フォンタジーな世界をさまよう女性
わざわざ気を持たすように女達をグルリと見廻す。これから先の自分の言葉が嵐を巻き起こすねを楽しむように、、「止めなさいよ おりゅうさん」一度聞いて知っているおよのは苦々しそうに止めたが女達は聞き入れない。「いいじゃない 聞きたいわ」 「教えて 教えて」と 益々騒がしく催促する。「あのねぇ」おりゅうは一段と声を低めて、さも意味ありげに「ほら 聞いたことあるでしょう。男と女が口を舐め合うことだって」 と
言ったので女達の驚きは大変なもの 悲鳴をあげて口を覆う者 顔をまっ赤にして袖で隠す者 耳を押さえて頭を振る者など大変な騒ぎ、 障子の内の家光も驚いた。日頃 自分の前では、しとやかに振る舞っている女達がと、、、 とは言っても今 その庭にいる女達はみな お末か高職者の部屋子ばかりなので直接将軍が目にする事は無い。しかしそれは家光の知らぬ事 彼はいつも大奥に居並ぶ女達の中の者と思ったのだ。
その時 「ああ あ 呆れた」と ひと声大きなチサの声 「あなた達はキス いいえ つまり口づけを知らないの それとも猫被って知らない振りをしているの」 「まあー猫被りなんてしてないわ。じゃあ おチサさんはしたことがあるの」と お末の一人が興味深げに聞く「キスくらいなら何人かしたことあるわよ。ボーイフレンドとね」 「そのボーイフレ何とかって何」 「男の友達の事よ」 「男の人の友達」 「ええ みんないるでしょ、幼なじみとか 学校いいえ寺子屋でいっしょになった時、特に気の合った男の子」 「そんな人いないわ」とか「それならいるわ」とかいろいろ分かれる。「そんな人達よ。遠い外国の高い山 まだ人が登った事のない山に一人で山頂を目指すって言うから、感激するじゃない。だから頑張ってねとほっぺにチュッとして
あげたのよ」 「その人 あなたのお婿さんになる人」 「違うわよ 友達って言ったじゃない。結婚する人は別よ。私が愛した人じゃなきゃ まだいないけど」 「じゃあ お婿さんじゃない人に口づけしてあげたの」としつこく尋ねる。「そうよ いいじゃない、 それ以上はしないんだから。友達何だから当たり前よ。それにキスはさっきおりゅうさんが言ったような、口を舐め合うなんていう汚らしい感じじゃないわよ。キスにもいろいろあってオデコやほっぺにチュッとするのは親しみのキス 親子 兄弟 友達関係の間かな。唇を合わすのは愛してる人 恋人とかね。それよりもっと深い結婚する相手とはまた別よ。うちの部屋の春江様はれっきとした許婚け同志何だからキスはおろか もっと先でも」 明日へ続く。




