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華を宿す君へ  作者: 瑞ノ星
少女が女神になるまで
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第二話:泥沼の街

賑わう街を見た苗は、自然と歩を進めていた。


苗は、自分以外の人間を見たことがない。

かつて愛した怪物、先生から教えてもらった街という概念。それが目の前にある。存在すら幻と思っていた人間が、ここにいるのかもしれない。人間とはどんなものなのだろう、と、苗は心を踊らせていた。


やがて苗は街の入口にたどり着いた。しかし、想像していた街ではなかった。

街は泥沼の上に建てられていた。濁った沼がぶくぶくと泡を立て、異臭を放つ。こんな環境で、普通の人間が暮らせるはずがない。まだ人の姿を残す苗にとって、それはあまりにも奇妙で、嫌悪を拭いきれなかった。喉が焼けつくようで、思わずえずいてしまう。


それでも、確かに人の営みはそこにあった。

不快感を胸に抱いたまま、苗は一歩を踏み出した。


街の門はなかった。足を進めると、眼を見張るほど異形と化した人々が行き交っていた。


ある者は腕が四本あり、器用に桶を抱えていた。またある者は目が複数あり、それぞれ別の方向を見ている。またある者は、頭から生えた触手を揺らしていた。


呆然と立ち尽くす苗に、通りかかった赤髪の青年が驚きの声を上げた。


「驚いた…アンタ、ほとんど人間じゃねぇか!」


彼は炎のような目を輝かせ、抱えていた荷物を思わず放り投げた。それほどまでに、苗の姿は奇妙に見えたらしい。


「…そんなに変かなぁ。」

苗は自身の容姿を改めて見つめる。包帯で覆った四肢は酷く爛れ、毒が蓄積した体は疲労を感じている。この街に入ったところで、更に重症化している。それでも、彼らと比べれば、まだ人間に近いのかもしれない。


「この街じゃアンタくらいだよ、毒の霧吸ってしんどい顔してんのは!」

赤髪の青年は眩しいほどの笑顔でそう言い放った。


「貴方、名前は?この街について知りたいことが山ほどあるの。」

苗がそう問うと、赤髪の青年は快く答えた。


「オレはイスカ。この街で便利屋をやってるんだ。案内してやるよ。」


イスカと苗は街を歩く。イスカは、この街が泥沼の街という名であること、住民は皆、魔人という成れ果てになっていることを苗に説明した。イスカもまた魔人であり、背中から炎のような翼を出せるようになったという。行き交う魔人達とすれ違うたび、苗は好奇の目で見られていた。


「…要するに、オレらは元人間。こんな姿になってでも生き延びたかったんだ。胡散臭い錬金術師に助けを求めてさ。詳しいことは本人から聞けよ。」


歩を進め、たどり着いた先は、怪しいレンガの家。


「街の皆は錬金術師を尊敬してるけど、オレは別になんとも思ってないね。」

イスカはそう言って、踵を返した。


取り残された苗は、意を決して戸を叩く。

返事はすぐに返ってきた。


「はぁい、どちら様〜?」


それは、若い女性の声だった。

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