表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

お菓子の国の転生者は愛を求める

作者: kayako

 

 私は誰にも愛されなかった

 愛されないまま死んで この世界に転生した


 甘い甘いキャンディの洞窟

 ほろ苦いチョコレートのお城

 さくさくのビスケットの家

 そう、ここはお菓子の国

 そして私が手に入れたスキルはただ一つ



 誰にでも無条件で愛されること



 私は愛された

 王様に 王妃様に 僧侶に貴族に奴隷に魔女っ子

 それだけじゃない

 国を襲う魔物 さらに魔王にまで 私はひたすら愛された



 私を愛し 守ることで 世界から争いは消え

 そして世界は平和になった

 ここは甘い甘いお菓子の国



 でも私の心はいつまでも空洞だった

 私が愛されているのはスキルのおかげ

 みんなが見ているのは私のスキル

「私」を見てはくれないの



 私はみんなを拒絶した

 チョコレートを煮溶かし

 ビスケットを叩き割り

 キャンディを打ち砕いた



 私のスキルのおかげで抵抗出来ない奴ら相手に

 私はひたすら暴れ続けた



 こんなものは全てまやかしだ

 月も太陽も星も 天体は全てチョコレートの宝珠

 花も森も家も宮殿も 目に映るものは全てキャンディの彫刻

 人も魔物も 喋るものは全てキャラメル

 私に愛をくれないのなら

 全部全部溶けて砕けろ



 そんな私を止めたのは

 一人の勇者

 飴色の髪に甘い声で

 貴方を愛していると囁いて



 その剣は

 私の胸を真っすぐに貫いた



 黒く焼け爛れたお城はガトーショコラ

 壊れた窓から覗くものは 幾つもの潰れたラズベリー

 白い粉砂糖が一面に降り積もった上に

 折り重なるのは真っ赤なイチゴ

 それは血染めの私と勇者



 飴色の髪はキュラソーのように甘酸っぱく

 胸から滴る赤いものはブランデーの香り

 頬をつたう涙がボンボンとなって弾けた時

 薄れる意識の中で私はやっと 本物の愛を知った




 Fin


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いやぁ、いいね! 上手く言葉にできないけど(おい [一言] 勇者君はスキルが通じなくて、本当の意味で彼女を愛していたのではと思いました。 なんとなくですけど( ̄▽ ̄;)
[一言] 今度こそ(/_;) 本物の愛を育める世界に転生して欲しい と願いました(/_;)
[良い点] 素敵でした。 世界観と表現に心を揺さぶられました。 [一言] 誰かに歌ってもらいたいなと思いました。 この作品が歌詞になったらどんな曲調が合うかなと考えたらわくわくしてきました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ