第5話 剣が風邪を引く(?)
焚き火の爆ぜる音が響く。
アルトはエルフ綿で、エリスの表面をなぞり続けていた。
「……一時間は磨いてる。そろそろ勘弁してくれ」
「ダメよ……。まだ、ここらへんが……熱っぽいの……」
脳内の声が、いつになく細い。
「熱っぽいって、金属が知恵熱でも出すのか?」
「……うるさいわね……。私だって、繊細なんだから……」
アルトは手を止め、月明かりの下で刃を見た。
白銀が、心なしか赤みを帯びているように見える。
触れてみると、芯からじわじわと広がるような熱があった。
(いつもならうるさいだけの剣が、妙に静かだ)
(その違和感が、少しだけ気になった)
「本当だ。かなり熱い。水でもかけるか?」
「バカ……! 急に冷やしたら……焼きが戻っちゃうでしょ……。優しく……もっと、優しく磨いて……。あと、鞘の中に……柔らかい布を敷き詰めなさい……」
アルトは予備の着替えを細長く裂き、鞘の中に詰め込んだ。
「これでいいか?」
「……。……あんたのその、不器用な手……。意外と……悪くないわよ……」
声が、次第に小さくなっていく。
規則的な、微かな振動が柄から伝わってきた。
アルトはエリスを抱えたまま、自分も毛布にくるまった。
独り言を呟き、目を閉じる。
翌朝。
アルトが目を覚ますと、隣で輝きが爆発していた。
「おっはよー! アルト! コンディション、完璧よ! さあ、今すぐ跪いて、私の美しさを称える詩を作りなさい!」
耳を塞いでも無駄だった。脳内に直接叩き込まれる。
「……。……治ったみたいだな」
「治ったんじゃないわよ、進化したの! さあ、朝ごはんの後に、もう一度仕上げ磨きをすること。わかった?」
アルトは重い体を起こし、空を見た。




