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ファンタジーな世界をさまよう女性

「お局様 新たに中臈に召されましたチサにござりまする」

梅山が小柄な体をいっそう小さくして平伏する。

それに連れてチサとおよのもかしこまって深く頭をたれる。

局は3人が部屋に入って来る時から、チサを細かく観察して

和島の言う通り人に優れて美しい所は少しもないと思い

(上様はいったいどこにお心引かれあそばしたのか)頭の隅で

考えつつ 「チサ 顔を上げよ」と命じた。

言われるままチサはゆっくりと面を上げ、臆する様子もなく

局をひたと見つめる。局は小さくうなずくような素振りをして

「わらわの病中に上様のお眼に止まりしと聞く。

 さてもめでたい事じゃ 昨日 中奥にお伺い致したおりも

 しきりにそちのことを話しておられた。かかるほどに

 ご寵愛深い身を大切にして上様のおん為 心してお仕え

 せねばなりませぬぞ」 「はい かしこまりました」

「また 今日からは春日を母がわりと思い、何事も包み隠さず

 心安らかに話すが良い。だが 母ともなれば甘いばかり

 ではない 時には厳しく言わねばならぬ事もある。

 覚悟しておくがよい」と 家光の側女として鍛えてくれと

頼まれている局はつい チサを前に気負ってしまう。

だがチサはにっこり笑って 「はい」と素直に頭を下げた。

局は初めて自分に会っても臆するところのないチサに

やはり並みの女とは少し違うと感じていた。 間もなく

梅山は下がってゆき局は、これから同じ部屋に住む

お蘭を初め侍女達にチサとおよのを引き合わせた

チサの侍女にはおよのの他に新たに かな江 おこうと

いう20歳位の、いかにもしっかり者というような二人が

付けられた。 そうこうしている内にお鈴廊下に鈴の音が

響き 将軍仏間拝礼のための大奥入りとなる。

家光は春日局の横にお蘭と共に神妙に控えている

チサを見てにっこり笑った。

それから10日位たったある日 かねてより呉服の間に

注問してあったチサの衣装が部屋に届いた。

それは 1枚は白地に大きな牡丹の花 それに蝶々が

4、5匹飛んでいて、裾と袖は十二単えのように色々な

色の生地が重ね合わせてあるという珍しい仕立てであり

もう1枚は大胆な柄ゆきで黄色地に淡い緑の若竹

竹の葉は本来の物よりグッと大きく描き、色は思い切って

目の覚めるような赤 葉の中ほどには金泥をぬって

華やかさを添えていた。拡げて見ると黄色地の中にくっきりと

浮き上がってみえ例え100m先からでもはっきり模様が

分かるほど一目を引く、若さあふれるデザイン

残る1枚は濃紺の地に白の花菱のような小花が背の中心に

深い黄と赤で大きく染め抜かれたカトレアの花

花から放射線状にどこまでも伸びてゆくといった華やかデザイン

この3枚をが部屋の衣桁に呉服の間頭 お由井の手でかけられた時

局始めお蘭他 部屋中の者がアッと声を上げて衣桁前に

すいよせられた。     続く。

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