二人の話1-2
三人は家に戻ると優一は昨夜琴音が作った残り物と冷や飯を温めて夕飯を食べる。
「「美味しいです」」
二人は口に食べ物を沢山入れて、幸せそうな表情をする。
まるで今まで食べた事が無い高級料理を口にしたかのように。
「この茶色の幕を纏ったお肉は何ですか?」
「それは鳥肉を唐揚げ粉を塗して油であげた鳥の肉で唐揚げと言って、こっちがクラムチャウダーと言って甲殻類をクラムチャウダーのスープの素と牛乳を大目に入れて煮込んだやつ」
「優一さんの世界ではこんなに美味しい物があるのですね!一度行ってみたいです」
三人はあっという間に料理を平らげるも満腹までにはならなかった。
優一は冷蔵庫の中を確認するも冷蔵庫には残り物はもうなく空っぽになっていた。
「食料がないから、明日は食料を調達しないといけないか」
「それでしたら私が明日調達しときます」
ミティシアはそう言って食器を運び魔法を唱える。
「『ウォータークーゲル』」
すると台所に水の球体が現れる。
「優一さん、石鹸は何処にありますか?」
優一は宙に浮いた水球に夢中に見ており、ミティシアの声に全然気づいてなかった。
「優一さん?」
「あっ!?悪い!洗剤はこのボトルの中に入ってるのと、このスポンジを使ってくれればいい」
ミティシアはボトルを握って洗剤を出す。
「コレは便利ですね!」
そう言って洗った食器を宙に浮いてる水球に入れて行く。
優一はその光景をまるで芸術作品を眺めるかのように暫く見惚れていた。
「よし!風呂掃除をしないとな」
優一は風呂場に向かうが水道が使えないことを思い出し、水をどうしようか悩んでいるとティファリアが風呂場にやってきた。
「優一さん何かお手伝いすることはありますか?」
「実は今水が出なくて困ってるところ。ミティシアさんにお願いして水を出して貰うか」
ティファリアは風呂場に入ると両手を上に翳す。
「『ウォータークーゲル』」
すると水の球体が現れる。
「これでいいですか?」
この子凄いな・・・こんなに小さいのに俺より強いんだよな。人は見かけによらんな。
「あ、ああ。やっぱりティファリアは凄いな!ありがとう」
優一に褒められたのが嬉しくてティファリアは尻尾をフリフリと揺らす。
掃除が終わると、ティファリアの魔法で湯船に水を入れる。
「水は温めなくてもいいのですか?」
優一は風呂場のお湯炊きボタンを押すと音声が流れティファリアはそれを聞いてビクッと驚く。
「今、壁がお話しました!!」
お年寄りが使い慣れてない音声付の電子機器を使うときに会話をするように、ティファリアも同じことを壁に向かって話しかけていた。
何この子可愛い!
「これは湯を沸かす機会で、電気を使って水をお湯に変える事が出来るんだよ」
ティファリアは不思議そうにボタンを見つめる。
電気だけは自家発電だから何とか使えるみたいでよかった
「凄いです!魔法を使わなくてもお湯を沸かすなんて」
二人が脱衣所で話しているとミティシアがやってくる。
「二人ともここにいたのですね。食器洗いは終わりました」
「ミティシアさんありがとう」
「お母さん聞いて!聞いて!さっき優一さんが壁のボタンを押したら壁がお話したの!」
「それでしたら私の居たリビングの方でもお湯を沸かしますって声が流れましたよ!それで気になったので様子を伺いに来たのです」
優一は楽し気に話しながらリビングの方に戻る二人を見ながら後を付いて行く。
少し寂しくなる気持ちや温かい気持ち、複雑な感情に優一は駆られる。
二人の姿を琴音と母親に重ねていたのだ。
リビングのソファーに座ると三人はこれからについて話を始める。
「これからの予定ですけど優一さんにはティファリアより強くなっていただきます」
緊張と覚悟で優一は額に汗を流し息を飲み込む。
「・・・分かった。でもティファリアはどのくらい強いんだ?」
そう言うとミティシアは玄関に置いてあった剣を持ってくる。
「優一さんこの剣を持ってみてください」
優一はミティシアから剣を受け取ろうとするとあまりの重さに持つことが出来ず床に落ちて凄い音が響く
ドン!!
剣は床にめり込み床が割れる。
「何だこの剣は!?」
「それは特別な剣で《希望の剣≫と言い、持ち主の魔力を剣に集めて一気に放つ事が出来る特別な剣です。あまりの重さで扱える者は極限られています。ですが剣に選ばれし者は全く重さを感じないとか…私達は重さを感じるので実際には分かりませんが…」
「な、なるほど」
「最初はティファリアもこの剣を持つことが出来ませんでしたけど、今ではこの剣を普通に持つことが出来ます」
「・・・・・・」
優一は沈黙してしまう。
「安心してください。私の考えてる鍛錬をこなせば優一さんならすぐにティファリアより強くなれます」
「俺はどんな修行をすればいい?」
「優一さん立ってもらってもいいですか?」
優一はミティシアに言われソファーから立ち上がるとミティシアは優一に向かって魔法を唱える。
「『グラビド』」
優一の身体は一気に重くなり両手両膝を床に着く。
「こ、れは!?」
「優一さんの体重を増やしました。今の優一さんの体重は二倍に増えてます」
二倍!俺の体重が六十五キロだから今は百三十キロってことか!?
優一は全身に力を入れて立ち上がる。
「はぁはぁはぁ~」
ただ立ち上がると言う動作だけで優一はまるで全力疾走をしたかのように息切れをする。
「ティファリアは自分の体重の十倍までは耐えることが出来ます」
「じゅっ十倍!?ティファリア体重なん」
優一が言い終わる前にティファリアは大きく咳払いをする。
優一は黙り込むとミティシアは優一にかけた呪文を解く。
身体は一気に軽くなり優一はソファーに腰をかける。
「ふぅ~」
「休む時以外は基本、身体に負荷を掛けて過ごしていただきます」
「分かった・・・」
三人が話をしているとお風呂が沸いたと音声が流れる。
二人はその音にビクッと反応する。
「お風呂が沸いたみたいだな!ティファリア先に入ってきていいぞ!」
「いいのですか?」
「ん?それともお母さんにと一緒に入らないと不安か?」
ティファリアは赤面になって声をあげた。
「一人でも入れます!!子供扱いしないでください!」
ティファリアは怒りながら風呂場に向かう。
優一はゆっくりと二階に上がって二人が着れそうな変えの服を用意する。
親が来ていた服と琴音が来ていた古着を見つける。
おっ!まだ残しておいてよかった
優一はリビングに戻る前に自室を開けるが琴音はまだぐっすり寝ていた。
一階に降りると脱衣所にティファリアの着替えの服を置いて優一はリビングに戻る。
「良かったらこの服を使ってください。親が使っていた古着ですけど」
「いいのですか?」
「ああ!見たところ二人とも着替えの服を持ってなさそうだったから」
「ありがとうございます。優一さんのご両親はあちらの世界におられるのですか?」
「俺と琴音の親は事故で亡くなったんだ。正確には行方不明なんだけど…」
「そうでしたのね。不謹慎な事を聞いて申し訳ございません」
「気にしなくていいよ」
優一はミティシアに着替えを渡して温かいお茶を入れる。
「良かったらミティシアさんとティファリアの事、この世界についてもう少し聞きたいんだけど良いかな?」
二人はお茶を飲みリラックスするとミティシアは話を始めた。
いつも読んでくださり有難うございます。
今日は長文になりそうなので三つに分けて投稿したいと思います。
読みずらいって方もいらっしゃると思いますが、頑張って腕を上げながらオールワールドを読んでて楽しいと思えるストーリーにしていきたいと思います。