病める日に
地球のある天文台に、一通のメールが届いた。件名はなく、差出人もわからない。
ふしぎに思いながらも開いてみると、中身は一行だけだった。
「びょうきになりました。なおしてください」
みな、首をかしげた。いったいだれが、こんなメールを送ってきたのだろう。しかし、きっと病院かどこかと間違ったのだろうと思い、しばらくするとだれもが忘れてしまった。
だが、数日後、同じメールが再び送られてきた。二回もまちがえるなんて、ちょっと考えづらかった。そういうわけで、どこから送られたメールなのか、調べてみることにした。
太陽からだった。
嘘だろ、と、もう一回調べても、やはり太陽。あの毎日皆勤の太陽である。太陽がどうやってメールを出したのか、など、いろいろ気にはなるが、みなここでひとつ思い出したことがあった。
「そういえば、予言があったな」
「ああ、太陽にまつわる予言」
「コンピューターがはじき出した」
「太陽が地球を滅ぼすとか」
「まゆつばだと思っていたが」
「まさか、予言が真実だと?」
「調べるにこしたことはない」
望遠鏡をのぞき込んだり、衛星からの写真を見たりして、太陽に異変がないか調べた。すると、ずいぶん元気がないことがわかった。そういえば、最近は肌寒いような気もする。
「なんとかしなければ」
様々な学者が集まり、太陽を治すため、けんめいに議論が続けられた。
そして一年後、ようやく、太陽に効果のありそうな薬が完成した。異変の原因がなんであれ、これで治せるはずだった。
今、その薬を乗せたロケットが、太陽を目指して発射された。上手く太陽に突っ込んでくれれば、きっと効き目があるだろう。
そして、それは成功した。
成功のあかしとして、日に日に気温が上昇していった。だれもがよろこんだ。あと数日もすれば、きっと太陽はもとの光を取り戻すに違いない。
数日後。
地球にはなにもなくなってしまった。
太陽の光が強すぎて、みな、焼け死んだのだった。
どうやら太陽は、もともとべつの持病もかかえていたようだ。