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ファンタジーな世界をさまよう女性

「あのチサがですか」 信じられぬというようにお方は

伊豆守をまじまじと見つめた。「それがご本人でも

占いであって占いではないというようにはっきり説明は

 出来ないと申されまして、当たる事もあればハズレる

 事もあると、、、だが今までに徳川の為になった事は

 数々あるとお局様も申されておりました。しかしそれを

 直接上様に告げられては困るという事で、お局様が

 今までは事前に聞いておき、より良き方向に取り計ら

 って来たそうでござる」 「そうですか」

「その役を今度はそれがしが引き受ける事になり申した。

 それにつけてはおチサ様と、時々会う必要がござる。

 それでお局様と知恵を絞り考えついたのがおチサ様を

 お方様の侍女という事にして、中奥へ来て頂くという

 事でござった」 「それでこのたびの侍女付き添いが

 決まったのですね」

「さようでござる。お局様が申されたのは我が身亡き後

 大奥を任せられるのはお万の方より他に無い

 チサの事もよう頼んでおいて下されとのお言葉で

 ござった。聞けばお方様とおチサ様はさながらご姉妹の

 ように御仲睦まじいとか」 「そんな事までお局様は

ご存知でしたか」 「チサにもお方様の立ち居振る舞いを

少しは見習って欲しい等と言っておられました」 「まぁ」

お万の方にとって聞くのは二度目とは言え心外な気もした。

お方が大奥に入ってから、何かにつけては姑のような目付き

で見 口ではきれい言を並べていても決して心を許しては

くれなかった局がいったいどうしたのであろうか。

人は死を目前にするとそんなに人が変わるものなのか。

訝しげなお万の方に、伊豆守は冷や汗 噴き出る思いである。

もとよりこれは、彼自身のつくり言であるからにしてお万が

不思議がるのも無理はない。局のお万の方に対する反目は

良く知っていた伊豆守であった。しかし ここは何としても

お方様に納得して貰わなければならない。

「それゆえ お局様は気がかりな大奥の事 おチサ様の事を

 お方様に託して行かれたのではございませぬかな ご生前

 お方様に対する兎角の噂はこの伊豆も聞いておりますが

 心の奥底ではお方様の人柄を良く見抜かれて、ひそかに

 心頼りにしていられたのではないかと推察する次第で

 ござる」と 言い切ってじっとお万の方の澄んだ瞳を

見つめた。


続く。

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