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0002 新生活スタート

引っ越してきました<メイド荘>。


俺は鍵を開けて、引っ越し業者を部屋に入れる。


すると、やっぱりヤンキー女子高生の幻覚が立ちはだかった。

長い髪を脱色していて、目つきが悪い。


『おいおい、アタイの部屋に何勝手に入って来てやがるんだ!ぶっ殺すぞ!』


だが、引っ越し業者の人達は気にせず荷物を運び入れる。

彼らに幻覚は見えていないので、幻覚の女子高生はどうしようもない。


体を張って止めようとしているが、すり抜けてしまっている。


あ、涙目になった。


『くそおお、お前らアタイを無視するな!おい、ちょっと、返事しろボケ共が!』


幻覚とは言え哀れになるな。

そこで幻覚が俺を見つけた。


目が合った。


『おい!お前はこの間の奴だな!ゴラァ、もう来るなって言っただろうがボケカス!』


ずんずん蟹股で俺に近づいてくると、俺の肩をつかむ。

また顔が数センチまで近づく。

幻覚だから良いけど、これが本物の女子高生だったら逮捕されそうな距離だ。

うん、幻覚でよかった。


ねめつけてくる、すっごく。


耐えきれずに目線を外した。

『おい、なんで目をそらすんだオイ。やっぱりアタイの事見えるんだろダボが!』


そういいながら俺の周りを回りだす。

やめろ幻覚、邪魔くさいだろうが。


俺は、そんな幻覚とのやり取りを1時間ほど耐えた。

凄いぞ俺。


で、引っ越し業者の人が俺に近づいてきた。

オッちゃんの顔に女子高生の幻覚の顔が重なって、ちょっとおもしろい。


「お部屋に荷物を入れ終わりました。問題ないようでしたらサインをお願いします。」


「ご苦労様でした。ありがとございます。」


出された書類にサインして、引っ越し料を渡す。


オッチャン、まだヤンキー女子高生と重なっている。


「はい確かに。では、失礼させていただきます。」


お辞儀をして引っ越し業者さんが去って行った。

一応見送ってから部屋に戻ると、ヤンキー女子高生の幻覚が部屋の真ん中で胡坐をかいて俺をにらんでいる。


気にせずダンボールを開く。

いきなりエロ本が出てきた。


幻覚の女子高生がのぞき込んできた。


「おっとー」


俺はとっさにエロ本を隠す。


『おい、お前やっぱりアタイが見えるんだろ!なんでエロ本を隠したよ。おい、聞こえてるんだろ、おい!』


幻覚うるさいなー。


気にせずテキパキと荷物を開けて整理しはじめる。

ギャアギャアうるさい幻覚を無視して作業する俺。


騒がしい幻覚に耐えて頑張った。

凄く頑張った。


作業は夜中には終わったので、布団を引いて寝ころがる。


「あー疲れたなあ。」


寝転がると、俺の上に女子高生が浮ていた。

なんかジャージ姿になってる。


『おい、お前マジでここに住む気なんだな。名前は何て言うんだよ。』


俺は、ゆっくりと起き上がり前の会社の名刺を引っ張り出してきた。


「いっけねえ、もういらない名刺を持ってきちゃったよ。今月からNNE株式会社の阿多野豪気ではないのにな。」

これは独り言だ。決して幻覚に答えたのではない。


幻覚は俺の名刺をのぞき込む。


『あんた良いところに勤めてたんじゃん。なんで辞めたんだ?』


独り言続行。

「あーあ、辞めたくなかったな。リストラされて悲しかったぜ。思わず独り言で愚痴るとか俺も駄目だな。」


幻覚女子高生の顔が少し引きつる。

『おいおい、アタイに返事したんじゃなくて独り言だって言い張る気か?どんだけ幽霊を否定するんだよ。なあ見えてるんだろ、素直に認めろよボケ。』


俺は、再度横になって布団をかぶった。

今夜はエロ本を見るのは我慢する事にした。


引っ越しで思ったよりも疲れていたのだろう。

すぐに落ちるように眠った・・・



てーれってってー、れってってー



朝になる。


伸びをして目を覚ます。

「ふー、良く寝た。」


目の前に、逆さに浮いているジャージの女子高生幻覚が見えるが気にしない。

トイレに行き、歯を磨き、朝食を作り始めた。


そのあたりで幻覚女子高生が目を覚ます。

鏡越しに見ていると、もぞもぞ着替えだした。


ヤバイ、女子高生の着替えを覗いたら社会的に殺される。

ふぅ、女子高生が幻覚じゃなかったら(社会的に)即死だったぜ。


幻覚女子高生は、ジャージから普通の制服姿になった。

あの脱いだジャージはどこにいくのだろう?

謎だ。


着替えが終わると、幻覚のヤンキー女子高生はフラフラ俺に近づいてきた。

背中越しに俺の作っている朝ご飯を見てくる。


『おい、美味そうじゃないか。アタイにも分けてくれよなオイ。』


図々しい幻覚である。


俺は、無言で二人分のスクランブルエッグとトーストを用意した。


「くそ、間違えて二人分つくっちまったか。まあ仕方ないな。」

『お前なあ・・・、意地でもそのスタンスで行く気かよゴラァ。』


二人分机に並べる。


すると、目の前の席に女子高生の幽霊・・・じゃなくて幻覚が座った。


無視して俺は手をあわせる。

「いただきます。」

『おう、サンキューな。いただきます。』


俺が朝食を食べだすと、女子高生の幻覚も食べ始めた。

目の前の食事が減っていく。

どういう原理で消えて行ってるんだ?

謎だ。

あれかな、幻覚が食べているように見えているけど本当は俺が食べているのか?

うん、きっとそうだな。


食事が終わり、また両手をあわせる。


「ごちそうさま。」

『ごっそさん。』


食事を片付けて、ふと思い出した。

(そういえば、ここの門を入ったすぐのところに犬がいるんだった。撫でに行こうかな。)


急いでジーパンに着替えて外に出た。

幻覚もついてくる。


ルンルン気分で犬小屋を見ると、当然居た。

白くて大きな犬、総司が。


よっしゃ、撫でるぞおお。


「よーしよしよししょし。お前は賢い犬だな。」


『おい、総司には声かけるのかよゴラァ。アタイの事は無視するのにどういう事だボケ!』


幻覚女子高生がうるさい。

「幻覚に返事するわけないよな、総司。よーしよしよしよし。」


『アタイは幻覚じゃねーよ。幽霊だっちゅうのボケカス。』


幻覚を無視して犬の総司を堪能する。

犬は良いね、心が癒されるよ。


そこで101号室から、清楚美人さんが出てきた。

何故か今日もメイド服。


「あら、先日の方。もしかして102号室へ入居された阿多野豪気さんですか?」


「あ、こんにちわ。そうです昨日引っ越してきました。よろしくお願いします。」


「そうでしたか。私は101号室の怨田メイ子と申します。お隣さんとしてよろしくお願いいたします。」


「こちらこそよろしくお願いいたします。」


朝から美人との会話。ここに越してきてよかったー。


『おい、メイ子さんには返事するのかよ。アタイの事は無視するのにおかしくねーか?おい、くそ野郎。』


その言葉を無視していると、メイ子さんが不思議そうな顔で俺を見た。


「あの、、、102号室に越してきてユウ美ちゃんの霊とは仲良くやれそうですか?」


んん?

すこし気になる言い方をされたが、アレだな。

きっと、いままで何人も幽霊騒ぎで出ていったから気にしてくれているんだな。


「いえいえ、幽霊なんて居るわけないじゃないですか。俺はそういうのを絶対信じないので大丈夫ですよ。」


メイ子さんが、めっちゃ微妙な表情をした。

苦笑いのような困惑した表情。


「そ、そうなんですか?もしもユウ美ちゃんが見えたら、祓ったりしないであげてくださいね。言葉は荒いですが良い子なので。」


「分かりました。もしも、そんな幽霊が居ても祓わないでおきますね。ま、居たらですが。」


「あ、ありがとうございます。」


メイ子さんは微妙な表情のまま一礼すると、箒をもって門に向かって歩き出す。

これから掃除だろうか?

管理人さんなのかな?


メイ子さんが離れていったので、俺は改めて俺が住む<メイド荘>を見上げた。


二階建て、6世帯が住めるアパート。


これからここで住む。

「ここでの生活、なにか面白い事が起きそうな予感がするなあ。」


『おい、幽霊のアタイと暮らしている時点で面白い事じゃねーのか?おい返事しろやクソが。』


爽やかな新生活のスタートを感じた。


『おい、無視するな!呪い殺すぞボケが!』


「今日も一日、がんばるぞい!」


『無視するなあああああああ。』


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