episode 9 とまどい
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
亘………
亘………
俺は微かに聞こえる声により意識を取り戻した
俺が見えている景色は真っ白な世界で何もない
声の主が誰か考えていると
突如黒いカーテンが現れ中から見知らぬ男が出てきた
俺は自然に身構えた
「そんなに身構えなくていいよ」
男は両手を上げながら言った
「あんたは誰なんだ?」
俺が問うと男は言った
「まあ簡単に言うと君の持つ刀に住んでいる者かな
この場所は君の意識の中と言ったら正しいかな」
まず俺は武器に意識があると言う話は聞いたことがない
「その顔からして信じきれてないでしょう?
ちなみに君をあの状況から助けたのは僕なのだからね
覚えてないだろうけどね
証拠を見せるよ」
男はそう言い右手を何もない空間に手を振り
画面を出現させた
「この画面は君が意識を失ってから視線で見えていたものだよ」
その画面は俺があのクリエイトを圧倒しているものであった
「これは俺の力で戦っていたのか?」
「そうだね
それまでの君は力の半分も出てなかったよ
修行したらもっと君は強くなれる」
もうクリエイトに目をつけられている俺にとっては嬉しい言葉だった
もっと強くなれると
「質問するが何故今になって出てきたんだ?
もっと前から出てこれなかったのか?」
「君が戦闘中に刀を解放しただろ?
そのおかげで僕は出てこれたんだよ」
この刀には謎が多すぎる
「あと俺はクリエイトの剣で突き刺されたはずだがこの様子なら生きているということでいいのか?」
「確かに君はあの時に一回死んだというのに等しいダメージを負った
だけど僕の魔力で治療をしといたから大丈夫だよ」
とりあえず安心をして一息をついた
「これから俺はどうしたらいいんだ?」
「君はこれからクリエイトの連中と戦っていかなければならない
それに備えて力もつけなければいけないし
姿を隠さなければいけない
したがって君は消息不明として
偽りの名前で学園に再編入することになると思われる
君は破壊者の力を危険な時だけ使用して
僕を4thの力で生み出した物と言って使っていけばいい
あと君が力を使う時だけだけ目が赤くなるようにしておいたからコンタクトをつける必要はない
刀も力を使わずに抜けるようにしたから安心して使ってくれ」
「見ず知らずの俺にここまでやってくれるのか?」
「もう僕は使用者として君を認めたからね
現実の君がもう目覚めそうだから話はここまでみたいだね」
「いろいろありがとう
これからもよろしく頼む」
俺の意識が薄れていった
俺が目を覚ますとそこは病室ではなくて
昔から世話になっている
レジスタンスの自室であった
どうやらレジスタンスの誰かが俺を回収してくれたみたいだ
俺は服を捲って腹を見たが傷一つ残っていなかった
確認を終えてから自室を出てマスターに挨拶に行くために部屋へと向かった
たどり着いてノックをして部屋へと入った
「久しいな亘」
「お久しぶりですマスター
今回は大変ご迷惑をかけました」
俺は頭を下げて謝った
「頭を上げろ亘
私たちが亘を早期に回収出来たのが幸いだった
しかし見たときに血だらけで倒れていたのに
服を捲ってみても傷がなかったのはびっくりしたがな」
少し笑いながらマスターは話した
「今回の件で君はクリエイトたちに目をつけられた
君はこれからも命を狙われるだろう
その覚悟はあるのか?」
その問いに対して俺は頷き返した
「なら新たな任務を命じよう
それは偽名を使ってもう一度学園に編入してもらうことだ
力については大丈夫だろうか?」
俺はすべてマスターにどのように力を制御するかなどを話した
「なら安心だな
名前は………
ヨハンなんてどうだろうか?」
「俺見た目からしておもいっきり日本人ですよ」
「ダメか
なら大鳥結羽「オオトリ・ユウ」なんてのはどうだろうか?」
「大鳥結羽か……
ならそれで行きます」
「よしならすぐに支度をして学園に向かってくれ」
俺は返事をしてマスターのいる部屋をあとにした
自室に戻るが特に支度をすることが無いので久しぶりにレジスタンスの中を歩いてみることにした
俺はふと思い一番思い出深い修行場へと足を運んだ
修行場ではレジスタンスのメンバーが鍛練に励んでおり
俺もここで鍛練をやっていた
一人の少女が俺に気づいたのか近寄ってきた
「亘、任務に失敗したらしいじゃん」
俺に半笑いになりながら話かけて来た少女の名前は高梨凜[タカナシリン]
俺がここに来る前からいるみたいで
俺より2つ年上である
「凜は最近どうなんだよ?」
「私は快調よ」
実に楽しそうだ
「暇してるのなら私と模擬戦をしない?
久しぶりに」
「そうだな
いいだろう」
「ゴメンみんな少し場所を開けて」
凜がそう言うとみんな鍛練をやめて場所を開けてくれた
俺たちはその空いた場所の中心に向かい合い
凜が竹刀を投げてきた
「勝負は一本勝負
いつもと一緒で体のどこかに竹刀が当たったら負けね」
「わかった」
昔からよくこの試合をやっていたので要領は把握している
「じゃあ始めようか」
お互い竹刀を構えて集中を開始し始めた
辺りを緊迫の空気が包む
まず動いたのは俺からだった
ステップを刻み
まず縦に竹刀を振った
凜はそれを竹刀で受け止めて
右足で蹴ってきた
俺は後ろへとステップを踏み
竹刀を真っ直ぐ突き立てて突いた
その剣先は避けられ
横から凜が縦に振ってくるのがわかったので前へと転がり竹刀を回避した
「やるじゃない」
「そっちもな」
お互い笑みを浮かべている
「じゃあそろそろ真剣に行こうか」
凜はそう言うと早い速度で横へと竹刀を振ってきたので
俺は竹刀で受け止め左足で蹴りをいれたが
右手で受け止められた
俺は竹刀を弾いて竹刀で腹めがけて突き刺した
「この距離ならいける」
しかし反応速度が異常に早く横にそれて避けられた
左足を押さえていた手も外されていた
「私の勝ちね」
そう言うと凜は右手で拳を作り顔面へとめがけて殴ってきた
「いや、俺の勝ちだな」
俺は体をしゃがませて凜の拳は空を切った
そのまま竹刀を腹めがけてコツンと刺した
「うっ
負けたか」
凜が負けを認めると周りから拍手が起こった
「楽しい試合だったわ」
「俺こそ久しぶりに試合出来たからよかった」
お互いに握手をかわした
試合を終えて時間へとなったのでレジスタンスのみんなとは別れて
今回はヘリではなく車で向かうことになった
運転するのはマスターの執事だった
車に乗り込み二時間ほど揺られて学園の前へとたどり着いた
「まさか二度転入するとはな」
俺は少し笑いながら呟き
校長室へと向かった
前回来たみたいに迷うことなく校長室へとたどり着き
ノックをして校長室へと入った
「こうして会うのは二度目だね
桐谷亘……
いや大鳥結羽君」
「そうですね
あのころとは状況が違いますけどね」
校長先生は机にあったカップを取り一口飲んだ
「全部マスターから聞いているわ
じゃあ編入クラスは前と同じだけど
基本無口でいることが条件
君は行方不明となっているからバレないようにね
先生入ってきてください」
担任であった先生が入ってきた
「先生、あとはよろしくお願いします」
先生も一礼して
俺は先生と校長室を後にした
教室に行く途中に先生から話を聞いた
すべて伝わっているようだ
「じゃあ先生が合図したら入ってきてね」
俺は頷き、先生は教室に入っていった
無口ってことはポーカーフェイスを保たなければならない
任務で慣れてはいるが
みんなに嘘をつきながら過ごすのは心苦しい
合図があったので教室に入った
ところどころ俺の名をささやく者もいるが聞き流した
教卓にたどり着き
先生が黒板に名前を書いていく
そして俺は名乗った
「大鳥結羽です」
next episode