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7人の軍将 -前章譚-  作者: mocha
 1.決戦前夜
14/84

1560年 6月12日  3:00 尾張国/中嶋砦

  1560年 6月12日 3:00 尾張国/中嶋砦

   織田方 梶川高秀・梶川一秀 100人・千秋季忠(せんしゅうすえただ) 150人・佐々政次 150人



「|千秋(季忠)《せんしゅう(すえただ)》殿と佐々(政次)殿が?」

 先触れが中嶋砦に入った時、梶川高秀・梶川一秀兄弟は顔を見合わせる。

「千秋殿は確か・・・」

 弟である梶川一秀が思い起こすようにこめかみに手を当てる。千秋季忠(せんしゅうすえただ)大高(おおだか)城の北に当たる氷上砦(ひかみとりで)を守っていたはずだと。そして、佐々政次は大高(おおだか)城の東に当たる正光寺(しょうこうじ)砦に居たはずだと。

(敵前逃亡?)

 その四文字が二人の心をよぎった。二人は無言で視線を交わす。

「通せ」

 兄である梶川高秀が使い番に命ず。使い番は先触れと共ににその場を去る。

「宜しいので?」

 梶川一秀が兄に詰め寄る。

「宜しいも何も・・・おれらに裁量する権限はなかろう」

 暫くすると、氷上砦(ひかみとりで)千秋季忠(せんしゅうすえただ)正光寺(しょうこうじ)砦・佐々政次が揃って中嶋砦に到着し、梶川高秀・梶川一秀兄弟は困惑の顔で出迎える羽目になった。二人の眼は砦を放棄して撤退して来た事を非難している事が明らかであった。だが、疲労の色を見せる千秋季忠(せんしゅうすえただ)・佐々政次も負けていない。

「・・・水野信元殿、謀反」

 千秋季忠(せんしゅうすえただ)が一言告げると、梶川高秀・梶川一秀兄弟の顔色が変わった。

「主家(水野家)が?」

 佐々政次が無言で頷く。殺気が感じられ、逆に梶川兄弟は弁明する羽目になる。梶川高秀・梶川一秀兄弟は水野家の家臣である。元々桶狭間一帯は水野家の領地である。しかし、織田信長が桶狭間に勢力を拡張せんと目論む今川方を牽制するため、鳴海城・大高(おおだか)城を砦で包囲する際、接収する形で中嶋砦を織田のものとした経緯がある。梶川高秀・梶川一秀兄弟もその流れに巻き込まれるようにして織田方に組み込まれた。水野家の家臣でありながら、梶川高秀・梶川一秀兄弟は主家(水野家)の動向を知らされていなかった。

「しゅ、主家の動向については全く知らされておりませぬ。それは|千秋(季忠)《せんしゅう(すえただ)》殿、佐々(政次)殿とてご存じでしょう?」

 既に織田方に梶川高秀・梶川一秀兄弟が組している事は、中嶋砦経由で砦に入った二人も理解していた。

「もし、我々が主家に組していれば、両名を砦内に迎い入れる事はござらぬ。今のおれらは(織田)信長様の命に従っております」

(成り行きであるがな)

 弟・梶川一秀が兄・梶川高秀の言を補足するように続ける。皮肉も忘れない。

 千秋季忠(せんしゅうすえただ)と佐々政次は顔を見合わせる。

(確か梶川兄弟は水野信元の家臣だったはず)

(此度の戦に際して、[織田]信長様が強引に中嶋砦毎接収したのだ。そもそもこの桶狭間地方一帯は水野家の領地。・・・何も、水野(信元)殿だけに非がある訳ではないようだ)

(ふむ・・・戦時とは言え、領地を差し出す形になった水野[信元]様にも分があるか)

 千秋季忠(せんしゅうすえただ)と佐々政次はぼそぼそと言葉を交わす。単純に水野信元が織田家との同盟を一方的に破棄した訳ではない事に二人は気づいた。

「では、中嶋砦に我が兵(千秋季忠(せんしゅうすえただ)・佐々政次隊)を迎え入れてもよいと?」

「いや、その(くだん)に関しては我らの一存では判断出来ぬ。両名(千秋季忠(せんしゅうすえただ)・佐々政次)は善照寺砦に向かわれたい」

「善照寺砦?」

 佐々政次は反芻する。

「如何にも」

 梶川高秀は頷く。

「善照寺砦は確か・・・」

 千秋季忠(せんしゅうすえただ)が思い起こすように呟く。善照寺砦の守将は佐久間信盛だったはずと。どうして善照寺砦に向かわなければならないのかと首を傾げる。

「拙者らは丸根砦・鷲津砦で共闘を申し出たが、素気無く断られた。中嶋砦も断ると申すか?」

 佐々政次が凄む。弟の梶川一秀がたじろぐ。二人の間に兄が割って入る。

「とにかく、善照寺砦に向かわれたい」

 梶川高秀は千秋季忠(せんしゅうすえただ)の想念を分断するように言葉を被せる。

「済まぬが、此方(こちら)にも立場と言うものがあるのじゃ。善照寺砦に行けば、判る」

 梶川高秀は懇願するように頭を下げる。

 千秋季忠(せんしゅうすえただ)・佐々政次は其処までされては従うざるを得なかった。

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