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5話 拍子抜け

リューギ達【ノウスオルド】のパーティ達が通用道を通り抜け魔族領に入っていくと、向こうに見える森の手前でいくつかの火の煙があちこちに見えていた。


パーティ達が近づいていくと、何体もの魔獣が山になって焼かれていた。


【ノウスオルド】のリーダー・勇者のミューレルはそれらを見て

「全滅、ねぇ。」

そう言いながら歩みは止めずに森の中に入っていった。

パーティの最後尾を歩くリューギとミリア。

焼かれてる魔獣の死体にたむろしているB級パーティのメンバーにリューギは

「他のパーティ達は?」

と聞くと、そのメンバーの一人が

「軍からはB級パーティは森の中の魔獣の死体を集めて処理。魔石は貰って良いが、今回は素材は取らずに速やかに燃やせ、と。どうもここら辺の魔獣は全部、昨日やられてるみたいで。腐って森に魔気が溜まる前にって事。で、俺達は連合軍が来たら説明して、軍に引き継いだら先へ行ってまた処理。魔石いただけるのは良いんですがね、一体どうなってんのかわからねぇ。」

ミリア「森の中も?」

メンバー「ああ。森の中は魔獣の死体だらけ。ホーンラビットとかスライムがたまにひょいと現れるくらいで。でも俺が見たのはそれだけ。ボアも何もほとんど死んでたよ。」

リューギがまだ燃やして新しそうな魔獣の死体の山を見ると、確かに弱そうな魔獣が積まれているのが見えた。

メンバー「火魔法使えるB級パーティが残されて、後はみんな先に行ってるよ。」

リューギ「ありがとう。」

そう言って軽く会釈をした。

メンバー「アンタ、【ノウスオルド】のリューギ、だろ?光栄だよ。アンタみたいな立派な武人と話せて。アンタはアムーレでは有名だからな。獣人も亜人も差別なく、等級違っても見下さず、結構色んなパーティの男連中からも評判だって。今、話しただけで、何でそうなのかわかったよ。」

リューギは照れながらもまた会釈をして先の森の中に歩いた。

ミリアもそれに続きそのパーティメンバーに会釈をしてリューギに続いた。


リューギが少しいそいそと【ノウスオルド】のメンバーに追いつこうと早歩きをしていると、それに合わせてミリアも足早についてきている。

ミリア「女性の皆様にもですけどね。」

ミリアは少し怒ったような口ぶりで言った。

リューギ「何か?」

ミリア「いえ、先程の方が…、リューギ様が男にだけモテる、みたいな事を仰っていたので。」

リューギ「有難い事です。そう言われるのは。」

ミリア「リューギ様はわかっておりません。気を付けてください。思った以上に女性の皆様にオモテになるのですから。」

リューギ「そうですか?言われたことはありませんけどね。」

ミリア「そういうところです。お強いところを見せず、余裕というかおおらかというか。」

ミリア(私が睨みを利かせないといっぱいあらぬ女性が近寄って来るんだから…。)

リューギ「どうか?」

ミリア「いえいえ。なんでもありません。」

わかってないんだから。そういう感じで答えたミリア。


森の中には何組ものB級パーティが魔獣の死体を集めていた。

リューギが歩いていても「ここにもいるぞ」という言葉が奥から聞こえてきて、森の外へ運んでいるのがわかる。

火魔法は魔法使いなら大体使える初期魔法だから、おそらくB級パーティのほとんどは森の中にいる事と想像できる。

普段だったら一体程度なら問題ないのだろうが、集めての火葬であれば、燃え移って火事になってしまう恐れもある。


冒険者パーティ達は森の手前か越えた先に魔獣の死体を集めなければいけない。


歩いているリューギ。

(全くカイトのやつ。無茶苦茶やってんなぁ。でも、なんだか森の魔物が弱そうなのばかりが気になる。1月前まではもっと強そうな魔物もいたんだけどなぁ。何かあるのか?)



森を抜けた辺りの平原に、【ルクス・テネ】のパーティと【ピエタス・ディクシタス】のパーティー達が並んで歩いていた。


平原とはいえ地平はうねっているから歩いていても先までは見えていない。

先程の森の中の魔獣の死体の処理にもかなり時間もかかるだろう。

案の定森を抜けた先にも、森から魔獣の死体を運び魔石を取っているパーティ、そして取り去った後の魔獣の死体をまとめて燃やしている冒険者が、左右に分かれて作業しているのが伺えた。


(随分足止めを食らっているな。時間がかかりそうだ。)

その様子を見ながら、オーシンは歩を止めることなく先を歩いた。


平原を歩き少し緩やかな丘を越えると、何体かの魔獣の死体と冒険者パーティが集まっていた。

2組のS級パーティはそこに向かって近づいた。

冒険者パーティの一人が

「おい、あれって【ルクス】と【ピエタス】だよな?」

と小声で仲間に言うと、その仲間も

「やべぇ。本物だ。オーシンだ。後で祝福うけたいなぁ。」

「え、そっち?どうしたって【ルクス】のジーナだろう?お前真面目か?」

「え、だって救世主だぜ。もしかしたらあの人が魔人討伐を果たしてくれるかもなんだぜ。」

「俺は世界より可愛くて強い女がいればそれで良い。」

「じゃあお前もS級なのか?」

「んんん。やっぱり女はか弱いのに限るかな。」


冒険者パーティに近づくと、【ルクス・テネ】の槍使い、ナダルが

「ここもか?」

と誰にでもなく言った。

見渡すと、ゴブリンが無数に散らばって倒れている。

パーティの一人が

「ああ。これから魔石だけ取って死体集めようかってところだ。」

ナダル「A級にもなって死体集めか。今日はなんだか拍子抜けだな。」

冒険者「本当だぜ。、少しは気合入れてきたつもりだけどよ。なんなんだって感じだ。このゴブリン見てくれよ。」

そう言って冒険者はナダルにゴブリンの死体は見せた。

冒険者「あっという間のってやつだな。首の切り傷以外何もない。戦った傷もだ。綺麗さっぱりって。仲間割れか?」

ナダルはゴブリンの首をしゃがみ込み見て

「…短剣だな。スパッと。見事なもんだ。長剣だったら首が無くなってるしな。」

冒険者「そうなんだよ。普通魔獣って魔核刺したりしねぇと意外に死ななかったりするんだけどな。血の出過ぎで死んでる感じか。それとも…。

まぁ早いとこここら辺も燃やさねぇと魔気が充満しそうだしな。それより軍は来るのか?」

ナダル「いや、俺達がフルツを出る時はまだ来てねぇ。まだ1刻くらいじゃここまで来ないんじゃないか?森の中を綺麗にするのに、ありゃあ時間がかかりそうだしな。」

冒険者「違いねぇ。まぁ魔石取りまくって酒代稼ぎにゃあちょうど良いってもんだ。」

ナダル「そうだな。」

ナダルはそう言って立ち上がり【ルクス・テネ】のメンバー達を見て先を即した。

【ルクス・テネ】のメンバー達はそこから先を歩き出した。


オーシンが

「ご苦労様です。私達は先に行かせていただきますが、皆様に神のご加護がありますように。」

というと、錫杖を地面に2回鳴らし、シャンシャンと音が鳴ると、【ピエタス・ディクシタス】のメンバー達は両手を握り冒険者パーティ達に深いお辞儀をした。

オーシンは片手で掌を横にして指を伸ばし、軽い会釈をしてから

「それでは私達も行きましょう。」

そういうと、【ルクス・テネ】の後を追うようにそこから離れた。


錫杖の遊環の音は珍しく、なんだか本当に神の加護を受けた雰囲気にさせた。

そこにいた冒険者パーティ達はなんだかその不思議な感覚で少しの間【ピエタス・ディクシタス】の歩き去った後姿に見とれていた。


オーシン(仏教文化なんてこっちにはないからね。珍しい音なんだろうなぁ。こっちは小さい頃から聞き過ぎて何も感じないけど。)

そう思いながら歩いた。


歩いた先にも何体ものゴブリンの死体が転がっていた。

歩けば歩くほど、その魔獣の死体は増えていき、冒険者パーティの数がみるみる減っていくのが見えた。


【ルクス・テネ】のメンバー・ラレイは

「いやいや、本当に何が起こってるんだ?魔族同士の争いか?」

そう言うと、ナダルは

「揉み合ってる形跡はない。仲間割れならもっと戦ってる跡みたいなものが残ってるはず。見ろよ。」

そう言って、ナダルは視界から見える魔獣の死体達を見て、

「まるで気付かないうちにあっという間にやられました、っていう光景だな。しかもそのどれもがナイフか刀で。ラレイ得意の弓って訳でもねぇ。跡がない。

この先の…、アルダにいるのは敵か味方か。まぁ行けばわかる。」


ジーナは一人無言でぶすくれて歩いていた。

勇者・モロはジーナに恐る恐る聞いた。

「あのう、ジーナ。何かあったのかい?さっきから、なんだかご機嫌斜めというか…、怒ってるというか…。」


ジーナはモロの話を全く聞いておらず

(カイ君ってば。どんだけ強くなってるのよ。トモだっていっぱい頑張ってきたっていうのに…。でも本当にこれをカイ君一人だけでやったのかな。流石にこの数は捌けないかも。でも、どうも死んでる魔獣が弱そうに見えるんだよね。まるで逆に何か仕組まれてる?カイ君も気付いてると良いんだけど。

ああ、早くカイ君に会いたいよぉ。バカ、バカ、トモがどんだけカイ君に会いたいと思ってるか人の気も知らないで。アヤが先に行っちゃってるし。アヤったらカイ君会いたいオーラ出し過ぎてマジで冷や冷やしたけど。今頃先で会ってるのかなぁ。走りたい。飛びたい。抱きつきたい。)


モロ「ジーナ…?」

ジーナ「ああ、ごめん。何?」

と急に笑顔で応えたジーナにモロは

「あ、いやいや、なんでもないよ。」

そう言ってそれ以上聞けなくなった。



歩いていると、ワーウルフの死体群に【ルクス・テネ】は遭遇し、そこに1組の冒険者パーティがいるのが見えた。


モロ「これは凄いね…。ざっと100体くらいかな。仲間を呼ばれたんだろうな。」


そう言いながら、【ルクス・テネ】一行はA級冒険者パーティ【イヴィノ・ヴェリタス】に近寄った。

ナダル「やっぱり【イヴィノ】だったか。おい、アンドレ、デカいからすぐわかったぜ。」

5人パーティの【イヴィノ・ヴェリタス】の中でも、重戦士・アンドレ(男)は全身鎧に丸太くらいの刀が特徴の2メドを超える大男だ。

アンドレ「おお、ナダルか。そろそろ来るかと思ったよ。」

ナダル「ん?どうしてだ?」

アンドレ「いや、さっきここまでは【ス・イジェネリス】と一緒だったからな。」

ナダル「あいつらは?」

アンドレ「レイカ嬢が黙々と先に行っちまってな。バイロン達もギャーギャー騒ぎながらついて行ったよ。ジールさんがいなかったら喧嘩するところだったよ。」

そう言ってアンドレは笑った。

ラレイ「下品だからな。」

アンドレ「ああ。うちの全員がキレる寸前だったよ。同じエルフのサーシャ(女)が一番にガイルに怒ってたからな。」

ラレイ「同族意識の高いエルフでもか。俺達獣人も仲間意識は強いけど、あいつらのあれは人格の問題だ。」

アンドレ「ジールのおっさんが居なきゃ、ここで俺達が戦ってたかもしれないな。」

ナダル「それでここで別れたのか?」

アンドレ「それもあるが、俺達が一番先行しているパーティだ。ほら、あっちに軍がいるだろう。」

そうアンドレは目線を向こうにやると、そこに20人くらいの騎士隊がいた。何やら話し込んでいる様子だ。

アンドレ「状況がわからないから、あいつらも【ス・イジェネリス】を先に行かせたみたいだな。」

ナダル「お前らも気の毒だな。本当ならS級の力を持ってるのに、この前も見送られたんだろう?協会に嫌われてるのか?」

アンドレ「いや、この前も教皇様に呼ばれて国に帰ってたんでな。まぁ仕方ないさ。俺達ウラノスの民は教皇様を第一に考えてるからな。まぁこれも神の試練ってやつさ。」

ナダル「まぁ、待ってるよ。」

アンドレ「そのうちな。」


そんな会話をしていると、後ろから【ピエタス・ディクシタス】のパーティが追い付いてきた。


【イヴィノ・ヴェリタス】の男剣士・ガスコが気付くと

ガスコ「オーシン様。」

と言って頭を下げた。

すると、他の【イヴィノ・ヴェリタス】のメンバー、サーシャも僧侶のエリザ(女)も斥候の獣人・ウッド(男)もそれに気づき頭を下げた。

アンドレも軽く頭を下げ、

「オーシン様ももうこちらへ?」

そう言うと、オーシンは丁寧に頭を下げ返し、

「ご苦労様です。ええ、私達も今。」

そう言って【ピエタス・ディクシタス】の他のメンバー達も慇懃に頭を下げた。

エリザ「オーシン様。ゆっくりお話も出来ずに申し訳ありません。」

オーシン「エリザさん。お気になさらずに。今は「イヴィノ・ヴェリタス】のの一員なのです。私に気を遣う必要はありませんよ。」

エリザ「オーシン様。お心遣いありがとうございます。」

そんな会話を少し遠くにいたジーナが見て、クスクス笑っていた。

ジーナに気付いたオーシンは見られたくなかった、そんなような表情で照れていた。

エリザ「オーシン様?」

オーシン「ああ、いえいえ。何でもありません。」

そうやって誤魔化した。


エリザはオーシンの弟子のような存在。

オーシンは弟子という形をとらず、教えられることは出来るだけ多くの人に教えるというスタンスではあるが、オーシン自身が何かと忙しくバタバタしている中で、エリザはオーシンについていき様々な事を学んでいた。ちょうど1年前に今の【イヴィノ・ヴェリタス】のメンバーに誘われてパーティに加入した。

少なくともエリザはオーシンに対して師以上の感情がある様子だが、当然オーシンはそれに全く気付かない。

ジーナは一瞬でそれを勘づいた。しかしそれすらオーシンは気付いていない。


騎士隊の中に、前線大隊長のセルジオがいる。


そこに、【イヴィノ・ヴェリタス】のアンドレとガスコ、【ルクス・テネ】のモロとジーナ、【ピエタス・ディクシタス】のオーシンの5人が尋ねに行った。

セルジオ「この状況、冒険者達はどうみますか?」

冒険者達5人は顔を見合わせ、モロがみんなに見られ説明しだした。

「敵か味方か、人間か魔族かはわからないが、とにかく全滅してますね。この先は「翼の丘」。そこもこんな状態だとすれば、アルダ砦も魔獣がいるのかどうかさえわからないな。」

セルジオ「うむ。今、【ス・イジェネリス】のS級パーティに先行して様子を見に行ってもらってはいるが…。」

モロ「先に進むべきか。それともここで待って後ろとここで合流するまで待機、か。」

セルジオ「ここまで簡単に来てしまった。拍子抜けだ。魔族は腑抜けたのか?」

モロ「いやぁ…」

というと、アンドレが

「気になる事がある。ワーウルフは本来単体としてはそこまで強くはない。これだけのワーウルフとなると当然仲間を呼んだものだと思われる。と、いう事はこれから先は何かあるって思った方が良いのではないか?」

セルジオ「我々もそう感じている。先行している【ス・イジェネリス】ももしかしたら何か危険があるかもしれない。」

ガスコ「罠があるとみている?」

セルジオ「いかにも。」

そう話しているとジーナが

「いや、罠はないわ。」

そう言うと、皆がジーナを見た。

モロ「どういう事?」

ジーナ「罠はない。でもそれが罠。そんなとこかしら。」

セルジオ「どういう事ですかな?ジーナ殿?」

ジーナ「それは私ではなく、こちらにいらっしゃる救世主様にお聞きすれば良いと思いまーす。」

そう言ってオーシンに振った。

オーシンはジーナにだけわかるように、嫌な顔をして、またいつもの救世主の顔に戻した上で

オーシン「そうですね。森の中から歩いてきて、明らかに以前より弱い魔獣しかいませんでした。森を抜けたらゴブリン達、そしてここにはワーウルフ。

しかし、ここにワーウルフが100匹いるというのもおかしいもので。」

アンドレ「どういう事ですか?」

オーシン「ここのワーウルフ達は呼ばれてきたのではなく、最初から居たように感じます。理由は…。」

そう言うと、ジーナが割り込んだ。

「かたまり過ぎなのよ、ワーウルフ達が。まるで最初からここで待ち伏せしているかみたいな感じだね。」

セルジオ「ますますわかりませぬ。」

オーシン「つまり、もしも私達が大人数で進軍していれば、当然ここらのワーウルフ達を殲滅させる事は容易いでしょう。それは森の中から続いております。我々はきっと一気呵成に進むものと感じます。」

モロ「まぁ軍も俺達冒険者達もそのつもりの今日だからな。」

オーシン「おそらくこの先の「翼の丘」にいるのもそれなりで、おそらく容易い。アルダ砦自体、簡単に奪還できるのではないかと思うのです。

アンドレ「確かに。全滅していたが、たとえ魔獣達とやりあってもそう時間はかからないでこれただろうな。あの魔獣の死体達を見れば。」

ガスコ「イケイケになると?」

オーシン「はい。そしてそのまま私達は苦労する事なくアルダを取り戻せるでしょう。」

モロ「良いじゃないか、それならそれで。」

ジーナ「アンタばか?そしてそれが罠だって言うのよ。」

セルジオ「…、一理ありますね。」

オーシン「はい。おそらく今頃【ス・イジェネリス】の皆様も「翼の丘」で戸惑っているのではないでしょうか。」

アンドレ「死体だらけ?」

オーシン「おそらく。しかし今の【ス・イジェネリス】の皆様に冷静な判断が出来れば良いの…ですが。」

アンドレ「ジールのおっさんは?」

オーシン「そうですね。ジール様が唯一、でしょうか、ね。」

ガスコ「レイカ様は?」

ジーナ「ア…レイカさんとやらはフルツから様子がおかしかった様だから。」

ガスコ「あの冷静沈着のレイカ様が?」

モロ「ああ、ガスコはクラヤス出身だっけ?」

ガスコ「ああ。同門だ。」

モロ「理由はわからんが、アルダに行きたがってたぞ。そわそわしてた。」

ガスコ「そわそわ?想像つかないな。」

ガスコは少し困惑していた。

ジーナは俯いて笑いを堪えていたし、オーシンは後ろを向いて咳払いで誤魔化していた。

セルジオ「それで?」

オーシンは気を取り直し

「罠があるのはアルダ砦。そう考えると腑に落ちます。私達人類はおびき寄せられています。」

セルジオ「言われてみればそうですな。」

オーシン「ただ…。」

セルジオ「まだ、あるのですか?」

ジーナが割り込む。

「そもそも、その魔獣が全滅してるって事。」

アンドレ「つまり、魔獣側の思惑っていうのがあって、アルダまで俺達はおびき寄せられていた。そして、アルダ砦に罠があって、俺達をその罠に引き込もうとしていた。だけど」

ガスコ「その罠の為の魔獣はすでに全滅している…?」

ジーナ「正解。」

セルジオ「全滅も罠ではないのか?」

オーシン「魔獣の配置は人為的。つまり魔族の誰かが作戦としてそうしています。なので、わざわざ殺す必要はありません。だったら最初から居なければ良い。ですが、最初から魔獣がいなければ、私達は何かあると思って慎重になる。」

アンドレ「そうだったらアルダには行かない、な。」

オーシン「仰る通りです。」

セルジオ「それでは、誰かがその魔族の作戦を知っていて、魔獣達を殺したというのか?何処の国だ?軍隊だ?」

オーシン「さて…そこまでは…。」


オーシン(カイトがやらかしたなんて口が裂けても言えないだろう。もうこんな話ばかりしてるといつバレないか冷や冷やもんだよ。トモがいるから余計にキツイ。おい、なんでたかちゃん早く来ないんだよ。何道草喰ってんだよ。)


セルジオ「それではどうしたら?」

オーシンが何か考え事をしているのを見て、ジーナが

「まずは申し訳ないけど、【イヴィノ・ヴェリタス】と軍の方に残ってもらって、ここら辺の死体処理と、後方を待ちまとめて進軍。そして私達【ルクス・テネ】と【ピエタス・ディクシタス】のメンバーで先行し、「翼の丘」で【ス・イジェネリス】と合流して待機。たぶんもうすぐ【ノウスオルド】も来るから先にこちらに来させて欲しい。

セルジオ隊長が来るまでは丘で待機。どうかしら?」

セルジオ「承知致した。なるべく私が行くまでは待機で願います。」

ジーナ「まぁ、こちらには何といっても救世主様がいらっしゃるので大丈夫かと。ねぇ。オーシン様?」

オーシン「は、はい。何とか取りまとめさせていただきます。他の方の異論がなければ。」

ジーナ「モロ、異論はないよね?」

モロ「ああ、いや、ないよ。」

オーシン「【イヴィノ・ヴェリタス】の皆様は?」

アンドレ「オーシン様が言うんじゃ何もない。こっちは任されよう。」

オーシン「恐れ入ります。」

オーシン「セルジオ様は?」

セルジオ「うむ。一切承知致した。」

オーシン「それでは私達は急ぎましょう。【ス・イジェネリス】が何かする前に。」


そう言って各自動き出した。

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