8話 欲するもの
その日の夕刻
セルジオ率いる連合軍の先発隊、S級パーティ、任意のA級B級パーティがアルダ砦に入場した。
残りのA級B級パーティはフルツに戻った。
前線先発隊、大隊長セルジオは各冒険者パーティと連携を図り、周囲の警戒などを任せ、前線先発隊は城壁以外のアルダ砦内爆発で散乱した木片石片等の除去、城壁内での野営・テントが出来る設置・準備、食事が出来る場所などの準備などをテキパキとこなしていた。
そして、日が暮れるギリギリの時間になって、リバウ皇太子率いる本隊が砦に入場した。
セルジオ隊長はリバウ皇太子を迎え入れ、砦内中央の教会跡の方へ案内した。
リバウ「それにしても、城壁以外何も残っていないとは。」
セルジオ「はい。それについては後程報告させていただきます。」
リバウに付き従うサムエルが
「セルジオ。既に報告として入場可能と修復可能とも入っている。明後日あたりにはこちらにも物資が届くように手配は皇太子様からご許可を得ておる。」
セルジオ「はっ。有難きご配慮でございます。」
リバウ「せっかくこのアルダを連合軍が奪還したのだ。そうやすやすとまた魔族に奪われぬようにせんと。」
サムエル「仰る通りでございます。」
セルジオ「今回の奪還作戦、冒険者パーティにはただならぬご協力をいただきました。宜しければ皇太子様より一言でもいただければと…。」
リバウ「…、うむ。今日は少ないが大樽の酒も本隊と一緒に持ってきた。祝宴を祝う為に。乾杯でも致しましょう。」
セルジオ「有難きに存じます。」
そういってまた、取り仕切りに戻っていった。
皇太子付衛兵が椅子やテーブルなどを用意し、皇太子はゆっくり座りガヤガヤと忙しくしている砦内をゆっくり見ている。
サムエル「皇太子様。して、これから?」
リバウ「全ては予定通りに。」
サムエル「承知致しました。」
教会跡を中心に、本隊、そして各S級パーティが本隊を四方で囲むように、そしてまわりに先発隊、そして城壁や各門付近に各A級B級パーティ、その様な形で野営の準備をしていた。ただ、北門方面には大きな広場を作り、ちょっとした集会場のような場所に設定している。
そこに、リバウ皇太子以下の衛兵騎士隊、本隊、そして冒険者パーティ達が集っている。
リバウ皇太子は酒を片手に台の壇上に上がっている。
リバウ「人類は今日こうして、このアルダ砦を奪還した。
聞けば、死傷者ゼロという快挙を持って。
我々人類はまたここから、人類の叡智を取り戻すために、魔族と戦う事になるであろう。
しかしこのアルダがある限り、我々人類は負けない。
明日からまた、それぞれ皆には動いていただく事になると思う。
が、しかし、今日は2年ぶりのアルダ。
皆でこの喜びを分かち合おう。」
何処からともなくサムエルの声
「それでは乾杯!」
そこに集まった全員
「乾杯!」
様々に皆、お酒を飲み話している。
そんな中、【ノウスオルド】のミリアはキョロキョロしながら辺りを見回し歩いている。誰かを探している様子だ。
【ルクス・テネ】のモロもまた、誰かを探している様に歩いている。
アルダに残ったA級パーティ、【イヴィノ・ヴェリタス】の僧侶・エリザもまた誰かを探して歩いていた。
【ス・イジェネリス】のメンバー達はワイワイと酒を飲んでいる。
バイロン「おい、レイカはどこ行ったんだ?」
ガイル「さっきまでは居たと思ったんだけど…。」
ペンス「アルダに入場してから、アイツ何だかウキウキしてたんじゃねぇか?」
ガイル「つー事は、今夜あたりいよいよ俺んとこにでも来るのかな?」
ペンス「そういや、何か俺と目があった時、ちょっと目を逸らしたんだよな。気があるって事だよ、俺に。」
バイロン「馬鹿言ってんじゃねぇ。あいつは俺の女だ。他の奴には指一本でも触らせねぇ。」
彼らの話をずっと目を瞑って黙って聞いて酒を飲んでいるジール。
カイト、リューギ、オーシン、ジーナ、レイカはアジトにいた。
リューギ「じゃあ再会を祝して。」
全員「乾杯!」
みんなの持ってる酒杯が集まった。
オーシン「そう言えばこのお酒ってどうやって?」
カイト「まぁそれはハムが本隊の荷物から…。」
ジーナ「ねぇ、カイ君。なんで2年後だったの?」
カイト「うん。成人式だから。」
リューギ「え、それだけ?」
カイト「ああ、まぁそれだけじゃないけど。でもこうやってみんなでお酒飲んでも捕まらないしさ。」
ジーナ「そもそもここ日本じゃないし。」
レイカ「まさやんは飲んで良いの?お坊さんなんでしょ?」
オーシン「ここは…、日本じゃないから…。」
リューギ「なんだそれ。」
オーシン「そういえば、こんな会話前もしたよね。」
ジーナ「そうだっけ?」
リューギ「思い出した。2年前だよ。俺達が18歳になってさ。」
ジーナ「ああ。あった。みんなに無理矢理お酒飲まされた時だよね。」
オーシン「バロさん達が、『ここでは18歳になったら大人だって言ってさ。」
レイカ「あれって、確かウルムに行く前の日で、それでみんな酔いつぶれて二日酔いになってウルム行けなくなったんだっけ?」
リューギ「そうそう。あんだけ飲まされれば、水だって吐いちゃうよなってくらい。」
ジーナ「それでエマさんにめちゃんこ怒られたんだよね?」
リューギ「特にまさやんがな。」
オーシン「たかちゃんもトモもそんなにだったのに、何故か俺だけ。」
レイカ「そういえばあの時カイ君怒られてたっけ?」
リューギ「ああ、そうだった。カイトだけ居なかったんだよな。」
カイト「ああ。そうだっけ?覚えてないなぁ。」
そう言ってカイトは少しボーっと考え事をしていた。
レイカ「カイ君?」
カイト「ああ、ごめん。いや、思い出そうと。あの日俺何してたんだっけ?って。」
オーシン「エマさんに凄く怒られてるのに、エマさんの後ろでレキアさんはゲラゲラ笑ってたし、バロさんは朝稽古終えて爽快に帰ってきてて、その横を何事もなかったようにライラックさんがスタスタ歩いてて。俺は覚えてるよぉ。」
ジーナ「出た。まさやん昔から何でも覚えてる人。」
オーシン「そういえばあの時ミーユさんも居なかったんだよな。」
カイト「そうだったんだ。大変だったね。」
リューギ「お前、そういうとこあるよな。時々他人事モード。」
レイカ「たかちゃん!カイ君はそんな人じゃないでしょ!」
リューギ「わかってるよ、そんな事ぉ。」
カイトは話を逸らした。
カイト「ああ、でもみんな、それぞれの国で強くなったでしょう?」
リューギ「なんだかそう言えば、カイトはシアの事も知ってたし。俺達の事も知ってる風だった。まさか?」
カイト「うん。ごめんね。」
そう言うと、お酒のお替りを持って、ゼレが現れた。
カイト「2年前、皆と別れてすぐにノア爺達が来て、俺に仕えたいって言ってきたんだ。俺はミーユの敵を討ちたいって思ったし、あの時俺をヴァデレトロ近くまで運んでくれたのもハム達だった。それでみんなで復讐しようって。」
ジーナ「それで付けたのが…」
カイト「ミーユ衆」
オーシン「うん。そのまんまだけど、ネーミングは良い。」
カイト「それでね、元々ミーユは暗殺系だったからみんなそれぞれ鍛えられてたじゃん。だからもうちょっと組織的にしようと思って。」
ジーナ「忍者集団?」
カイト「まぁ、そうだね。」
レイカ「6人で?」
カイト「最初はね。でもノア爺と話して、もう少し増やそうってなって。今は20人くらい。」
リューギ「うお、すげぇな。」
カイト「ちゃんとみんなについてくれる人も鍛えてるから。」
オーシン「本当になんかすごいね。」
カイト「でも最初はあの5人だったよ。フルツにそっくりなアジト作って、みんなで色々話して。それで仲間はどうしてるかなぁって言ったら、諜報訓練でみんなにも会いたいからって。」
リューギ「それでじゃあ俺達の事も?」
カイト「うん。みんなそれぞれどうしてるか。でも俺達も諜報活動とかの訓練にもなってるし丁度良かったんだよ。だからゼレも…。」
ゼレ「私はレイカ様を」
レイカ「え、私?どうして声かけてくれなかったの?」
ゼレ「…、それは」
リューギ「そしたらアヤの、きっと俺達の邪魔になるからだろう?」
カイト「うん。ありがとう。たかちゃん。」
オーシン「きっと知ってる人に会ったら、俺も頼っちゃったりしちゃったと思うんだ。だから今思えば、会わなくて良かったよ。」
リューギ「そういう事だ。」
レイカ「…。そうよね。そう言えば今はゼレさんだけ?」
するとゼレが
「只今ハム様は王家の諜報、セム様は全体の見回り。私とジュノは女でまだ砦内は目立ってしまいますので私はここで。ノア様とジュノは一度フルツに戻っています。
ノア様はアジトの食料と必要な道具などの調達。ジュノは…」
レイカ「ジュノちゃんは?」
カイト「まぁそれは明日早朝のお楽しみ。」
ジーナ「何それ?」
カイト「今回の俺達の目的は、俺達ミーユ衆だけでアルダを奪還する事と…」
リューギ「…と?」
カイト「それが明日のお楽しみってやつだよ。」
1刻ほど話しているとリューギが
「そろそろ戻らないと、パーティの奴らが心配するから行くよ。」
カイト「うん。また何かあれば誰かに。」
オーシン「じゃあ行こうか…?」
そう言うと、ジーナとレイカがモジモジしている。
気を利かせたリューギが
「まさやん…、先、行くか。」
オーシンも慌てて
「う、うん。そうだね。」
そういって、早々に出て行った。
アジトを出たリューギとオーシンが暗闇の中、砦まで歩いている。
リューギ「今日はカイト大変だな。」
オーシン「仕方ないよ。二人とも頑張ったんだし。」
リューギ「まぁ、そうだな。」
オーシン「たかちゃんだってほら?あの子」
リューギ「バーカ。そんなんじゃねぇよ。」
オーシン「たかちゃんのそんなんじゃねぇっていうのはそういう事だって昔から言ってるのに。」
そう言って揶揄った。
リューギ「殴るぞ。」
オーシン「俺は僧侶だよ?治せちゃう。」
リューギ「ハハハ。流石救世主!」
オーシン「でしょう?」
そう言って、砦付近まで来ると
リューギ「バレるなよ?」
オーシンは深い深呼吸をして
「うん。大丈夫。」
そう言って、お互い別れた。
北門、南門とは違い、東門、西門は小さく出来ている。
アジトは東門の先で、リューギはその東門から入っていった。
まだ中は賑やかな声が聞こえていて、リューギはさりげなく歩いていた。
あらかじめオーシンに魔法をかけてもらって酒気を取っ払ってくれていたからいつものリューギにちゃんと戻っていた。
すると、もの凄い勢いでリューギを見つけたミリアが近寄ってきた。
ミリア「リューギ様。どちらへ行かれてたんですか?」
少し以上怒ってる感じだ。
リューギ「あ、いえ、ちょっと警戒しに外へ。」
ミリア「本当ですか?」
リューギ「勿論です。魔獣はいませんでした。ミリアさん、少し酔っておられますか?」
ミリアは少しだけハッとして
「いえ、ちょっと乾杯の時だけ、です。」
リューギ「そうですか。楽しんでおられますか?」
ミリア「リューギ様が全然いなかったから、楽しんでません。」
リューギ「す、すいません。」
ミリア「どこ探してもいらっしゃらないし、そしたらレイカ様もジーナさんもいない。もしかして先程の即席パーティの時、レイカ様かジーナさんと仲良しになったと思ってどこかへ抜けてたんじゃないかとおもって。」
リューギ「相変わらずミリアさんは想像力が豊かで。そんな事ありませんよ。」
ミリア「本当ですか?」
リューギ「はい。」
ミリア「だってお二人ともお強いって言うし。ましてやレイカ様は高嶺の花の様な美しさです。ジーナさんも私は今日初めてお見受けしましたが、とっても可愛い気がします。もしもあのお二人がリューギ様に言い寄って来られたら…」
リューギ「言い寄って来られたら?」
ミリア「…、私は太刀打ちできません。色んな意味で。」
リューギ「ハハ。そうですか。あのお二人はそれほどなのですね。私は申し訳ありませんが、タイプではありませんから。」
ミリア「本当ですか?」
リューギ「はい。もしもどちらかに言い寄られても私はお断りすると思います。」
ミリア「え、絶対噓です。」
リューギ「絶対、本当です。」
ミリア「だってレイカ様ですよ?あんな綺麗で格好良くて…」
リューギ(で、ツンデレで昔からカイト一途で?)
ミリア「ジーナさんだって凄い可愛くて守ってあげたいとか…」
リューギ(これまた違ったデレデレでカイトラブで、守ってあげたい?いやいやないだろうトモはぁ…)
ミリア「聞いてます?」
リューギ「はい。ちゃんと聞いています。」
ミリア「もしかしたら宴から抜けて…、もしどこかでリューギ様と抱き合っていたらなんて考えちゃったらもう私…」
リューギ(俺、じゃないけど、今頃ね)
リューギは気を取り直し
「ミリアさん。私は外に警戒しに行っただけですから、安心してください。」
ミリア「本当に信じて良いのですか?」
ミリアはちょっとウルッとしている。
リューギはミリアの頭に優しく手を乗せ
リューギ「はい。信じてください。」
そう言うと、ミリアははち切れんばかりの笑みを見せた。
リューギ「じゃあ行きましょうか。」
ミリア「はい!」
そう言って宴の中に入っていった。
アジトには、カイト、ジーナ、レイカ、そしてゼレがいた。
ゼレはカイトに
ゼレ「主様。私も外で待機しております。ごゆっくりしていただければと。
(小声で)私は後で、で構いませんので。」
そう言って、ジーナ、レイカに会釈をして外に出て行った。
ジーナはレイカに
「ほら、アヤ。ようやくなんだから。」
レイカは黙って下を向き俯いていた。
ジーナ「じゃあ、トモが先に…」
と言うと、ジーナの手を握って
レイカ「カイ君!…、(小声で)抱いてください。」
何となくは察してはいたが、言われると照れているカイトも
「す、ストレートだね。」
レイカ「ああ、もう。恥ずかしい。」
ジーナは笑いながら
「トモはその後で良いの。でもたっぷりカイ君に抱きしめて貰うからね。」
ジーナはそう言うと、外に出て行った。
シーンとするアジト。
カイト「アヤ。おいで?」
カイトがそう言ってもレイカは動かない。動けない。
カイトは微笑んで、レイカのそばまで行き、レイカをお姫様抱っこした。
レイカ「きゃっ」
カイト「アヤ。俺も本当にアヤに会いたかった。」
そう言うと、カイトは仮眠室の方へアヤを抱っこしたまま歩き出して、仮眠室の簡易ベッドの上にアヤをゆっくり座らせ、カイトもその隣に座った。
カイトはアヤの頬を手で触れ、そのままレイカにキスをした。
レイカはその瞬間にスイッチが入った様にカイトを求めるようにキスをした。
シーツの中で二人は重なり合いながら、お互いに手を握りながらまたキスをし合っている。
レイカ「私はカイ君のもの。私の全てはカイ君のもの。全部。カイ君は私の全て。今こうしてカイ君と一つになってることが私の幸せ。これ以上はない。カイ君がいなくなったら私もいなくなる。絶対私を捨てないで?」
カイト「アヤ?俺とアヤはずっと一緒だよ。トモも、たかちゃんもまさやんも。どこにも行かないから。」
レイカはカイトの首に手を巻き付け、
「カイ君とスライムみたいにくっついちゃえば良いのに。」
カイト「そうしたら俺達ぷよぷよだね。」
レイカ「カイ君とだったら全然良いよ?」
カイト「あ、アヤ、俺もう…」
レイカ「お願い。カイ君を感じさせて」
カイトが声をウっと漏らすと、レイカはその度にビクっビクっとして涙を流し
ながら深い息を漏らした。
カイト「アヤ?」
レイカ「カイ君が私の中にいるって言うだけで幸せなの。カイ君、私はカイ君の為にいるからね。」
そう言ってレイカはカイトとまた深いキスをした。
アジトの岩の扉がズレる音がした。
レイカがスッと出てきた。
ジーナはゼレと一緒に座っていた様だが立ち上がり、レイカの元へ走っていった。レイカはジーナにそっと「ありがとう」と言ってジーナは「じゃあ行ってくるね」って笑顔で今度はアジトに入っていった。
レイカはゼレに
「トモと待っててくれたの?トモが付き合わせてしまったら…、ごめんなさい。」
そう言ったがゼレは
「いえいえ。私がトモナ様とお話ししたかったのでお付き合いしていただいてました。」
レイカ「そうだったの。私はちょっとこれから…」
ゼレ「何か?」
レイカ「その…ちょっとまさやんのところに…」
そう言うと、気付いたゼレはレイカに小声で
「アヤカ様。私も…、出来ますので…、良かったら…」
レイカ「え。その…、えっと…」
ゼレ「アヤカ様。わかっております。戦いはまだ続きます。主様のお子様をお育てになるにはまだ…、ですよね?」
レイカ「…。はい。ではゼレさん。お恥ずかしいお願いですが、お願いしても?」
ゼレ「勿論です。」
そう言うと、ゼレはレイカのお腹の方に手をあて、何やら詠唱を唱えると手が光り出した。そして間もなく
ゼレ「はい。これで大丈夫です。」
レイカ「ゼレさん。ありがとうございます。」
そう言って深々とお辞儀をした。
ゼレ「フフっ。アヤカ様って本当に不思議な方ですね。」
えっという顔でゼレを見るレイカ。
ゼレ「私が最初に知った時のアヤカ様は、今の様にとても礼儀正しくて、どなたにでも親切でいつもその様に礼を尽くすようなお方の印象でした。でも、主様の前でだけは、その、なんというかいつも甘えている様な素振りで、見ていてまるで別人のようで。あ、すいません。」
レイカ「いえいえ、ゼレさんは知ってますから。その通りですし。」
ゼレ「でも、アヤカ様がお一人で修行されてる時期、私はちょうどアヤカ様を見守っておりましたが、今度はまるで冷たいくらいのお人柄になって…。一体どれがアヤカ様の本当のお姿なのか、と。」
レイカはクスクスと笑う。
レイカ「私、本当にツンデレですから。」
ゼレ「ツンデレ?」
レイカ「ああ、そっか。きっとどれも私ですよ、ゼレさん。」
ゼレ「でも、先程のお辞儀を見た時、やはりアヤカ様は慈しみ深い方だってやはり思いまして。」
レイカ「トモとはどんな話を?」
ゼレ「それは…、ちょっと。」
レイカ「カイ君の話でしょ?」
ゼレ「ああ、いえ、はい。」
レイカ「周り見えない私だってわかるわよ。ゼレさんがカイ君を特別な目で見てるって。ましてやカイ君よ?ライバルを見過ごすわけないわ。」
ゼレ「はい。トモナ様にもまるで同じ事を言われました。」
レイカ「トモは凄い大人で凄い子供。私達はライバルでもあり姉妹でもあり、でも何か一心同体みたいな感じなの。」
ゼレ「はい。トモナ様も言ってました。先程も、私は主様への想いを知られ、トモナ様にも、アヤカ様の話をされまして。」
レイカ「トモは何だって?」
ゼレ「私も実は先程、トモナ様にお聞きしたのです。今ちょうど、アヤカ様と主様が中でご一緒しているのを何とも思わないのか、と。」
レイカ「うんうん。そしたら?」
ゼレ「トモナ様は、『私とアヤは同じ想いでカイ君を見てるから、全く嫉妬もしないよ』と。たとえ順番が逆でも、きっとアヤもしないだろうって。奪い合うんじゃなくて分け合う。そう仰ってました。」
レイカ「うん。そう。カイ君は私達を見てくれるから。」
ゼレ「それで私はそれをとても羨ましく思いました。。」
レイカ「分け合ってる事?」
ゼレ「それもですが、アヤカ様とトモナ様のそのご関係を。」
レイカ「まぁ、確かにそうね。私とトモは本当に小さい頃から一緒だったし、トモは本当に私を守ってくれた。トモはいつも私がトモを守ってくれてるとも言ってくれる。本当にそう。私達もお互いに何か欠けていて、それを二人で補い合ってる気がしてて。カイ君は、私とトモに欠けてる一番深い部分にピタッとハマるの。私とトモはお互いがいなくなったら駄目だし、カイ君がいて初めて私達でいられるの。」
ゼレ「本当に羨ましいです。」
レイカ「ゼレさんもカイ君が好きなんでしょう?私から言わせれば、この2年もずっとカイ君と居られたんだから、よっぽど羨ましいわよ。」
ゼレ「トモナ様にもやはり同じ事を。」
レイカ「アハハ。やっぱりね。カイ君、たまらないでしょ?」
ゼレ「はい。私は最初、主様の底知れぬ強さに惹かれました。ミーユ様に鍛えられ魔人の私を凌ぐ強さをどんどん得られていって…。」
レイカ「あの時のカイ君は凄まじかったからね。」
ゼレ「それでいてとても無邪気でいながら、なんだか世の中を全て解ってる様な深い眼差しで…」
レイカ「ゼレさん?私の前でカイ君にトキめいてるんじゃない。」
そう言って笑った。
ゼレ「あ、すいません。私ったら。」
レイカ「冗談です。でも、本当にそう。今の話を聞いて嬉しくなる。カイ君の良さを知ってくれているだけで、何故か私も聞いてて嬉しくなる。」
ゼレ「しかしトモナ様もでしたが、怒らないのですか?私に。」
レイカ「うーん。そうねぇ。もしもゼレさんがカイ君を奪いたいなら、きっと私とトモは絶対に渡さないってなると思うわ。命を懸けてもね。でも、そうじゃなければ、カイ君がカイ君のままでいれるなら、私達にゼレさんを怒る権利もないし。」
ゼレ「怒られると思ってました。」
レイカ「じゃあ、怒ってみようかな、ジュノちゃんに。」
ゼレ「え?」
レイカ「だってジュノちゃんだってカイ君好きなんでしょう?」
ゼレ「ええ、いえ、たぶん、いや、はい。」
クスクス笑うレイカ。
レイカ「ゼレさんて、もっと怖い人かと思ってたけど、なんかすごい素敵な人だったんですね。」
ゼレ「私が魔人だからですか?」
レイカ「私にとっては、魔人も獣人も人間もよくわからないわ。きっと私達5人はみんなそう思ってると思う。たぶんみんからすれば、私達5人の方が、見た目人間なだけで、中身は全然違うから。」
ゼレ「そうですね。皆さま本当に…」
そう言って二人は笑い合った。
アジトの仮眠室で簡易ベッドの横にカイトは座っている。
その目の前に、ジーナは立っていた。
ジーナはカイトに抱きつきキスを丹念にしだした。
散々にした後、口をカイトから離し
ジーナ「アヤの味がする。」
カイト「なんか、ごめん。」
ジーナ「あのね、カイ君。トモはアヤも大好きなの。アヤとカイ君が一緒に居る感じがしてなんだかすごく嬉しいの。」
そう言って、ジーナはしゃがみ込み、カイトのものをしゃぶり出した。
カイト「トモ?」
ジーナの情熱的なそれは、すぐにカイトを元気にした。
ジーナは服を脱がずにそのまま短パンだけを脱ぎ、カイトと一つになった。
ジーナ「ああ。もうずっとこのまま離れないでいたいなぁ。」
カイト「俺もだよ、トモ。」
ジーナ「ダメ。それ。その声。もうすっごい感じちゃう。」
グイグイ腰をカイトにあてていく。
ジーナ「カイ君のが入ってるっていうだけで凄く、いい。」
そう言うと、ジーナはビクビクして電気が走っていた。
ジーナ「ああ、またもうくる。」
そう言ってまた腰を動かす。
何度も何度もジーナは達し、カイトの舌を求める。
ジーナ「ああもうまた…」
本当に何度も。
そして、カイトも「俺も」というと、
ジーナ「カイ君、きて、カイ…」
カイトから出たもので、ジーナは脳が壊れそうな気持になった。
カイトはそのままベッドに倒れ込み、ジーナもまたカイトの上に倒れ込んだ。
カイトがゆっくりしようとしたところで、ジーナはすぐにまたカイトのものを口に含んだ。
カイト「トモってば?」
カイトの言葉を無視するように、一心不乱に含んだものを頬張るジーナ。
カイトはただ思うままに委ね、気が付けばまたジーナは今度全てを脱いでカイトの上に跨り一つになっていた。
ジーナ「カイ君。大好き。」
そう言って、ジーナは散々に腰を動かし何度もカイトの上で絶頂を迎えている。
そしてまた再びカイトも絶頂を迎えると、ようやくジーナはカイトの胸で一息ついた。
ジーナ「カイ君。ずっと一緒だよ。」
カイト「うん。」
アジトの外ではレイカとゼレが楽しそうに談笑していた。