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0005 ハローワークと化け物

いつも誤字脱字報告、ありがとうございます!

今日も目を覚ますと知らない天井・・・

とかだったら良いのだけど、

俺の目に飛び込んできたのは、浮いているジャージ姿のヤンキー女子高生だった。

こいつ、幽霊のくせに寝るんだな。


逆さになって浮いているので、垂れてきている長い赤髪が顔に当たってうざい。


暖簾をかき分けるようにユウ美の髪をどけつつ、俺は起き上がった。


さて朝食の用意をしますかね。


ご飯とみそ汁と生卵。


それを二人分用意してテーブルに置く。


「いっけね、また間違えて二人分用意しちゃった。こいつはうっかり。」


ユウ美はすでに制服姿になっており、フワフワと席に着いた。

『お前、意地でもアタイを見ていないってスタンスを守るのかよボケカス。面倒な奴だなゴラァ。』


あきれ顔のまま『いただきます』といって手を付けだした。

さて俺も食べるか。


卵を割ってご飯に落とし、麺つゆのたれをたらしてかき混ぜる。

するとユウ美が目を見開く。


『おい、卵の器使わずに茶碗に直に入れてかき混ぜるのかよ!しかも醤油じゃなくて麺つゆ?おいおい、なんだそりゃ。醤油使おうぜゴラァ。』


うっさいな。

俺は無言でユウ美の茶碗に卵を落とし、そこに麺つゆを垂らしてかき混ぜる。


『おい豪気ゴラァ!なに勝手にアタイのご飯に卵落として麺つゆ垂らしてやがんだ!マズかったら呪い殺すぞボケカス。』


おいおい、一応間違えて用意したご飯で、お前のではないのだが。

そしてユウ美は怒りながらご飯をかきこんだ。


『おい、どうなってやがんだゴラァ!けっこう美味いじゃねえか!麺つゆもアリだなチクショウ!』


素直かよ!

ヤンキーっぽいからもっと強情かと思ったが、こいつ結構素直だよな。

ちょっとギャップに癒された自分が憎い。


俺もぱっぱと食事を済ませると、食器を洗い今日は何をするか考えた。


だが、出てきた答えはいたってシンプル。


そうだ、職安へいこう。

職安とは、職業安定所のこと。別名ハローワーク。


俺の中では、死んだ目をしたような人たちが、無精ひげ面で職員に絡んでるようなイメージで怖いけど、無職から脱するのに最短距離な場所だ。


「・・・はぁ、職安に行ってくるかな」

『職安?見慣れない新人が入って来ると、モヒカン頭に絡まれるあそこか?』


俺は、無意識にジト目でユウ美を見る。

どこの異世界ギルドだよ。

まさかの、俺より酷いイメージ持ちの人がいたおかげでなんか落ち着いた。


うん、いってこよう。

まずノートPCを使い、インターネットで必要なものを調べる。

うんうん、離職票、顔写真、マイナンバーカードが必要なのか。

俺は素早く着替えると、それらを鞄につっこみ外に出た。


出ると、101号室の眼鏡清楚メイド美人、怨田メイ子さんが掃除をしていた。


「阿多野さん、おはようございます。」

「あ、おはようございます。」


メイ子さんは掃除の手を止めて微笑む。

「お出かけですか?」


「はい、職安に行こうと思いまして。」


「ああ、お酒とパチンコが好きなのに仕事をしない中年が、職員に暴言を浴びせる場所ですか。」


「メイ子さんも俺と同じようなイメージを持っているんですね・・・」


「あらお恥ずかしい。行ったことがないのもので偏見を語ってしまったかもしれませんね。」


「真実はすぐにわかります。俺が今から行ってきますので事実を確認してきますよ。」


「ふふふ、でしたらどんな場所だったか是非教えてくださいね。」


『おう、アタイが確かめてきてやるよ。』


「あら、ユウ美ちゃんもお出かけ?ふふ、楽しみにしていますね。』


お、、、

メイ子さんは普通にユウ美と会話するのか。

不思議さんだと思われるので、俺以外の前では話さない方が良いですよ。

「で、では行ってきます。」

「はい。お二人ともお気をつけて。」


そんなメイ子さんに見送られながら出発する。

よし、気分を切り替えよう。

電車に乗り、職安へ思いを巡らす。

うーん、やっぱり怖い場所なのかな。


ガタンガタン


数分電車に揺られて職安の最寄り駅に着いた。

渋谷駅


この若者の街の駅から、徒歩5分の場所に職安があるというのか。

意外だ。


『シブヤかー、久しぶりだなチクショウ。』


ヤンキーとはいえ女子高生。シブヤには来た事あるのか。


俺はハチ公前の出口から出ると、警察に道を聞いてみる。



「すいません、職安ってどうやって行けばいいか分かりますか?」


「職安?ああ、ハローワークね。この道を道なりに進んで消防署のすぐ先ですよ。」


「ありがとうございます。」

職安よりもハローワークというのが一般的なんだろうか。

数分歩くと、建物につく。


「こ、ここが職業安定所か・・・。」


ゴクリと唾をのむ。

俺は勇気を出して中に入った。


入ると、建物の中は明るく爽やかな雰囲気すらある。

イメージと違いすぎて入り口で硬直する俺。


すると受付から、めちゃくちゃ優しそうな中年男性が笑顔で迎えてくれた。


「こんにちわ。本日はどのようなご用件でしょうか。」


「えっと・・・失業したので・・・・。」


言葉につかえていると、男性は優しくうなずく。


「ハローワークは初めてですか?」


「は、はい。」


すると書類の入った大きな封筒を俺に差し出してくれる。


「登録などに必要な書類がございますが、本日はお持ちでしょうか?」


「えっと、ネットで調べて持ってきました。」


「はい、それでしたら3階の31番窓口で登録をお願いいたします。ハローワークを初めてご利用されるのでしたらご不安でしょう。何か困りましたら近くにいる職員に遠慮なく質問してくださいね。」


「あ、ありがとうございます。」


俺はお辞儀をして、階段を上がった。


ユウ美はキョロキョロしながら周りを観察しているようだ。


『おいおい、なんだここ。ホテルの受付かと思うほど親切じゃねぇかクソボケ。親父からは恐ろしいところだから行かないって聞いてたのに・・・クソ、騙されたのか。』


どうやらユウ美はデマ情報を掴まされていたようだ。

そしてユウ美の親父さん。働きたくない系男子だったのだろうか?


俺は、31番窓口で受け付け札を取ると、壁に書いてある『受付の流れ』の説明に沿って必要書類に記入する。


「なんか初心者に優しい豊富な説明だ。」

『ほんとだな。これならアタイですら受付の手順が分かるなボケェ。』


ボケェとか言ってるけど、キョロキョロ素直な表情をしている。

あと、俺の独り言に会話してるように話を合わせるのをやめてほしい。

独り言なんだから。ね、わかるでしょ。ユウ美に話しかけてるんじゃないの。


まあ、いずれ伝えないとな。


俺は書類に記入を終えると座って待つことにした。

ユウ美はフラフラ浮かびながら、周りを見て回っている。


少し目をつぶりウトウトしてしまった。


『・・い、おい、おい!126番て豪気だろ!起きろクソが!』


ゴツン


頭を誰かに叩かれた。

見上げるとユウ美が拳を握っている。


『おい、126番呼んでるぞ!早くいけボケカスが!』


「おっと、俺の番かな。」


急いで受付に行き、受付の札を渡す。


「本日はご利用ありがとうございます。では離職票とお写真、それとご記入頂いた書類をお預かりいたします。」

若い女性が、銀行窓口並みに丁寧な笑顔で迎えてくれる。


書類を渡すと、素早くチャックしはじめた。

しばし黙って見つめていると。


「はい、問題ありません。会社都合の離職という事ですので、今月中には失業手当の受給が可能です。」


「え、失業手当もらえるんですか?」


「はい、問題ないかと思います。続きましてマイナンバーカードのご提示をお願いします。」


・・・といった具合に話はスムーズに進み、手続きは気持ちよく完了。


1時間後、俺たちはハローワークを後にした。


ユウ美は複雑な顔をしている。


『怖い場所かと思ったけど、良いところじゃなねえか。親切だし、失業者をバカにしていないし、他の失業者も普通だし。』


「はあ、怖い所じゃなくてよかった。むしろ親しみやすいというか頼りがいがあるというか、良い施設だったなあ。」


『ほんとだぜ、偏見は良くないってことだなゴラァ。』


爽やかな表情していても、語尾は『ゴラァ』なのか。


それよりもシブヤ、露出の多い若い女性が多いな。

目の保養だ。この光景を見れただけでも来た甲斐があるというもの。

チラチラ見ながら帰ろう。


『おいゴラァ!エロい目で何見てんやがんだクソボケ!!』


どきっ!

「ちゃ、ちゃうねんちゃうねん、進行方向を見つつ周りに危険がないか見ていただけで、やましい気持ちこれ無く・・・」


一人言い訳しつつユウ美を見る。

ユウ美はこっちを見ていなかった。

少し離れた横断歩道を見ている。


俺に話しかけた訳じゃない事にほっとしたのも束の間、背筋に冷たいものが走った。

ユウ美の見ている方向を直視しないでよかった。

目の端に見えているだけでも分かる。


それは横断歩道の真ん中に立っていた。

デカくて赤くてグロスクな何か。


3メートルはある巨人。

車道の真ん中に立っていた。

行き交うトラックと同じくらいの高さ。


あれはヤバイ。

絶対関わっちゃいけないやつだ。


俺はユウ美を無視して通り過ぎたかった。

だが出来なかった。


ズウウウン


ユウ美が叫んだせいで、ジャンプして俺の前に着地。

そいつはユックリ立ち上がる。


ユウ美この野郎!なんてことしやがる!このやろう!


思わず立ち止まってしまったので、わざとらしく歩道横のガードレールに手をつく。


「いてて、足がつったかも。」


これで前に進めなくても不自然ではあるまい。


ユウ美は両手をスカートのポケットに突っ込みながら、威嚇する表情で化け物の前に立ちはだかる。


『おいお前、何してやがんだよゴラァ。あの小娘を車道に招き寄せようとしやがったろうクソボケが!』


みると、高校生くらいの可愛い女の子がフラフラこっちに歩いてくる。

化け物に呼ばれているのか?


直感で分かった。

コイツ、あの少女にとり憑いてるだな。

この交差点で殺そうとしたのか。


だめだ、だったらあの少女はこっちに来てはいけない!


焦っていると、チャラい二人組の男が少女に声をかける。


「ねえ、もしかして歩き疲れちゃった系?よかったら美味しいお店あるからそこで休んでいきなよ、奢っちゃうからさ。」


でかしたチャラチャラ男×2!

普段ならイラつく光景だが、今日は俺的大絶賛しちゃう。

ナンパもたまには役に立つんだな。偉いぞチャラチャラS。


チャラチャラ君たちが時間を稼いでいる間に、ユウ美が釘バットを取り出した。

え?どっから出したんだ?

いや、いまは気にしている場合じゃない。きっと幽霊の神秘なんだろう。


ユウ美は勢いよくバットを振り抜いた。


『成仏しろやクズ野郎!』


ズシャッァ


不気味な化け物が引き裂かれる。

おおお!ユウ美強い!


化け物の下半身が血の水たまりになる。

だが、ちぎれた上半身は飛び上がり、少女の方に飛び掛かった。


『しまった!』


ユウ美は慌てた。だが俺は意外に冷静に見ていた。


何故なら、

ちぎれた上半身が飛び掛かる軌道上には、少女から化け物を遮るようにナンパ男が立っていたから。


ベちゃ!


ナンパ男の一人に、ちぎれた化け物の上半身がへばりつく。

『ソノオンナ、クイタイ。ソノオンナ、クエ。』


なんかしゃべったぞ。

だがこれなら俺の出番だろう。


化け物にへばりつかれたチャラチャラ君が、急に逆上してナイフを取り出した。


「無視すんじゃねえアマ!ぶっ殺してやる!」


周りの人達から悲鳴が上がる。

振り上げたナイフが少女に向かう瞬間。


「カアァツ!」


俺が飛び込んで

チャラチャラ君の腕をつかんで止めた。


そして、チャラチャラ君にへばりついた、邪悪な何かに向けて拳を向け。


「祓えよ」


たまたまチャラチャラ君の顔が、邪悪なアレの前にあったので一緒に撃ち抜いた。


「ぐほおおおお」

『クイ、、、タイ。。。。』


鼻血を吹きながら倒れるチャラチャラ君とオーバーラップするように、邪悪なにかが砕けながら地面に転がる。


『あとは任せろボケカスが!!!』


ユウ美が飛びこんできて、地面に転がった邪悪ななにかの破片を釘バットでガンガン叩いて丁寧に消滅させていた。


「ふう、これで安心だな。」


そこで急に周りから拍手がおこる

な、なんだ?


見渡すと、若い連中が周りを囲んでいる。

スマホを構えている奴までいるじゃないか。


そして思い出す。

「そっか、ここは渋谷だった。」


いそいで走って逃げた。

人を殴り倒したら逮捕されるかもしれない。

テレビで『無職 阿多野豪気 28歳』とか出るのは嫌だ。


走って逃げる俺の横を、返り血を浴びたユウ美が楽しそうについてくる。


『おう豪気、なかなかやるじゃねぇかボケ。見直したぜクソが。』


嬉しくない。

とにかく今は逃げることに集中する俺であった。


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