はふはふ☆ブレードフィッシュ
目の前には、ブラウンさんと大きな大きな刀みたいな魚がいる。
「お魚きたーーーー!!」
「いやいや、ブレードフィッシュな。この巨大なブレードフィッシュが1匹いるだけで、大きな船が一瞬で真っ二つになると言われている危険な生物なんだ」
「ブレード……刀……サンマなの? 太刀魚なの? どっちなのー?!」
「いやいや、だからブレードフィッシュだって」
「大事な事なんです! 脂がどれくらいのっているか……」
「大事なのか……」
「はい、もちろんです! それによって料理が変わってきます! いや、でも……サンマも太刀魚も脂乗ってるはずだから大丈夫かな」
「ははは、相変わらず料理大好きだな」
「えへへ、もちろんです! 新しい食材は楽しくて仕方ないです! そしてお料理したくてうずうずします」
まぁ、どちらにしても脂は乗っているだろうし楽しみだなぁ。
「しかし、また巨大ですねぇ……どうやって解体しましょうね」
「また俺が解体して持って行くよ。料理を頼んで良いか?」
「はい、じゃぁ解体お願いします。お料理がんばります!」
今日はサンマか太刀魚どっちにしても、脂が乗っているはずだ。大根おろしを添えた塩焼きは絶対ですね!
後は何を作ろうか。煮魚、天ぷら、梅とシソを巻いたフライ、後は何がいいかなぁ。あっ、唐揚げにしよう。つみれにしてお吸い物にもしようかな。
お土産は何がいいかな。唐揚げ、天ぷら、フライの全種類盛りにしよう。後はご飯が合うから、おにぎりにしようかな。後は、つみれを焼いてサンガ焼きみたいにしたら良いかな。
まずはどこから始めようかなぁ。大根おろしからやろうかな。大根おろし作るの大変だけど、2人分だったらすぐだもんね。ショリショリと大根おろしを下ろしながら、次の作業を考える。
後は生姜の千切り、みじん切り、摺り下ろしが必要かな。それと梅を叩いておこう。
「優里、これで足りるか?」
振り返ると、相変わらず大きな塊を持ってくるブラウンさん。本当にどれだけ食べる気なんですかね。でも、私も食いしん坊だから仕方ない。
「ありがとうございます、十分足りると思います。ゆっくりしていてくださいね」
「あぁ、ありがとう。とりあえず解体を終わらせてしまうよ」
ブラウンさんは庭に戻って行った。私は作業を再開させる。
まずは唐揚げにする分を味付けしちゃおう。ジップの袋に醤油、酒、みりん、摺り下ろした生姜を入れて漬け込んでおく。
(ふふふ、美味しそう!)
次はフライの下準備だ。お魚を薄く切って、シソと梅を乗せてくるりっと巻いて爪楊枝で刺す。お土産にも入れるので多めに作る。
次はつみれとつくね両方作るから多めにお魚を使おう。フードプロセッサーにお魚と味噌、ネギ、みじん切りの生姜、ゴマ、酒、片栗粉を入れてスイッチオン!
骨があってもこれで大丈夫なので、本当に便利だよね。三分の一はつみれ汁にして、残りは焼いてつくねにしよう。
(本当はこれ揚げても美味しいんだけど、揚げ物いっぱいあるから今回はやめておこうかな)
後は仕上げをしていくだけかな。じゅわっと次から次へと揚げていく。ビール欲しい、揚げたて食べたい! うずうずするよぅ!
揚げている間におにぎりも作る。お土産も詰めて、準備は出来たかな。美味しく食べて貰えるといいな。
今日もやっぱりビールと日本酒だよね! フライにビールとか素敵すぎる!
「ブラウンさん、お待たせしましたー!」
「ははっ、優里ありがとう。今日もとっても美味しそうだ!」
ビールを注いで、ブラウンさんに手渡す。自分用も準備していっただっきまーすっ!
とりあえずビールを飲んでから、ぷはっ! としたら天ぷらを食べる。
「う~……おいしいっ! このさくっとした衣にふわっとした身が……ビールと合うっ!」
「このサクッとしたのが旨いなぁ。中の魚の香りと味が閉じ込められてて旨いっ! そしてビールが旨い!」
「あはは、本当ですよね!」
フライも食べてみると、ザクッとした衣とシソと梅の味が広がって、とても食が進む。
「うまっ!! しかもこの香りと酸っぱい味がさっぱりとさせてくれるな」
「ふふふ、今日も美味しい食材をありがとうございます!」
「ははっ、倒した甲斐があったな。こんなに旨い料理が食べられて幸せだ」
唐揚げも食べながら話をする。
「んっ! この唐揚げおいしいっ!! 日本酒もどうぞ!」
「ありがとう。この唐揚げは、前に食べたのと全然感じが違うがこれもまた旨い」
ビールとも合うけれど、日本酒で食べても美味しい。いくらでも食べられちゃいそうだ。次は塩焼きも食べよう。
「ん~! 大根下ろしでさっぱりと塩焼きも美味しい! 日本酒と合いますよ~!」
「本当だ。これは日本酒と合うな!」
「そういえば、今日片づけをしていたら祖母の手紙が見つかったんです。ここの場所と人との波長が合うと異世界から落っこちてくる人がいるみたいなんです」
「そうなのか?!」
「私がいる時でもアレクおじさんが来た事から、私がここに居る時に誰かが飛ばされてくるかもしれないって手紙に書いてあったんです。でも、一緒に飛ばされてきた魔物を食べれば、魔力が回復して戻れるんだそうです」
「ほう……そういう原理だったのか。優里の飯を食べると、力が湧いてくると思ったらそういう事だったのか」
「そうみたいですね。でもちゃんと毎回帰れるみたいだから安心しました。それと倒した時に誰かを触っていると、一緒に来られるかもしれないって言ってました。確かに小さい頃、アレクおじさんの他にも誰かいる時があったんですよね」
話をしながらも、次の料理をブラウンさんに渡す。次はご飯とつみれ汁だ。
「なるほど。俺のパーティーメンバーを触っていれば来られるかもしれないって事か。ん、これもうまいっ!」
「ん~、お出汁が良く出てて美味しいですね」
「あぁ、この団子も旨いなぁ」
「これはお魚で作ってるんですよ。これを焼いたのがこちらです。甘辛いタレが掛かっているつくねです」
「同じ物に思えないくらい、味が違うけれど……うん、どっちも旨い!」
ん~、つくねと日本酒おいしいなぁ。お酒がついつい進んじゃうね。
「そういえば、今日食べたフライとか天ぷらってアレクシス国王様の著書に書いてあったんだよなぁ」
「えぇっ!? そうなんですか?」
えっ、アレクおじさん国王様なのに……昨日も聞いたけど、一体どんな本を!
「あぁ、それによく美味しそうな食べ物が出てきていて……食べてみたかったんだよなぁ」
「あはは、そうなんですね。それはまた……すごく美味しそうに書いてたんでしょうね」
「そうなんだよ!! すっごく美味しそうなのに誰もその料理を知らないんだ!」
アレクおじさん、それは酷い……美味しそうに言っておきながら食べられないだなんて、ひどすぎる。
「でもここ数日、ここに飛ばされて美味しい物を沢山食べさせて貰って楽しかったんだ。それにアレクシス国王様と同じ物が食べられて凄く嬉しい」
「ふふ、良かったです。お土産にも入っていますから、お仲間さんと一緒に食べて下さいね」
「あぁ、いつも本当にありがとう」
食べて、飲んで、お話をして……とても楽しい時間を過ごしたなぁ。そろそろお腹もいっぱいだ。
「今日も本当に美味しかった。優里、いつもありがとう」
「ふふ、こちらこそ食材をありがとうございます」
「はははっ、優里は何を見ても食材だな」
「ふふふ、新しい食材はステキなのですよ。これ、お土産です。食べて下さいね~」
「あぁ、ありがとう。またな」
「はい、また!」
そういうと、ブラウンさんが光り、光が収まると消えていた。
この光景を見るのもとりあえず明日までだね。明日が終わったら、また日常に帰らないと……。
お片付けもある程度終わった。祖母が私がいてもアレクおじさんが転移してこられた事を考えて、私ならまた誰かと波長を合わせる事が出来るだろうと譲ってくれたのだ。
それと異世界の食材を食べている私は多分、向こうに転移も出来るだろうと書いてあった。行くならこちらの食材を持って行けば帰って来れるとあった。それは面白いね……でも、それはちょっとまだ怖い。
祖母の手紙を読んで、今まで不思議だった事や忘れていた事も思い出せた。ここに居る間本当に楽しかったのだ。新しい食材も、祖母が捌いたり、料理する所を見るのが大好きだった。祖母が年を取ってもここに居たがった理由がやっと分かった。
いくら母が呼んでも来ないと思ったら、楽しかったんだね。祖母に寂しい思いをさせているかと心苦しかったけれど、とても安心した。地球にはない未知の食材が楽しくて仕方なかったと書いてあった。私の祖母らしいね。私も新しい食材はワクワクするもんね。
明日もブラウンさん、来てくれるといいな。来るとしたらどんな食材なんだろうか……とても楽しみだ。
次の日……帰る準備とお片付けをしていると。
ドォーン!!
(きたー!! 今日の食材はなんだろう?)
庭に出てみると、そこには巨大なヤギ??? とブラウンさんがいた。
「お肉きたーーーー!!」
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明日で最終話になります
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