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チサの愛と迷い

それを糊づけすると立派な兜である。早速 四人は庭に

降り、小さな木刀を振り回してふざけ出した。

まったく元気な男の子 そんな様子を見るお楽達の

まなざしは愛にあふれ、側にいるチサにも温もりが

伝わった。 フイに胸がつまり思いがけず瞼の裏が熱く

なり出した。急な思いに驚くチサ いったいどうしたと

言うのかこの切なさは、、、奥歯を噛み締めて出ようと

する涙を押し止める。幸いといおうかみな 走り回る

子供達を見ていてチサの表情が変わった事に気づく者は

いなかった。チサの心の底に眠らせていた父母への想い

姉への想い 何げない日々の楽しかった生活

帰郷して来た姉夫婦と甥っこ 姪っこの姿 さして

広くもない我が家の庭を、アパート暮らしの二人は

楽しげに走り回っていた懐かしく帰らない日々

チサの沈んでいる様子に気づいたのはやはりおよの

だった。梅山の部屋でお茶を立てたあの時以来 およのは

チサに取って一番気の許せる友であったし、およのも

そうだった。「おチサ様」 どうかしたのというように

小さく声をかけ、心配げに顔を伺う。ハッとして顔を

見合わすチサ 慌てて首をふり「何でもありません

少し陽に当たりすぎたのでしょうか。若君達の元気さに

 気負けしました」と 微笑む。「ご気分が悪いのですか」

お楽の方と佐和も心配そうに覗き込む。

「いえ いえ ご心配には及びません。この所何かと

 気ぜわしく 今日はここにお招き頂きホッとして

 いたところです。若君の元気絞りご様子に和んだので

 ございます」と 明るい笑みを浮かべた。

「その上 部屋の方でもこちらでも方餅を食べすぎ

 ちよっと胸苦しくなってしまいました」 「まぁ~」と

周りを笑わせる。しかし その胸苦しさは大奥に戻っても

日が過ぎても澱のように心に降り積もって行った。

自分はここで何をしているのだろう。これからどうなる

のだろう 大切に思ってくれる人はいる。およの お楽

佐和 お松 梅山 お万の方他にも、、、

愛してくれる人もいる 他ならぬ家光であった。

確かに上様は私を愛してくれている でも 私は 私は

あの方をし愛しているのだろうか、、、そんな疑問が

胸に膨らむ。今まで、、名実ともにお手付き中臈になった

夜からただ真っすぐに、突き進んできた。当時の女性なら

権力者に愛されたなら、その愛を信じ失わないようにいる

事につとめるのが普通なのだろう。こんな事を考える

自分はやはりここにいる人達とは違う現代人 家族も

いない根無し草 考え出す当時思考は悪い方へ悪い方へと

流れる。


続く。

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