何気ない会話
「やっぱり身体に負荷が掛かった状態だとキツイな」
日が完全に暮れると優一は鍛錬を止め、家に入るとティファリアが丁度風呂から上がる。
「優一さん何処かに行ってたのですか?」
優一は誤魔化すように適当に言う。
「ちょっと外の空気を吸いたくてぶらぶらしてただけだよ」
「そうですか。お風呂先に頂きましたのでゆっくり入って来てください」
「分かった!」
ティファリアはリビングで夕飯の支度をしているミティシアの元に行き夕飯の支度を手伝う。料理の支度が終わると同時に優一もお風呂から上がりリビングのテーブルには見た事もない料理が沢山並んでいた。
見た目的にはただ肉を焼いただけに見えるが優一は今までこんなに大きな肉が大皿に盛られているのを見るのが初めてなのだ。
北京ダックみたいなまん丸焼きとは規模が違う。
とにかく大皿からはみ出るぐらい大きい。
もう一つの大皿には森で採れた野菜が綺麗に盛り付けてあり、見た目は元居た世界とあまり変わりないキャベツやトマトとかと同じ。そして各席に取り皿が置かれていた。
「優一さん料理が出来ましたので食べましょう」
あまりのサイズで料理用の包丁で肉を切り分ける。
まるで豆腐を着るかのように肉が切れて、中から肉汁が溢れでる。
ステーキのミディアムと同じ焼き加減に油が滴る。
優一はよだれを飲み込み小皿に取り分けた肉を一口食べる。
「美味い!!」
肉の筋は一切なく噛めば噛むほど口の中に肉の脂が広がる。
そして白い白米を一口。
優一はあまりの美味しさに茶碗の白米を全部食べ終わる。
おかわりしたい所だがお米の貯蔵はあまり無く大事に食べないといけない。
三人は料理を残さず平らげ満足する。
「俺とティファリアで食べ終わった皿を片付けるので先にお風呂入ってください」
「そうですか?それではお言葉に甘えて」
ミティシアはお風呂に向かい優一とティファリアは皿洗いをする。
「今日食べたお肉だけどアレは何のお肉なんだ?」
「この前、気の使い方を教える時に倒した魔物のお肉です」
「へ、へぇ~。魔物って食べれるんだな」
「はい」
二人は皿洗いを済ませると珈琲と紅茶を入れてソファーでくつろぐ。
ティファリアは珈琲が苦くて苦手のようだ。
特にすることもなく優一は本を読んでいるとティファリアはウトウトしていた。
優一はティファリアを抱えてティファリアとミティシア、二人で使っている寝室に連れて行こうとするとミティシアが丁度お風呂から上がってきた。
「あら、この子寝ちゃったのね。私が部屋に連れて行きます」
ミティシアはティファリアを連れて寝室に寝かしに行った。
そういえば琴音が小さい時よくああやって寝室に連れて行ってたな。
ミティシアはティファリアを寝室に寝かせて戻ってくる。
「優一さんありがとうございます」
「いえ、いいんだ」
ミティシアは紅茶を入れてソファーに座る。
「ミティシアさんは良いお母さんだな」
「そうですか?私はあの子に親らしい事が出来ているとは思ってません・・・小さい頃から厳しい鍛錬をさせて来て、あの子は・・・本当に幸せなのか」
「悲観しなくてもいいと思う。それはミティシアさんがティファリアに自分を守るすべを教えて挙げてることであって決して悪い事ではないと思う」
「そう言って貰えると嬉しいです」
「ミティシアさんにお願いがあるんだけ良いかな?」
ミティシアは唐突な優一のお願いに首を傾げる。
「何でしょうか?」
「俺と琴音の親は、まだ琴音が幼い頃に事故で亡くなったんだ。琴音はそれから親の愛情を受けずに俺と二人で暮らして来たんだけど、まだアイツには親と触れ合う時間が必要だと俺は思うんだ・・・だからアイツが目を覚ました時は俺達の事を家族と思って接して欲しいんだ」
「私はティファリアも優一さんも琴音さんも大事な家族だと思ってますよ!だって一緒に同じ屋根の下で暮らす中ですもの」
「すまない・・・」
優一はあっさり提案に受け入れてくれるミティシアに驚くも安心した表情を浮かべる。
「私に親が務まるかは分かりませんが優一さんも私に甘えて良いですからね」
「バ、馬鹿!俺はもう大人だから甘えるか!」
顔を赤らめてタジタジに断る優一の表情を見てミティシアはクスクスと笑う。
「家族なら丁寧な話し方は辞めよう。何か他人行儀なような距離を感じるしな!」
「・・・分かったわ優一君」
ミティシアの優しい笑顔に優一は心を躍らせる。
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