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そらのそこのくにせかいのおわり(改変版)4.0 < chapter.10 >

 午後十時、スフィアシティの駅前通りに、ベイカーらを乗せた馬車が到着した。昼間と違い、今度は特務部隊のエンブレムが付いた戦闘用車両である。

 軍用ゴーレムホース六頭立ての大型車は、戦車と形容したほうが相応しいかもしれない。砲台、機銃、レーザー照射機、各種レーダー類他、大小様々な兵器が搭載された馬車を見て、道行く誰もが振り返っている。

 そんな人々の反応に、車中のロドニーは盛大にぼやいていた。

「あ~あ~。野次馬は楽しそうでいいよなぁ~。ったく~。どうせもう一度ココ来るなら、今度は整形してない子指名したかったのになぁ~」

 結局、昼間の嬢はアデリーナとは別人だった。それも残念なことに、顔面整形と豊胸手術で『見ようによっては美女に見えなくもない状態』にしてあるだけの、どこにでもいる普通の町娘だったのだ。

 アデリーナではないか、という疑惑が浮上したのは、嬢のプロフィールが原因だった。このイメクラ嬢とアデリーナは、同じ町で同じ年、同じ日に誕生していたのだ。イメクラ嬢本人から、客としてやってきた雑誌記者に生年月日と出身地を教えたとの証言も得た。

 噂の出どころも判明し、任務はほぼ終了。あとは本物のアデリーナの所在を確認すればミッションコンプリート――と、思っていたのだが。

「しかしまあ、よりにもよって、なんでこんな風俗街にカミサマが……」

 ロドニーのボヤキに、ベイカーが答える。

「この街が風俗店だらけになったのはここ数十年の話だ。青龍はそれ以前から、ずっとここにいたはずだぞ」

「そりゃ分かってますけど、なんつーか、ロケーションが……」

「まあ、あまり神々しさは感じないな……」

 雨に煙る風俗街。ショッキングピンクのネオンサインに照らされて、重武装戦闘車両で四神の一柱にアポなし家庭訪問を敢行しようというのだ。

 どこをクローズアップしてみても、神聖さとは程遠い絵面である。

 生温いテンションの二人に、グレナシンが声を掛ける。

「ちょっとアンタたちぃ~? シャキッとしてないと、お尻に気合注入するわよ~?」

 反射的に背筋を正し、二人はやや内股気味に答える。

「はいボク元気ですっ!」

「やる気満々ミナギリマァァァーックス!」

「ん! いいお返事! それじゃ、入口ぶち開けるから覚悟なさぁ~いっ!」

 ほんの一瞬で、車内に月桂樹の香りがたち込める。するとグレナシンの横顔にもう一人、神の横顔が重なって見えた。

 グレナシンとほぼ同じ顔立ちながら、肌の色や触角の有無など、種族的特徴が異なるその横顔。大和の国の月神、ツクヨミである。

 神と人とが何の懸隔もなく、一つの存在としてここにある。彼らは『完全覚醒とはこういうことだ』と、不完全なロドニーに見せつけるように力を使う。

「闇よ、万障を塗り込めよ!」

 たったこれだけの祝詞で、周囲に『闇』が沸き起こる。そして祝詞の通り、今まで見えていたすべての境界が消えた。

 どこまでが自分の体で、どこからが腰を下ろした馬車の座席か。

 吸って吐き出す空気すら、得体の知れない何かに変わる。

 玄武の心が作り出した黒い霧とは『濃さ』が違う。これは一切の光が存在しない、真正の闇である。けれども不思議なことに、この闇には邪悪さがない。やましさ、汚らわしさ、禍々しさを微塵も含まない、優しく包み込むような暖かい闇。それはまるで、胎児を抱いた『母胎』のようで――。

「……なんだこれ。なんか懐かしい……」

 そう呟いたロドニーに、ツクヨミが語り掛ける。

「それはそうだろうね。私は夜空の神であり、潮汐の神、そしてまた、月経や妊娠の神でもある。これは母胎の内側を再現した『命のゆりかご』だよ。人工子宮育ちのホムンクルスやクローン人間でない限り、誰でも一度は経験している場所だ」

「はあ……母胎の内側……?」

「胎児というものはね、まだこの世の者とも他の何かとも定義されない、あやふやな状態に置かれているんだ。私たち神はその『不確定な状態』を利用して、胎児を『器』に作り変えている。で、あるならば、逆もまた然り。何者とも定義されないあやふやな存在であれば、『神の世界』に触れることができる」

「てことは、今の俺たち、ママのお腹の中のベイビーなんですか?」

「うん。『神の眼』にそう映るように、IDを偽装した状態だね」

「カミサマ相手にID偽装……」

「言っただろう? 裏技なら腐るほどストックしているって」

「あの、それはともかく、この真っ暗いつまで続くんですか? なんも見えないんですけど……」

 耳をピコピコさせながら首を傾げるロドニーに、ベイカーは呆れた声で教える。

「なぜまだ五感に頼っているんだ? 『神の眼』のほうを使え」

「え? あ、そっか! そういえば俺、そういうのも使えるんでしたっけ!? えっと……?」

 力の使い方が分からないロドニーに、ツクヨミは真面目な声色で告げる。

「いいかいロドニー君。『神の器』として真の覚醒状態に至るために、まずはこの祝詞を唱えるんだ。私に続けて唱和して! 『ミラクルきゅるるんメタモルフォーゼ! 魔法少女☆イメクラPink! へ~んしんっ♡』ハイッ!」

「み、ミラクルきゅるるんメタモルフォーゼ! 魔法少女☆イメクラPink! へ~んしんっ!?」

「ヨシ! じゃあ、気合も入ったところで、力の使い方を教えようか! あとはヨロシクね、タケぽん!」

「ファッ!?」

 鮮やかに騙されたロドニーに何のフォローも入れぬまま、大和の軍神はニュートラルなテンションで事務的に説明を始めた。

「――……と、いう感じだ。どうだ? 使えるか?」

「あー……あ! はい! 見えました……って、隊長!? それ、いったいどういう……っ!?」

 第六感で見た馬車の中は、先ほどまでと何も変わっていなかった。

 ただしそれは、服装以外に限った話だ。

 ベイカーはストレッチエナメルのSMプレイ用ボレロ、布面積が少なすぎるTバックビキニ、スタッズまみれの編み上げサイハイ厚底ブーツ。臍と乳首にはピアスまでついている。これはどう見ても『SM雑誌の表紙モデル』の衣装である。

 グレナシンのほうもベイカーとほぼ同じ露出度だが、こちらは少々毛色が違う。たすき掛けされた赤い平打紐に折りたたまれた着物が挟まれ、袴風の布が腰回りに浮いている。挟んでいるだけ、浮いているだけなので、実際の装備はベリーショート丈のノースリーブトップスとマイクロビキニのみ。男性が着用するには諸々の不安が付きまとう、極小の布面積だった。

 なんで? という顔のロドニーに、ベイカーは渋い顔で答える。

「この服装はタケミカヅチとツクヨミの《戦時特装》だ。神々の戦装束というか……まあ、見ての通りの勝負パンツだな」

「勝負パンツ」

「好戦的な神ほど変態指数が高い」

「変態指数が高い」

「ま、カミサマだけじゃなくて、器のほうの好みも反映されてるらしいんだけどね~? アタシ的にはもっとド派手カワイイ感じでもいいと思うんだけどぉ~。ドラァグクイーン風のほうが良いのにぃ~」

「同感だ。俺の好みだったら黒エナメルより白系の拘束具だぞ。もっと全身、ガッチガチに締め付けてもらいたいところだ」

「カミサマの灰汁が強すぎるのも考え物ヨネェ~」

「ああ、まったくだな」

 灰汁が強いのはどちらだろう。

 真面目に考えてしまったロドニーは、うつむいた拍子に自分のいでたちを見て驚いた。


 狼の姿になっている。


 頭のてっぺんからつま先まで、冬でもないのに純白の被毛に覆われているではないか。それも驚いたことに、トリミングサロンに行った直後のようなフワフワ感と清潔感である。ツクヨミの月桂樹、タケミカヅチの藤の花のように、ほんのりと蒲公英の香りも感じられる。

「俺、いつの間に……? それになんで冬毛……?」

「それはお前というより、お前の中にいるオオカミナオシのヴィジュアルイメージだな。神の姿に近いほうが力を使いやすいんだ」

「アタシと隊長も、カミサマとまったく同じ体型でしょ? それがオオカミナオシにとっての『最適な形状』なのよ」

「はあ……でもこれじゃあ、何も持てないような……?」

「持つ必要がないからな、神は」

「そうなのよね。道具を持つ必要も急所を隠す必要もないのよ、神は」

「でもそれ、カミサマ的には良くても、俺たちは困りますよね?」

「ああ、非常に困る。どんなに真面目なシーンでも、乳首ピアスとTバックではなぁ……」

「この格好、お腹冷えるのよねぇ~……戦闘中に色々はみ出すし……」

 神の都合に付き合わされる人間のボヤキに、それぞれの神が軽い咳払いで話題の転換を促している。

 車内の話題が一段落したのを見計らい、御者のデニスが声をかけた。

「皆さ~ん、到着ですよ~」

 ロドニーはハッとし、外を見た。

 ツクヨミの闇に包まれて真っ暗だった車窓の景色は、いつの間にか明るい屋外へと変化していた。

「え……嘘だろ? 今、夜なのに……」

 ロドニーがうろたえている間に、ベイカーとグレナシンはさっさと馬車を降りてしまう。あわてて二人に続き、ロドニーはその世界に降り立った。


 延々と続く真っ白な砂地。

 抜けるように晴れ渡った青空。

 その空に掛かる、無数の虹。


 虹色の光にあふれたその光景は、玄武が『本来の心』を取り戻したときとよく似ていた。


「あらやだ、何よコレ。ひょっとしなくても解決済み?」

「っつーか副隊長、肝心のマルコどこですか……?」

「さあ……どこかしら?」

「タケミカヅチの『眼』で見たときは、確かに海の底にいたのだが……海はどこだ?」

「無いわよねえ?」

「水なんか一滴も見当たりませんよ?」

「副隊長。よもや、入る世界を間違えたのではあるまいな」

「やだ! ちょっとサイトちゃん! アタシのせいにしないでよ! アタシちゃんとやってますぅ~っ!」

「ならば、これはいったい、どういうことなのだろうな……?」

「あのぉ~っ! ごめんくださぁ~い! うちのマルちゃんお迎えに来たんですけどぉ~? 誰かいらっしゃいませぇ~ん?」

 相手が神であろうと、グレナシンのやることは非常に人間的である。ベイカーとロドニーもそれに倣い、とりあえず大声で呼んでみる。

「……いや、駄目だな。誰かいるような気配がない。もう、マルコと一緒にこの世界を出たのではないか?」

「ってことは……あらやだ。それって結構マズいかも……」

「どういうことですか?」

「どうもこうも、この世界を創ったのは青龍よ? 屋根を支えてる大黒柱は、青龍本人の魔力だったはずで……」

「……つまり?」

「ここ……もう崩壊するかも……」

 引きつった顔で空を見上げるグレナシン。つられて上を向いた二人も、同じように顔を引きつらせる。


 空が割れている。


 ひび割れた空から、パラパラと何かが落ちてきた。

「これは……砂か?」

「いいえ、違う。これは……卵の殻じゃないかしら?」

 手のひらで受け止めた砂のような破片は、確かに殻の一部だった。

 青龍の魔力で作られたこの空間は、巨大な卵の中にあったのだ。青龍はマルコに名前を与えられ、『新たな神』として生まれ直した。ここにはもう、守るべき『胎児』はいない。

 役目を終えた卵は崩落を始めた。

「うわぁっ!?」

 ドスンという音とともに、ロドニーの横に巨大な断片が落下した。

 縦横一メートル、厚さ五十センチ。咄嗟に避けて事なきを得たが、直撃していたら致命傷になっただろう。

「デニス! 馬車を出してくれ!」

「はい! でも、どっちに!?」

「副隊長! 出口はどこだ!?」

「あっち! ずっと向こう!」

 馬車の前方、遥か彼方。

 白い地平線に目をやれば、かすかに空間が歪んだ箇所がある。

「あんなに遠いのか!?」

「来たほうと真逆!?」

「なんで!?」

「『闇』の中は距離と方向が出鱈目なの! いいから出して! 世界の崩落に巻き込まれたら、いくら『神の器』でも無事では済まないわ!」

「了解です!」

「ロドニー! 馬車上部主砲を用いて落下物を砲撃・粉砕せよ!」

「はい!」

「副隊長はナビゲーションと防壁構築を!」

「りょ~かい!」

「前方の障害物は俺が排除する! 総員、行動開始!」

 降りたばかりの馬車に飛び乗り、彼らはこの世界からの脱出作戦を開始する。

 ロドニーはオオカミの姿で屋根の上まで跳躍し、砲台を操作しようとして気付いた。

「あれっ!? 俺、人間に戻ってる!?」

「ここが『神の世界』で無くなった証拠よ!」

「揺れますよ! しっかり掴まってください!」

 言うが早いか、デニスは馬車を急発進、急旋回させ、直上から落下してきた破片を回避した。遠心力で振り落とされそうになりながらも、ロドニーはこの戦闘用馬車の主砲、一〇〇ミリ口径魔導砲を連射する。

 ベイカーもロドニーの隣で、前方に落下した『殻の破片』に攻撃魔法《雷火》を放つ。超局所的に発生した落雷は、岩の塊のような殻を一撃で粉砕した。

「ちょっとサイトちゃん!? なに通常魔法使っちゃってんのよ! こういう時こそタケミカヅチこき使いなさいよ! 一応は軍神よ!?」

「いや、駄目だ! 『この程度の危機に我が顕現するなどあり得ん! もっと華々しい戦場でなければ我にふさわしくない!』とか言ってて、全然手伝ってくれそうな気配がない!」

「この糞ニート中二病患者!」

 グレナシンの身体から半透明なツクヨミが飛び出し、ベイカーの後頭部をハリセンでスパーンと叩く。その拍子に、ベイカーの体から半透明なタケミカヅチが半歩分飛び出した。

「器を無視したドツキ漫才はご遠慮願いたいのだが!?」

「文句は糞ニートにおっしゃい!」

 そう言いながら、グレナシンも前方の障害物に向けて攻撃魔法《墜星》を放っている。ロドニーが撃ち抜いた殻の破片のいくつかが、馬車の進路上に落ちたのだ。どこからともなく降り注ぐ無数の隕石に弾かれ、殻の破片はビリヤードボールのように進路上から押し出された。

 数が多いのが難点ではあるが、攻撃対象は空からの落下物と進路上の障害物に限られる。あちらから攻撃してくることも、こちらの攻撃を避けることもない。この四人にしてみれば、ここからの脱出はさほど難しいミッションとは言えない。


 ――そう、相手が動かない標的だけならば。


 はじめに異変に気付いたのは、仰角砲撃を続けていたロドニーだった。

「隊長! 殻の外に何かいます!」

「何!?」

 視線を上に向けた瞬間、ベイカーは本能的に危機を察した。

「《雷牙零式》、発動!」

 ベイカーの掌から紫電の閃光が放たれた。その光はまっすぐ天を目指し、雷の獣、麒麟の姿に変化する。

 麒麟が殻に開いた穴に近づいたとき、それは現れた。白い虎によく似た、けれども他のどんな生物とも異なる異形の獣。


 四神が一柱、白虎である。


 白虎は姿を見せると同時に、麒麟に攻撃を放っている。迎撃する麒麟の雷撃と、白虎の閃光。二つの光がぶつかり合って巻き起こる衝撃波に、車上のベイカーとロドニーは吹き飛ばされそうになった。

「くっ……ロドニー大丈夫か!?」

「はい、なんとか! っつーかなんですか今の光! いったいなんの技を……」

「技なんかじゃないさ! 俺たちがしがみ付いている魔導砲これと同じだ! 白虎はただ、魔力の塊を射出したにすぎん!」

「ただの魔力!? マジで!?」

 上空では麒麟と白虎の戦闘が続いている。

 双方、四つ足の神獣である。主力武器に違いはあるが、戦闘スタイルは似通っている。閃光と雷撃を放ちながら突進。すれ違いざまに牙と角とで肉弾戦。二合、三合と競り合い、大きく飛び退き距離を取り直す。

 神vs神。互いの手を探る『軽い打ち合い』であっても、地上の人間たちには大きすぎる影響が出ていた。

「イタタタタタッ! 痛い! なんかこの光痛い!」

「当たり前だ! たった今それと同じだと言っただろう!? 魔導砲の流れ弾を受けているようなものだ! さっさと《銀の鎧》を使え!」

 言われて急いで防御を固める。そんなロドニーの様子に、ベイカーもグレナシンも気付いていた。オオカミナオシは世界の不具合を修正、削除する存在。今ここに『不具合』と定義される事象は発生していない。そのためオオカミナオシは、ロドニーに過剰な『制限』を掛けているようだ。いつものロドニーなら流れ弾の二十や三十、余裕の笑みで撃墜して見せる。それなのに今は、自分にそれだけの実力があることを自覚できていない。

 能力の使用制限に伴う知能指数や運動能力の低下。これは『神の器』であれば誰でも起こり得る事象である。しかしこの状態では、いつどんな『些細なミス』で命を落とすかわかったものではない。

「あー、もー、やんなっちゃーう! なによこの状況! なんで青龍の世界に白虎が出てくるの!? そのうえいきなり攻撃してくるとか、本当に何なの! いろいろ最悪すぎて、ツッコミが追い付かないじゃなーいっ!」

「まったくだ! クソ! 麒麟でも敵わないなら、もう手はないぞ!」

「なにそれちょっとウ~ソ~で~しょ~っ!? アンタそれでも軍神ついてんの~っ!?」

 金玉ついてんの~、と同じノリで言い放つグレナシンをスルーして、ベイカーはデニスに言う。

「デニス! 俺があいつを足止めする! 副隊長とロドニーを連れて先に出てくれ!」

「おひとりで大丈夫ですか!?」

「俺の体が壊れて困るのはタケミカヅチだ。何が何でも協力してもらうさ」

「ちょっと隊長! 本気!?」

「ああ! 冗談を言うほどのゆとりも無いからな! 二人を頼んだ!」

「怪我して帰ってくんじゃないわよ! 健闘を!」

「吉報以上を見せてやる!」

 拳をコツンとぶつけあい、ベイカーはひらりと馬車を降りた。

「え!? ちょ、隊長!?」

「いいのよロドニーちゃん! アタシたちは先に脱出して、サイトちゃんが安全に戻ってこられるルートを確保するわよ!」

「あ、はい!」

 わけもわからず丸め込まれて、ロドニーは落下物への砲撃を続ける。

 しかし、『出口』に向かって疾走する馬車の上で、ロドニーはふと、妙なことを考えた。

 この馬車に乗っているのは自分と、副隊長と、デニスの三人。けれどもなぜか、漠然とこう思っていた。


 まだ馬車の中に、もう一人乗っているような気がするんだよなぁ――と。


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