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エアストヴェルト  作者: 工藤準
第一章 異世界転移
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目覚め

優一と琴音が異世界に来て半年がたった。

最初の頃は全然ティファリアに追いつけなかった優一は毎日のマラソンの積み重ねで追いつけるようになっていた。

「優一さん大分、早くなりましたね」

「まだまだ二人には敵わないけどな」

優一は笑って額の汗をタオルで拭く。

いつものように二人が家に入るのを確認して優一は、毎日欠かさずやっているオリジナルの鍛錬を始める。

身体に掛かってる負荷にも慣れて来て正拳突きやフットワークにキレが出て来ていた。

優一は鍛錬を済ませ家に入ると、料理の香ばしい匂いが玄関まで漂ってきていた。

いつものように、先に家に戻ったミティシアとティファリアは台所で食事の支度をしていた。

食卓には幾つかの料理が出来ておりミティシアは大きなお肉を華麗に裁く包丁さばき、手際よく料理する姿を見て優一は両親が行方不明になる前日、義母と琴音が楽しく料理する姿と重ねる。

「ミティシアさんありがとう」

「お風呂も出来てるので入ってきてください」

「今日は私も味付けをしてみたの!後で感想を教えてください」

ティファリアは尻尾を振りながら嬉し気に言う。

優一はお風呂を済ませミティシアとティファリアに伝える。

「それでは私とティファリアも先にお風呂に入りましょう」

二人は一緒にお風呂場へ向かい優一は二人がお風呂から上がるまで、いつものように琴音の寝ている部屋まで行き今日あった事をベッドに寄り掛かり語る。

「それでな、前の世界では想像も付かない速さや力が身についてな、もうアニメの世界かよってくらい強くなったんだよ」

優一は手をベッドに置き、琴音の顔を見つめて名前を呼ぶ。

「なあ琴音・・・俺に沢山の人を、この世界を助ける事が出来るかな?」

優一が問いかけるも寝ている琴音からは返事が返ってくるはずもない。

「琴音・・・」

優一が涙を堪えていると、ベッドに置かれた優一の手に何かが触れる。

優一が顔を起こして見ると琴音が手を握っていた。

「泣かないで兄さん。兄さんなら出来る」

半年間全く目を覚まさなかった琴音が目を覚まし優一の目から涙が零れる。

「琴音!琴音・・・起きるのが遅いぞ!いつまで寝てるんだ!!」

優一は泣き声を押し殺して琴音を強く抱きしめる。

「に、兄さん苦しい・・・」

「よかった。よかった!このまま目を覚まさないかと思った」

「ごめんね兄さん。泣かないで!」

琴音は優一の頭を撫でて宥める。

お風呂から上がったミティシアとティファリアは、優一にご飯を食べると伝えるため二階へ上がってくる。

「優一さん・・・」

二人は目を覚ました琴音の胸の中で泣く優一を見て感動する。

「よかったです」

「やっと目を覚ましたのね!優一君のお姫様」

「今日はお祝いですね!料理をもう少し作らないといけませんね」

そう言いミティシアはティファリアを連れて下に降りた。

ティファリアはミティシアに抱き着き声を殺して泣く。

「・・・よかった。琴音さんが目を覚まして・・・私が二人をこの世界を連れてきたせいで琴音さんがこのまま目を覚まさなかったら私・・・私」

ミティシアはティファリアの頭を撫でる。

「ティファリアが行為にしたことじゃないでしょ?それに召喚術式には召喚者を深い眠りに追いやる効果はありません。琴音ちゃんを深い眠りに落ちたのはあの封印の効果なので仕方がない事です」

ティファリアは頷く。

「ほら!泣いてないでティファリアも料理作るの手伝ってくれる?」

ティファリアは涙を拭うと頷く。

「琴音起きれるか?」

「大丈夫」

そう言うと琴音は立ち上がる。

「夢の中でお母さんにあったの。お母さんが言ってた。魔力の事、これから私に待ち受けている事。私が何者なのかを・・・」

どうやら琴音は魔力の封印を解いた事により、封印が解けたとき全てを知らせる為に母が予め仕込んでいた《記憶語り》の魔法で異世界の事を知っていた。

「そうか・・・琴音が何者だろうとこれからどうでもいい。俺が琴音を守る!」

「兄さんが私を守るなら私は兄さんを守る!もう家族を失うのは嫌・・・」

「ああ」

優一と琴音はベッドに腰を掛けてこれまでの事を話す。

ぐうぅぅ~~

琴音と優一のお腹の音がなり二人は目を合わせて笑う。

「寝たきりだったからお腹空きました」

「俺もいっぱい修業したからお腹空いた」

二人はリビングに向かうと沢山の料理が机に並んでいた。

「「琴音さんおはようございます」」

「私はミティシアと申します。この子は私の娘ティファリアです」

琴音もお辞儀をして挨拶を返す。

「初めまして、真藤琴音です。兄共々よろしくお願いします」

「沢山料理作ったので、まずは召し上がってください」

四人で食卓を囲んで料理を平らげる。

「兄さん凄い量食べたね」

「琴音も以前とは比べ物にならないほど食べてたぞ」

「気を宿したことによって食べる量も増えたのです」

「気は相当なエネルギーを使うので身体が栄養を沢山欲しているのです」

賑やかな食卓で琴音は嬉しそうする。

「こんなに賑やかにご飯を食べたのは久しぶりです」

琴音の喜ぶ顔を見て優一は安心する。


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