夢幻かくれんぼ~夏のホラー2021応援作品~
夏のホラー2021投稿作品です。
主に書き手でもあるみなさんへ向けた内容になっています。
なるべく早くこの恐怖を体験した方がいいかもしれません。
しない方がいいかもしれません。
正解は、あなた次第。
この恐怖に打ち克ち、より良い作品が生まれますよう──
心よりお祈り申し上げます。
もーいいかい?
まーだだよ
もーいいかい?
もーいいよ
7月8日から夏のホラー2021、その応募が始まる。
投稿の最終段階の人も、これから投稿作品を書き始める人も。
もーいいかい?
まーだだよ
もーいいかい?
鬼の声が迫る。
よくやった、これで充分だ。時間も迫っている、もう投稿してしまおう。
よくやった、充分頑張った。時間も迫っている、もう諦めて楽になろう。
そんなもーいいかい? が迫る。
乗り越え投稿すると、かくれんぼの鬼が動き出す。
怖い、今は検索で簡単に見つけられてしまう。
一度見つけられてしまえば、もう隠れてはいられない。
明日からならきっと本気出せるのに、状況がそれを許さない。
怖い、最後まで見つけて貰えず、鬼が帰ってしまうかもしれない。
ただ独り、いつまでもその場にポツンと残されてしまうかもしれない。
みんなが素通りしていくのを、ただただ陰から眺めることになるかもしれない。
え、まだ見つけられてないよ? みんななんで帰っちゃうの?
ねえちょっと待ってよ!
本当に、このまま投稿していまっていいのか?
まーだだよ
もーいいよ
どっちが正解だ? 見直しは充分か? 誤字脱字は?
この作品の魅力は引き出せているか?
もーいいかい?
今考えてるんだって。少しは待てよ、待ってくれ。まーだだよ
もーいいかい?
はええよ! こっち来るなって、今考えてるから。まーだだよ!
もーいいかい?
落ち着け。現代に生きる上での必須技能、スルー力が試されている。
作品に集中集中……
もーいいかい?
聞こえない、聞こえていない。
一度作品に集中してしまえば余分な情報は入らない。
もーいいかい?
私の世界だ。これが固有結界。
そう、小説家は魔法使いだったのだよ! な、なんだってー!
こういう一人ボケツッコミも朝飯前さ。……冷静に見てくれるな。
もーいいかい?
あと少し、いやここはこうした方が……
プレビューで確認して……ここは変えた方がいいな。修正修正。
・・・・・・。
……? いやいや、そんなまさか、な。
すぐ後ろにナニカいる気がするなんて少し疲れ……
「もういいかい?」
「うわあああああああああ!!」
はぁ、はぁ……
辺りを見回す。自分の部屋、いつもの朝だ。
「ふぅ、夢か。驚かせないでくれ。ハハ、少し根を詰め過ぎたかな?」
近頃は応募期間をこまめに確認していたのもあるだろう。
書き続ける限り、むげんに続くかくれんぼ。
ナーバスになる時だってある。さあ、気持ちを切り替えよう。
朝の珈琲を入れつつ、いつもの香りで肺と頭を満たしながら日付を確認する。
大丈夫、今日はまだ──
「……あ、れ?」
気のせい、だよな?
「ふぅ……」
落ち着け。目も疲れているようだ、幻覚が見えるなんて。
そうさ、今日がもう夏のホラー2021の応募締め切り──
8月26日だなんて。
いやいや、そんなまさか、な。
「もういいかい?」
耳元で囁くあの声が、永く、頭から離れなかった……