いつもの夜辺
22時を歩いていると
ふと、煙草の匂いがした
しばらく誰ともすれ違っていないのに
匂いは道の真ん中に強く残っていて
何処にでも人の営みはあるのだと感じた
22時を眺めていると
赤く点滅する光が、星を縫って移動していた
僕が時速4kmで歩んでいるとき
数百人は時速900kmで進んでいて
些細な距離でこんなにも違うのだと思った
22時に耳を澄ますと
今日は、僕の足音だけだった
普段はカレンダーや機械に隠れて気付かないけれど
こうして聞くと僕だけの生も本当は規則的で
これからも囚われてばかりなのかなと考えた
22時の暗がり 22時の明るさ
曖昧にしておきたいものがまた一つ出来たのに
単純な頭はこの時間に留まれなさそうだった
22時の平穏 22時の動騒
実際と心とでは景色が随分異なっていて
単純な頭はこの時間にひどい風邪をひいてしまった