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7人の軍将 -前章譚-  作者: mocha
 5.切り札
73/84

1560年 6月12日 15:05 尾張国/桶狭間山周辺  2

  1560年 6月12日 15:05 尾張国/桶狭間山周辺

   織田方 3200人 織田信長・川尻秀隆・佐々成政・金森長近・木下藤吉郎・林秀貞・池田恒興・森可成(よしなり)菅笠(すげがさ)を被った男・柴田勝家

   今川方 今川本隊

        義元本陣 2000人 総大将・今川義元/先陣長・葛山氏元(かつらやまうじもと)/次陣長・関口氏広/後陣長・岡部正綱/右陣長・三浦義就(よしなり)/左陣長・朝比奈元長

         中備え 1000人 主将・由比(ゆい)正信/副将・荻清誉(おぎきよたか)/先鋒隊長・勝間田政行/次鋒隊長・佐竹高貞/後方隊長・沢田忠頼

         後備え 1000人 主将・富士信忠/副将・興津(おきつ)清房/先鋒隊長・井上継隆/次鋒隊長・大村家重(いえしげ)/後方隊長・飯尾乗連(いのお のりつら)

   松平方 100人 松平元康・酒井忠次・本多忠勝



   桶狭間北

   織田信長


 動き出してからの(柴田)勝家は早かった。瞬く間に太子山を駆け下りると、桶狭間道で火縄銃を打ち、打ち尽くしたと見るや火縄銃を投げ捨て、桶狭間丘陵の斜面を駆け上がる。今川方に息吐く間も与えなかった。儂の予想図通りの動きじゃ。

 斥候(せっこう)が次々に儂の元に駆け込む。

「柴田勝家隊、(信長)本隊に横から迫っていた今川方を排除!」

「柴田勝家隊、(信長)本隊の背後に迫っていた今川方と交戦中。混戦のため、仔細は判りませぬ。したが、(信長)本隊への進撃が止まった模様」

 どれも(柴田)勝家隊の活躍を伝える吉報だ。

(流石は[柴田]勝家。しかし、[義元]本陣を見失かったか)

 桶狭間の丘陵の上から(柴田)勝家隊を見ていた儂は賞賛と苦言を呈した。

(奴[柴田勝家]は猪突猛進じゃ。上手く機能している時はよいが、目の前の敵に気を取られ、本来の目的を失っておる。ま、今回は儂も人の事を言えた義理ではないが・・・)

 そして、我が本隊が済んでのところで包囲されていたやも知れない事実に戦慄した。

(危なかったわ)

 義元本陣と松平勢(松平元康隊)に拘るあまり、周りが見えていなくなっていたのは否めまい。(柴田)勝家の活躍で、我が本隊の背後に迫っていた大将ケ根守備隊は、主将・松井宗信が討たれた事によって東方へ散り散りになって逃散した。そして、我が隊の西に迫っていた今川本隊中備えも(柴田)勝家に捕捉されて横撃を受けておる。旗指物(はたさしもの)の位置からして、運よく主将隊を急襲したようじゃ。これで暫くは此方(こちら)には来れまい。今川本隊中備えも、まさか他に織田方がいるとは考えてなかったのだろう。碌に斥候(せっこう)を出していなかった事が幸いした。横撃を食らったのが何よりの証左じゃ。油断していたのだろう。策多き方が勝つとは良く言ったものじゃ。兵法も捨てたものではない。稲生(いのう)の戦いの時、命を救うてやった甲斐があるというもの。

「拾うてやった命じゃ。精々奮闘する事だ」

 儂は得意気に呟いた。

(さて)

 儂は前を向く。

(もうすぐ松平勢が崩れる。松平の小僧(松平元康)が吶喊(とっかん)して来るであろう)

「(池田)恒興、槍衾(やりぶすま)を用意せよ」

「しかし、長槍は・・・」

 (池田)恒興が再び言い募ろうとするのを手で制す。

「其方の目は節穴か。地面を見よ」

 儂は地面を指差す。

「は・・・ああ、今川の置き土産ですな」

 (池田)恒興が納得した様に地面を見遣る。(義元)本陣が撤退する際、多くの旗指物(はたさしもの)や資材の他に、逃げるのに邪魔な大量の長槍を数多く打ち捨てていったのだ。この様な木立が生い茂る場所で長槍が使えたとは思えぬが、此方(こちら)にしてみれば格好の武具であった。

「要は、松平の小僧(松平元康)の突進を止めればいいのよ」

 儂は(池田)恒興、(木下)藤吉郎、(森)可成(よしなり)を呼び寄せる。そして、松平の指揮官の止め方を伝授する。(森)可成(よしなり)がニヤリと笑う。

「それは面白れぇ」

 彼奴(きゃつ)(森可成(よしなり))もこれまで松平兵に手を焼いていた一人だ。儂のために精々奮戦する事だな。

「松平ばかりにいいとこ取られていたからよ。これで一泡吹かせられる」

 (森)可成(よしなり)は得物である十文字槍を振るった。

「俺様のところにゃ、槍衾(やりぶすま)なんかいらねえ。この槍一本で十分だ」

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