝線してこちらまで伝わってくる。


「ん?なんか騒がしくね?」


最初に俺が気づき、後藤も釣られて前を向く。


「おい、あれってーーー」


騒がれている人物を俺は知っていた。

というか知らない人は、この学校ではほとんどいないのではないだろうか。


ざわめきの中心に居たのは…


「宮井先輩!」


後藤は先輩の姿を認識したとたん、満面の笑みで走り出していた。


そう。騒がれていたのは、後藤の尊敬してやまない宮井米子先輩だった。



宮井先輩について語るには鬼才という言葉をおいて他にないと思う。

成績優秀、才色兼備、スポーツ万能、人間一度は憧れるだろう要素を全て兼ねそろえた完璧人間だ。

そんなわけでテスト明けの成績優秀者には必ず一位の場所に彼女の名前があり、毎年の最優秀賞の受賞も間違いなく先輩が壇上に上がった。

『宮井は入学して三年間ずっとそうだった』と去年彼女のクラスの担任だったウチの担任はテストの時期になるたんびに言ってくるのだからいい加減覚えるというものだ。


おまけに性格もよしとくれば、憧れる生徒が出てきても不思議ではないだろう。聞いた話だと校内にはファンクラブまであるとか。


全く、すご過ぎて笑いが出るというもんだ。


…が、彼女のステータスはこれで終わりではない。


後藤が先輩を尊敬してるって時点で分かると思うけど、宮井先輩は幽霊が視える人らしい。





…結構マジで。

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