フォンタジーな世界をさまよう女性
今 はっきりと胸に鋭い痛みと共によみがえって来た。「そんな 大昔に」ワア~とチサは打ちのめされたように泣きくずれた。取り返しのできないところに追い詰められた。信じられない事だった 信じたくない事だった。しかし 現実は厳しく変わりようもない。気が狂ったように泣き伏すチサに驚いたのはおよの「ねぇ どうしたの ねぇ いったいどうなさったのよ」と オロオロして背をなぜる。だがどうして気が静まろうチサはたった一人で350年以上の大昔に取り残去れてしまったのだ。父や母 姉 友人達と離れて、、、ああ今頃 あの人達はどんなに心配している事だろう。結婚式の帰りに行方不明になった娘を気も狂わんばかりに探し歩いているに違いない。帰りたい 今すぐ帰りたい だがと涙ながらにチサは思う。帰る術がどこにあるというのだ。ここにあの{オズ}という機械はない。いや 日本中どこを探したって過去の世界に何もあるはずがないのだ。自分はたった一人でこの昔の世界に放り出されたのだ。そう思えば泣いても泣いても泣き尽くせなかった。一方 およのはチサが何故 そう悲しむのか訳が分からない。松島様が亡くなられたのがそんなに悲しいことだったのか、そんなに親しい人だったのかしら分からない。なんだか自分も泣きたくなってしまう。放って置いて行ってしまおうかとも思うが、旦那様に世話を頼むと言われているし そうもできない「お茶でも立てましょうか」温かいものでも飲んだら気が落ち着くかも知れないと彼女は考えたのである。およのが次の間でお茶の用意をしている間 泣き疲れて少し気が落ち着いたチサは涙を拭おうと持っていたハンドバッグの口を開けた。 明日へ続く。