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越境篇(下)

越境篇最終話

 白く高いツルツルの壁に、小さな石の扉がある。

 カイは手紙を取り出して、そこに記された指示通りに扉を打つ。手紙で壁を叩くと、微かにピシピシ紙の音がする。

 扉はやがて淡い水色に光り出し、静かに外側へと開く。


 4人は広く扉の前を避けて、少し離れた場所から、入り口の中を覗き込む。人の気配は無い。10歩くらい先に、同じような扉が見える。それ以外には、何も無さそうだ。


 おそるおそる中に入ると、背後の扉が閉まった。扉が放つ水色の光で、中は僅かに明るい。もう1つの扉も、手紙でパシパシ叩いてみる。今度は柔らかな乳白色の光に包まれ、滑らかに横へとスライドした。引き戸の向こうは、活気ある往来だ。



 手紙は何か合図を出すわけではないが、持っているだけで正しい方向へと足が向く。白い壁を通り抜けた4人は、手紙の導くままに可愛らしい木の家に着く。


 花の彫られた扉には、円い木の輪でできたノッカーがある。先頭のカイがノックすると、手紙の(ぬし)が顔を出す。会った事は無いのだが、手紙に漂う魔法の気配が出迎えた人と同じなので、直ぐに解る。


 出迎えた人は、紳士然とした佇まいである。可愛らしい家に似合わぬ隙の無い服装だ。にこやかでありながら、何処か油断ならない顔付き。優雅な身のこなしだが、無駄のなさが不安を誘う。

 この人は人間なのだろうか。4人はパッと目線を交わす。


 黙って招き入れられた家の中は、外観よりも広いようだ。長い廊下の両脇には、植物模様が彫られた木の扉が並んでいる。

 廊下は剥き出しの木の板で、天井もまた、何の変哲もない木製だ。灯りはないが、ほんのり発光する壁も飾りひとつ無い板壁だ。


 4人が案内された小さな部屋に、何処からともなくお茶やお菓子が現れる。滑らかなビロード張りの椅子は、どれも1人掛けで緑色。深く優しい昼下がりの森の色。


 茶器は、シンプルな茶色。懐かしい土と木の色。茶器と揃いの陶器で出来たトレーには、カラフルな菓子が飾られている。カラフルではあるが、下品ではない。食欲をそそる鮮やかさである。

 ティーカップには、白磁のスプーンが添えられている。


 勧められたお茶に先ず口をつけたのはヴェルデ。にこりと、この旅では初めての笑みを溢す。ヴェルデが4人に送るこの無害の合図は、菓子でも同様に行われた。お陰で4人は和やかに一服することができた。


「お部屋は2階の二部屋、お夕食はお呼びします。丸猫探しは明日一日でお願いします」


 それだけ言うと、紳士は一礼して下がってしまう。


「丸猫って、結局何?猫なの?名前?渾名かな?」


 マウアが言う。手紙にも「丸猫を探して下さい」としか書かれていないのだ。4人が立ち話していた所へ突然現れた手紙に、導かれるままここまで来た。


 憑かれたように山を越え、ここまで来てはみたものの、今のところ疑問は解けない。お茶が済んだら、夕食まで部屋で待つより無さそうだ。


 とどのつまりは、いつもの通り。どうと言うことの無い、4人が住む『村』への依頼の日常である。

 4人の村に名前は無い。人界の果てにある寒村だ。

 辿り着いたここは、魔境の始まりの街。名を、キルデスと言う。

当初、『断片』として、ここで終わる予定でしたが、続きを執筆いたしました。

『キルデス篇』上中下『丸猫捕獲篇』上下、引き続きよろしくお願い致します。


ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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