第6話 ライバルの魔剣(CV:渋いオジ様)登場
「――ほう、それが聖剣エリスか。案外、小柄なのだな」
漆黒の甲冑を纏った男が、街道の真ん中にいた。
手には、不吉な紫の光を放つ大剣。
「ちょっと! 小柄って何よ! その節穴を焼き付けなさいよ!」
エリスが吼える。だが、別の声がそれを遮った。
『……よせ、エリス。相変わらず、研ぎ澄まされた刃のような口調だな』
低く、落ち着いた男の声。
声の主は、相手の魔剣そのものだった。
「……あの剣も喋ってるのか?」
「その声……魔剣『ディザスター』!? まだ折れてなかったの!?」
『我ら魔剣の矜持、お前のような若造には分かるまい。主よ、見ていろ』
漆黒の騎士が、踏み込みと共に大剣を振り抜く。
アルトは反射的にエリスを構えた。
「アルト! 負けちゃダメ! 私の鞘の装飾の方が、あいつの柄より三倍は高いんだから!」
「……値段で戦うな!」
激しい音が響き、火花が散る。
『甘いな、エリス。主の筋力が足りていない。我の主を見ろ、この体幹』
「はあ!? アルトはね、これから伸びるタイプなの! 適合率はこっちが上よ!」
「……。……なあ、二人とも、戦いに集中してくれ」
アルトは押し返しながら、小声で訴えた。
目の前の騎士も、眉をひそめて自分の剣を見つめている。
『……主よ、すまぬ。この女の甲高い声を聞いていると、つい昔の癖が出る』
「誰が女よ! 私は『至高の美少女』よ! アルト、今すぐこいつの切っ先をへし折りなさい!」
エリスが質量を増す。
アルトは一気に踏み込み、エリスを振り抜いた。
大剣の表面を掠め、強烈な衝撃が走る。
「……チッ、ここまでか。引き上げるぞ、ディザスター」
騎士は闇に消えるように撤退していった。
『さらばだ、エリス。……相変わらず、騒がしい奴だ』
「逃げるの!? 戻ってきなさい、この錆び付いたロートル!」
エリスの罵声が空に響く。
アルトは地面に座り込み、大きく息を吐いた。
公務員試験の参考書の余白に、「剣がうるさい」とだけ書き殴った。




