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フォンタジーな世界をさまよう女性

そういった賛否両論の渦巻く中臈チサを、預かる梅山は元々小心者 毎日が身も細る思いである。

長局中 どこに行ってもチサのことが耳に入るし、今 ご寵愛深い彼女の身に

万が一の不祥事でもおきたらと心配で堪らない。元来 お手付き中臈はお年寄りとの

合部屋と定められており、その監督を受ける事になっていた。しかし今はそれを決定する

春日局不在とあって、まだ梅山の部屋に同居している。

その日は非番であったので疲れた身体を部屋で休めていた。

すっかり春めいた庭先に眼を向けていると、心も和みほんのりとして来る。

チサはと言うと、これはおよの達と一緒にせっせと部屋中の掃除をしていた。

中臈はそんな事はしなくていいのだと言っても、じっと座っているなんて退屈な事は

出来ないと言って聞き入れない。さっさと庭掃きもするし拭き掃除もする。

さすがに用所(トイレ)だけはおよの達が断固 拒んでさせなかった。

梅山が脇息にもたれて、つい ウトウトしていると急に慌ただしい足音と共に

一番若い部屋子 お仙が泣きながら賭け戻って来た。彼女は部屋に入るなりワァと泣き伏す。

突然のことにみんなびっくりして思わずお仙の側に賭け寄った。

「お仙 どうしたのじゃ」

梅山も心配そうに尋ねたが、お仙はただ泣くばかり 見ればめくれた裾から覗く

足の脛がかなり広範囲で赤くなっていた。

「泣いていてはわかりません。 脛が赤くなっているけど転んだの」と

春江がただすとお仙は泣きじゃくりながら事の次第を告げた。

「私 先ほど 旦那様からお言いつかりの本を持って花岡様の部屋の前を通りました。

 廊下を拭き掃除なさっていたので、邪魔にならぬよう気をつけておりました。

 いつもはおしゃべりしながら賑やかになさっているのに、今日は誰も何も言わず

 妙だなぁと思いながらいますと 突然ワァッと笑われました。

 あまり急だったので 私 慌ててしまって賭けだそうとしましたらツルリと滑って

 転んでしまいその中の一人にぶつかってしまいました。そうしたら皆さんに

 さんざんな事を、、、 この頃 偉ぶって上を向いて歩くから転ぶとか

 お部屋の作法が知れますとか、 果ては嫌がらせにわざとぶつかっただろうとか

 もう さんざんな事を口々に言われて」

お仙は悔しさにまた泣き出す。春江はお仙の着物の裾にこびりついていた蝋を

指先に取って「旦那様 廊下に蝋を塗ってあったのです。わざと転ぶように」と 見せる。

「まぁ ひどい」 およの達は口々に花岡の部屋子達を非難する。

中には こんな事もありましたと告げ出す者もいる梅山は困ったように皆を手真似で押さえ

「もうよい これは部屋子の単なる悪戯であろう。あまり根に持たぬようして

 同じ縁続きの部屋じゃ みんな仲良くするように」と 諭すのだがおよの達は承知しない。

「単なる悪戯とは思えません。最近 特にあのお部屋の方私達をあしざまに言われます。

 いくらおチサ様がご寵愛深いからと言って妬きもちを焼かれても、、、

 元々 あちらのお玉様の気位いが」と とんでもないことを言い出しそうなので

梅山は慌てて その部屋子を叱り付けた。

「これ 邪推でものを言ってはならぬ」 しかし 原因が自分にあるらしいと

聞いたチサはびっくり  明日へ続く。

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