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第3話 武器屋への嫉妬

 腰に布でぐるぐる巻きにされたエリスが、不機嫌そうに唸る。


「この布、安物でしょ。肌触りがガサガサして不快だわ。シルクに買い替えなさい」

「これでも村で一番高い手拭いだ」


 アルトは寝不足の目をこすり、目的の看板を見つけた。

 鉄床と槌が描かれた、質素な店構え。


「……ここか。オイル、売ってるといいんだが」

「は? 武器屋? 私という完成形がいながら、こんな野蛮な場所に入るつもり?」

「手入れ用品を買いに来ただけだ」


 重い扉を開けると、熱気と金属の匂いが押し寄せてきた。

 壁には無数の剣や斧が並び、奥では初老の店主が無愛想に剣を研いでいる。


「……いらっしゃい。何用だ」

「あ、オイルと、できれば質のいい磨き布を……」


 アルトが言いかけた瞬間、腰のエリスが激しく震えた。


「――何よ、ここ! 最悪! 不潔! あっちの棚に並んでる剣、見てなさいよ! 刀身に脂が浮いてるわ! あんなのと一緒に並べられたら、格が落ちるじゃない!」


 店主の鋭い視線が腰の布包みに注がれた。


「……ほう。兄ちゃん、いいもん持ってるな。そいつ、ただの剣じゃねえだろ」


 店主が歩み寄ってくる。


「近寄らないで! このオヤジ、手が油まみれよ! その手で私に触れたら、末代まで呪ってやるんだから!」


 エリスが物理的に重さを増し、ベルトがみしみしと音を立てる。


「いや、これはただの古い剣で……」

「隠さなくていい。長年叩いてりゃ分かる。……見せてくれ。拝ませてくれるだけでいい、オイル代はタダで構わん」

「タダ……」

「ふざけないで! 私は安売りされるような女じゃないわよ! アルト、断りなさい!」

「……すみません。この剣、ちょっと人見知りが激しくて」

「剣が人見知りだと? はは、違いねえ」


 店主は笑いながら、奥から小さな瓶を取り出した。


「これを持っていけ。最高級の魔物油だ。布は、このエルフ綿の端切れをやろう」

「え、いいんですか?」

「ああ。そいつを大事にしてやってくれ。……その剣、なんだか誇らしげに震えてやがるな」


 アルトは、隣の安物の剣に向かって「あんた、私の輝きに気圧されて錆び始めてるわよ!」とマウントを取っているエリスを思い、遠い目をした。


 店を出て、再び大通りへ。


「ふん、まあ、あのオヤジは見る目があるわね。私の美しさを一目で見抜くなんて。でもアルト、さっきのオイル。私に塗る前に、まずはあんたの指を三回は洗いなさいよ!」


 アルトはオイルの瓶を握りしめ、ギルドへと足を向けた。

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