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7人の軍将 -前章譚-  作者: mocha
 5.切り札
68/84

1560年 6月12日 14:45 尾張国/桶狭間山周辺

  1560年 6月12日 14:45 尾張国/桶狭間山周辺

   織田方 織田信長・川尻秀隆・佐々成政・金森長近・木下藤吉郎・林秀貞・池田恒興・森可成(よしなり)菅笠(すげがさ)を被った男 

   今川方 今川本隊

        義元本陣 2000人 総大将・今川義元/軍師・庵原之政(あんばらゆきまさ)/先陣長・葛山氏元(かつらやまうじもと)/次陣長・関口氏広/後陣長・岡部正綱/右陣長・三浦義就(よしなり)/左陣長・朝比奈元長

         中備え 1000人 主将・由比(ゆい)正信/副将・荻清誉(おぎきよたか)/先鋒隊長・勝間田政行/次鋒隊長・佐竹高貞/後方隊長・沢田忠頼

         後備え 1000人 主将・富士信忠/副将・興津(おきつ)清房/先鋒隊長・井上継隆/次鋒隊長・大村家重(いえしげ)/後方隊長・飯尾乗連(いのお のりつら)

       大将ケ根守備隊 1000人 主将・松井宗信/副将・蒲原氏徳(かんばらうじのり)/先鋒隊長・安倍元真/次鋒隊長・福島(くしま)助昌/後方隊長・一宮元実 

   松平方 100人 松平元康・酒井忠次・本多忠勝 



   桶狭間山北

   織田信長


 松平(元康)隊の最東端が儂の放った援軍により崩れ掛けているのが判った。

(後一息じゃ)

 最東端が崩れれば、そのまま桶狭間道に向かっている義元に肉薄出来る。再び天は我に味方しようとしている。しかし・・・

 目の前で、松平隊の3人の1人が突出して来た。何か叫んでいる。武者達の喧騒で聞こえぬ。見覚えのある面構えだ。だが、兜と面頬(めんぼお)で顔が見えぬ。

「少し、松平(元康)隊の隊形が乱れて来ましたな」

 傍らの(池田)恒興が呟く。

「うむ」

 最東端の1人がじわじわと後退し、残りの2人が前方に突出した。最東端の1人を支援する積もりであろうが、全体から見れば明らかに陣形を崩していた。突出して来た2人も、初めの頃のような切れがなくなってきている。

(今ならば・・・)

 儂がそう思った刹那、

「(織田)信長様っ!」

 斥候(せっこう)の一人が咳き切って傍らに侍る。

「釜ヶ谷にいた大将ケ根守備隊が転回しております。我らの動きを察知されたようです」

「何!?」

 儂は呻く。

 続けざまに使い番が駆け込んで来る。

「申し上げます!桶狭間山の西、生山(はえやま)に退却していた今川本隊の中備えと思われる部隊が転回して我が隊に近づいております」

「!」

 儂は暫し思考の海に墜ちる。

(このままでは挟撃どころか半包囲されてしまう。義元本陣に察知されれば、半包囲どころか・・・)

(いや、此処(ここ)で撤退すれば逃げ切る事は出来るかも知れぬ。しかし、二度と(今川)義元に肉薄する事は出来ぬであろう。そして・・・儂は清洲城に逼塞し、(今川)義元は二度と最前線には出ず、美濃の斎藤と連動して二面攻撃で尾張国を脅かす事になるだろう)

 無論、其処まで今川と斎藤が連携出来るかという疑問はあるが、桶狭間地域を完全に奪われれば、知多半島の水野(信元)も最早旗幟(きし)を鮮明にせねばならず、尾張国東部は今川の手に落ちる。そうなれば尾張国内の不穏分子が立ち上がり、清洲城は完全に孤立するだろう。儂が尾張国の過半を手に入れたのは1559年3月だ。まだ、1年しか経っておらぬ。尾張国内にはまだ、屈服したものの燻ぶっている者達もおる。家臣との仲も決して良いとは言えぬ。その中の一人でも裏切れば、連鎖的に尾張国に波及するであろう。

(詰んだな)

 儂は冷静に判断する。一方で、

(今を逃せば、別動隊[柴田勝家隊]も役に立たぬやも知れぬ)

(しかし、今出しては、各個撃破は出来るかもしれぬが、肝心の[今川]義元を逃してしまうのでは?)

(いやいや・・・我が[信長]本隊あっての織田軍。勝家を出せば、他に兵はないのだ。[信長]本隊でなければ[義元]本陣は衝けぬ)

 儂は漸く決断し、刀を高々と天に向かって突き上げる。

狼煙(のろし)を三回上げよっ!」 

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