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0004 実家の知り合いは気安い

誤字脱字報告、いつもありがとうございます。

俺はいろいろ諦めた。


部屋でくつろいでいる俺の目の前で、女子高生の幽霊がスマホいじっている。

俺のスマホ・・・


幻覚だと思いたかった。

だが認めざるをえまい。これは幽霊だと。


長い赤毛のヤンキー女子高生幽霊。

ユウ美という名前らしい。


俺にできることは、明日からスマホにロックを掛けることくらいだろうか。

なぜスマホを奪われたのかというと、ノートPCを返してもらうためだ。


スマホは犠牲になった。


今のうちにノートPCでインターネット接続。

『幽霊 お祓い 方法』

で検索。


方法はいくつも出てきた。

・犬をけしかける。

・お札を貼る。

・塩を使う。


よし、一個一個試していこう。


まず犬をけしかけるか・・・

そういえば、このユウ美は犬の総司を撫でていたっけ。

うん、これは却下。


お札を貼るを試すか。

『絶対に効くお札100選』

というサイトを発見。


むむむ、会員登録しないと中身が見れないのか。

しかも有料だと!

この米原了嗣という霊能力者のサイト凄いぞ。画像をDLして印刷すればお札に自動的に霊力が宿るらしい。

背に腹はかえら得ない、信じたぞ了嗣さん!


くそお、入会金つらい。でもしかたない、くそ。

クレジットカードで課金して入会。


するとお札が沢山あるページに入れたので、幽霊退散のお札を選んでプリントアウト。


俺はそれをそっとユウ美にくっつける。


『なんだ豪気!ウザイんだボケカスが!』


ビリビリビリ


お札が破られた。

しかも丸めてボール状にされて、俺に投げ返されてしまった。


ぽこん

頭に当たる。

痛くないけど心に刺さるダメージ。


「くそお、10000円も払ったのに!インチキ商売めええ!」


俺は崩れ落ちる。

「無職なのに!俺無職なのに無駄な金使っちまったあああああ!」


『うるせえぞ豪気!叫んだら周りに迷惑だろうがクソ野郎!』


ごもっともです。

しゅん・・・


幽霊に常識的な説教をされてしまった。

しかもヤンキーの女子高生に。


くそ、

この怒りは何処にぶつければ良いんだ。

米原了嗣、お前のせいだ。

いつか殴り倒してやる。


さて、次は塩か。

なんだろう、もう絶対無駄な気がする。

でもここまで来たら一応試すか。

部屋の中でばらまくの嫌だから、まずは部屋の外に盛塩するかな。

小皿に小さく塩をもってドアの外に置いた。


『なんだ豪気、悪霊対策か?このアパートのみんなは力が強いからよ、悪霊なんて来ないから盛塩なんていらないぞボケェ。』


この幽霊は、語尾に「ゴラァ」とか「ボケェ」とか「カス」つけないとしゃべれないのだろうか?

猫耳少女の語尾が「にゃん」みたいなものかな?

謎だ。


そっと盛塩の小皿をユウ美に突き付けてみる。

ユウ美、平然と盛塩を受け取り、台所に流してしまった。


ああ、これ全然だめなやつだ。

ユウ美は塩を台所に流すと、俺の見ていたノートPCをのぞき込む。


『おい、豪気お前!アタイを祓う気だったのかゴラァ!舐めた事しやがると呪い殺すぞボケカスが!』


くそおおお、インターネットの知識はあんまりあてにならない!

学生時代、グーグル先生に聞けばなんでも解決すると思ってた。

でも今なら分かる、インターネットの知識はあてにならない。

仕事でも何度やられたことか。

今回も、大事なことは分からない。


「もう信じない!インターネトなんて信じないんだから!」


俺は無言で検索ワードを入れる。


『気の迷い 謝る方法 女子高生に』


のぞき込んでいたユウ美の眉間に皺が寄る。


『口で言えよボケェ。本当はアタイの事が見えているんだろ。意地張らないで普通に謝れやゴラァ。』


まいったな。

爺ちゃんの遺言(?)で幽霊が見えていることを気づかれてはいけないって言われてるからなあ。

今はこれが精いっぱい。

これならギリギリ、見えたことにならないよな。


「うん、大丈夫。ギリギリOKだな。」

『おい、何一人で納得してやがるんだゴラァ。』


さて、幽霊と微妙なコミュニケーションをとっている場合じゃない。

そろそろ、知人が来る。


ちらりと時計を見っとき


ぴーんぽん


「おっと、あいつらが来たようだな。」


『なんだよ、知り合いが来たのかゴラァ?』


ガチャリとドアを開ける。

すると、二人の男女が並んでした。


「師匠、引っ越し祝い持ってきました。」


ふんわり系中学生男子にしか見えないこいつは、こう見えて大学2年生。

合法ショタと名高い、寺脇京太。


「あ、あの、お久しぶりっす。」

京太の隣に立つデカイ筋肉女は、京太の妹の寺脇小花。

一見、霊長類最強系女子に見えるが、こう見えて女子力は高い。


しかし、いつ見ても姉と弟に見えるなあ。本当は兄と妹なのに。


「小花も東京に進学できたんだな。まあ狭いところだけど遠慮なく入ってくれ。」


二人を招き入れ、お茶を用意する。

女子高生幽霊は、一応様子を見ているのか大人しい。

うん、こいつはしばらく無視していていいだろう。


京太は周りを見渡すと苦笑いをした。

「師匠は相変わらず部屋に他人が居ても気にしないんですね。」


そういいながら、明らかにユウ美の方を向いていた。


『おい小僧!アタイの事が見えるのか。』


ユウ美の問いかけに京太は無視して続ける。


「この方向に幽霊いますよ。僕って霊感が強いんで分かるんですよ。たぶん女性ですよ。凄く強い幽霊ですね。」


俺がお茶を持ってくると、小花がそっと俺からお茶を受け取り上品にちゃぶ台に並べた。

うん、小花は相変わらずだな。


「そうなのか?俺は幽霊とか全く信じないから、そこにヤンキー女子高生がいるなんて気づかなったぞ。」


『おい、この小僧はアタイが女子高生だなんて一言も言ってねーぞ!やっぱりアタイの事見えてるんじゃないか!』


おっと失敗。

俺はユウ美から目をそらす。


「実は、お隣さんが教えてくれたから居るのは知ってたんだよ。ユウ美っていうらしいぞ。そっか、やっぱり居るのかー。」

『テキトウぶっこいてんじゃねーぞ。メイ子さんは名前しか言ってなかったよな。しかもヤンキーってなんだゴラァ!見えてるんだろボケカスが!』


うん、ユウ美に誤魔化しがきかなくなってきた。

こういう時は無視に限るな。話が進まないし。


「こほん、それよりあれだね。二人とも大学生になったのか。小学生のころから見ている身としては感慨深いよ、うん。」


京太は嬉しそうに頭をかく。

「師匠のおかげですよ。それで一つ相談なんですが良いでしょうか?」


「ん、なんだ?」


「僕と小花に、東京でも稽古つけてもらえないでしょうか。月謝払いますんで。」


小花も頭を下げる。

「ご迷惑でなければ、お願いしたいっす。」


少し間を置き俺は気づいてしまった。

「もしかして、俺が失業したから気を使ってるのか?」


京太と小花は大げさなジェスチャーで否定してくる。

「ちがいますよ!むしろ逆です、逆。いままで忙しくて連絡もあんまり取れなかったんで、遠慮して言い出せなかったんですよ。」

「そうっす。私も兄ちゃんも稽古したかったんすが、師匠が忙しそうで言い出せなかっただけっすよ。」


こいつら、俺に気を遣わせまいとしてくれているんだな。

くっ、ここはありがたく厚意に甘えるとしよう。


「そうなのか、まあ俺としては問題ないからいつでも来てくれよ。」


優しい連中だ。

ちょっと涙が出そう。


部屋の隅っこを見ると、退屈そうにユウ美がスマホをいじりだした。

あ、それ俺のスマホなんだけど・・・。


まあいいか。大人しくしてくれているなら。


すると小花が遠慮がちに微笑む。

「さっそく今日からでもいいっすか?」


「俺は構わないけど・・・京太もそれでいいのか?」


「むしろお願いします。」


「そっか。じゃあこのアパートは庭があるからそこでやろうか。」


そういって外に出る。

二人一緒に外に出たが、なぜかユウ美も一緒に出てきてしまう。


『何やるんだボケカス!』


暇人か、この幽霊!

いや、暇人なのは当然か。だって幽霊だもの。


庭に出ると、京太と小花は俺に一礼する。

「よろしくお願いします。」


俺も一礼した。

「お願いします。では初歩の型から始めよう。表技・打の一本目。」


俺と一緒に二人も構える。

まずは京太から。俺が打ち込むと京太はそれを受けて俺に打撃を打ち込む。

そこから関節をとり、抑え込み、最後は絞める。


うん、見事な動きだ。


次は小花に打ち込む。

同じように俺の打撃を受けて、俺に打撃を入れ、関節を捕り俺を絞める。

180cm以上の巨体が、肉食獣のようにしなやかに動くさまは見事としか言いようがない。


「うん、二人とも良い動きだ。京太は受けるときの力みを減らせるようにしてみ。小花は絞めるときにもっと丁寧にな。」


そう、二人は俺の実家の生徒だったのだ。

俺の実家が寺なのだが、なぜか武術の道場もやっていた。

父ちゃんよりも俺の方が上手になってしまったので、中学生の頃には道場生の面倒も見ていたのだ。

その頃にこいつらは入門したんで、いまだに俺を師匠と呼ぶんだよな。


まあ、父ちゃんよりも俺の方がうまくなったのは仕方がない。

だって死んだ爺ちゃんに英才教育されていたんだから・・・。


まあそれはさておき、こうやって稽古をつけるのは懐かしい。


ユウ美が目をキラキラさせながらこっちを見ている。

『おい、お前もしかしてケンカ強いんかゴラァ。だったらアタイとタイマンしろや!』


ヤンキー(戦闘員族)の血が騒いでいるようだ。

ホント面倒くさい幽霊だな。


すると小花が、ユウ美の方向にパンチの素振りを始めた。

なんか小声で言ってる。


「師匠に喧嘩を売るなら、まずは私が買うっす」


う~ん、小声過ぎてこっちには聞こえない。

っていうか空を切る拳の音がバシュッシ、バッシュとうるさいな。


『ぐおを、やるかゴリラ女!くそ、くそ、なんだこのパンチ、女のパンチじゃねーぞゴラァ!』


「師匠は、相手を幽霊と気づかないほど霊感が強くて、よく悪霊を人間と勘違いして殴り倒していたっす。私はそんな師匠の弟子。ならその意味は分かるっすね。」


小花は声が小さいうえに、パンチの空を切る音がすごくて何を言ってるか全然聞こえない。

だが、ユウ美がかなり慌てているのは分かる。


『ちょ、おま、まてやゴラァ。今パンチが当たったアタイの髪の毛が吹き飛んだぞクソが!まさかお前は殴って除霊できるのかボケェ!』


「できる。師匠の足元にも及ばない程度だがな。」


『ちょまて、アタイの負けだ。やめろ、危ないだろがボケェ!降参だから!分かったからゴラァ!』


小花とユウ美の声は俺にはよく届かなかった。

だが、ユウ美が滅茶苦茶ビビっていたのは分かった。

うん、小花の攻撃って怖いよな。

たぶん小花はシャドウのつもりだろうが、その攻撃が自分に向いたら普通に怖い。

迫力が凄いっていうか、、、わかるぞ。俺も何度もビビったから。


小花は動きを止めて礼をする。

ユウ美に対して礼をしているように見えるが・・・

うん、気のせいだろう。

シャドウの練習であっても一礼する。小花は心持が真っすぐな奴だからあるあるだ。




そして俺たちは、そのあと2時間ほど稽古をした。

練習後、終わりの礼。




「「師匠、ありがとうございました。」」

「ありがとうございました」


俺も一応「ありがとうございました」で返す。良い練習ができた。


さてと、部屋に帰るかなと思って振り返ると、ぱっとドアが開いた。

はい、ユウ美さんです。


『小花の姐さん、お疲れ様っす!』


思わず振り返って小花の顔を見上げてしまった。

小花はそっと目をそらす。


おっと、小花はシャイな奴だからいきなり見上げるなんて良くないよな。

俺は慌てて前を向き、深々と頭を下げているユウ美を無視するように部屋にはいった。


京太が何故かケラケラ笑ってる。

「幽霊がドア開けたwww。面白すぎるよ小花。」


なんか奇妙なことになったなと、俺も苦笑いが出た。

投稿して20分後、余計な文が最後に入っていたのを発見(汗。

修正しました。

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