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聖女の私と盗賊頭な彼女  作者: 無夢
聖女になったけど、盗賊頭の親友に会って盗賊に所属した。
2/8

2、安全な場所・・・・?

1/19 ちょっと修正

「おい、朝だぞ」

「ううん・・・あと10分・・・」

「朝飯抜きでもいいなら寝てて構わないが」

「食べる!!」

慌てて起き上がると、テントの入り口にあきれた表情の悠李がたっていた。慌てて身なりを整えてテントの外に出る。あ、めちゃくちゃいい匂い。

「よく眠れたようで何より」

「あ、うん。お風呂入ってからすぐ寝ちゃって・・・髪ぼさぼさだよ・・・」

「寒くなくてよかったな、風邪ひいてたかもしれない」

悠李はもうすでに身なりを整えていて、なんというか盗賊なんだろうけど、おしゃれというか・・・汚くはないファッションとしての盗賊というか・・・なんといえばいいんだろう・・・謎だ。

「悠李、こうもうちょっと女の子っぽい恰好しないの?」

「この格好のほうが溶け込みやすい、あと、女って一目でわかるとなめられる」

「あー・・・」

確かに今の悠李はぱっと見は青年だ。中性的な。ちょっとイケメンで悔しいような・・・

「一応、頭だからな、かわい子姿だとなめられる可能性あるし、あと服を選ぶのめんどい。これもザイナーセレクトだ」

「あぁ、悠李。そういう性格だったね」

基本、モノクロコーデ、およびジーパンにシャツ、困ったときはマネキンの服をくださいだった。

悠李についていくと昨日夕食を食べた場所についた。丸太が転がしてあって椅子になってる。

ほかの盗賊たちは何人かは起きてるけど、まだ起きていない人もいるみたいだなぁ。

「このあと、その悠李はどうするの?アジトに帰るとか?」

「あぁ、そうだな・・・優紀次第だな」

「わ、私次第?」

「あぁ」

待ってろと言って去っていった悠李はすぐに戻ってきて、布の塊を差し出してきた。

「中身、パンとチーズ飲み物はこっちの筒」

「わ、ありがとう」

「で、さっきの話の続きだが・・・優紀が王都に帰りたいってなら送るし、帰りたくないならとりあえず安全なところに送る。今、転生・転移者だってばれると面倒だからな」

「え?」

転生者は聞いたことあるけど、転移者は聞いたことがない。意味的に多分トリップしてきた人のことだと思うんだけど。

多分表情に現れたんだと思う。悠李は少ししかめっ面して声を小さくして教えてくれた。

「異世界から召喚されたものって意味だ。基本的になにか特別な能力を持ってるのが確定されているって信じられてるものでな・・・今、誘拐されることが多くなってる」

「は・・・」

「・・・気分悪くなるかもしれないけど、奴隷対象だ。高く売れるんだよ」

血の気が引いた。だって、奴隷なんて、あまりに現実離れしている。私がいた王都にも確かに奴隷はいたけど、どの奴隷も別種族だった。

でも、悠李はここでこの話をするということはここでも、人族が奴隷にされることを危惧しているってことだ。

悠李はうわさをすぐに信じたりはしない。ほかの人に話すときだって、これは噂だけど・・・ってつけたりする。

なのにそれがないってことは、多分実際に見たことがあるんだ。

「少し前に個々の近くを通った貨物車にいたのは人だった。そういった商売してるやつに話を聞いてみれば、高く買い取るってことだ。しかも、転移者は基本的に鑑定スキル持ちだから手元に置くことも考えてるって話だ」

「悠李はその・・・人が乗った貨物車を見逃したの・・・?」

「・・・私は正義の味方じゃない。見知らぬ人を助けるメリットよりでかい奴隷商敵に回すデメリットのほうがでかい。生き残るためにはそれしかなかったとしか言えないな」

「・・・・」

わかってる。悠李は、生きるための選択をした。1人なら相手をしたかもしれない。でも、多分その時には、もうすでに盗賊団がいた。部下を危険にさらすことはできないって判断したんだと思う。

「なんというか・・・悠李はこの世界に素早く順応したというか・・・対応したというか」

「私は、元の世界に戻れる可能性は0に等しいからな。すでに死んだ身、だったら次の生を生きるしかないだろう。ここは夢でもゲームでも漫画でもない現実だからな」

「ゲームのように生き返れるわけでもない、何度も繰り返せるわけでもない、クエストがあるわけでも、ストーリーがあるわけでもない。漫画のようにすごい力を持っているわけでもない、ご都合主義が聞くわけでもない」

「守るために何かを捨てて、生きるために何かを殺す、そういう世界だからな」

真面目に悠李はそういった。私もちょっと前にこの世界は現実なんだって思って、それで生き延びるために従っている。

でも、どこかでこれはいつか覚める夢なんじゃないかって思っている部分もどこかある。

でも、悠李はそれを完全に否定した。悠李は、もう私たちがいた世界では死んでしまっている可能性が強い。だからなのかもしれない。

そんな悠李からの言葉だ。重みがあって現実味があって、心にずっしりとくる・・・・









「・・・悠李、口元にパンのカスついている」

「おっと」

はずなんだけどなぁ・・・・どこか抜けてるんだよなぁ・・・シリアスな話なのになんだろう、こう、気が抜ける感じ。

でも、だからこそ、聞く気になるというか、記憶に残るというか。

余裕をもってちゃんと真剣に聞けるんだと思う。

「人生はいつだって分岐点だらけで、1本道だらけチャンスだらけで、落とし穴だらけ」

「だらけ多くない?ゲシュタルト崩壊しない?あと矛盾してない?」

「優紀が王国から逃げ出すチャンスなのかもしれないし、盗賊に身を落とす落とし穴なのかもしれない。そういった道で分岐点なのかもしれないし、今まで通りの生活を送るっていうだけの1本道の途中なのかもしれない。横にちらっと看板が見えるだけの」

「・・・・」

「まぁ、()()()()()優紀にまかせるよ。どっち選んだってきっと後悔するし、よかったと思うだろうし」

なんというか、悠李は本当に不思議な子だなぁと思う。真理をつくというか、どこか正しいけれどどこか正しくないようなことをこういう時に限っていうんだ。

ちゃんと考えなきゃいけないんだと思う。悠李に決めてもらうのは簡単だろうし、頼んだらやってくれるだろう。

けれど、悠李は言うだろう。

『人に任せるという選択をしたのは優紀だ』と。これもまた選択。自分が選んだ結果。

()()()()()なのだ。しっかり考えなければ。

「あ、できればほかの仲間が朝食食べ終わる前に決めてほしい。今日はどっちにしろ移動する予定だしな」

「意外と即決を求めるね?!」

しっかりと考える余裕あるかな?!



〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△〇×△


「安全なところに送ってください」

「ん、わかった」

そういった私に悠李は全く気負った様子なく返事をすると、盗賊団のメンバーを集めて声をかけたはじめた。

「とりあえず、アジトに帰ります。騎士団倒したのはゴブリンだけど、このままだと多分私たちのせいにされるからなー」

「王国のやつらきたなーい」

「ちょっと生き残ってたやつが斬りつけようとしたのを斬ったのはノーカンでいいですかー?」

「見なかったことにしてくださーい。というわけでここから近いナルシスの泉に向かう」

「りょーかいでーす」

「・・・・ナルシスの泉?」

がやがやと移動の準備をする盗賊団の邪魔にならないように指定されていた(ほろ)馬車に乗る。

・・・ナルシスの泉なんてこの近くにあったっけ?

「・・・あ、そうか。ここでは人食いの泉っていうんだっけ?」

「え、あの湖の水を覗くと湖に食われるとか、大量の血痕を残して消えるとかいわくつきの・・・?あそこをアジトにしてるの・・・?」

え、まさかこの盗賊団が犯人・・・・?まさかの真実・・・でも、それにしてはあんまりにおかしい死に方らしいけど。

「いや、アジトにしてないよ。アジトに通じる道がそこなんだ」

「???」

もすっと何かが詰まった麻袋を幌馬車に積みながら悠李は答えてくれたけど、余計意味が分からない。

あとで教えるといった悠李はどこかに行ってしまう。ちょっと心細い。

この決断は王都にいるクラスメイトを見捨てることになってしまうかもしれない。多分アジトは王都には近くないんだと思う。

もう戻ることはできない。私は完全に王国の意思に逆らった状態だ。頼れるのは悠李だけ。

・・・なんだろう、クラスメイトより悠李に頼れるって考えたほうが安心感があるのは。

「お頭らー、幌馬車に入って大丈夫っすよ!あ、お尻が痛むのを心配してるんすか?!安心してください!!このカラクの愛の詰まったハート型クッションがあれば快適っすよ!」

「・・・・・」

「あぁ、お頭のその道端に落ちてる石ころをチラ見するような目!じっと見てこないところがまたこうクるっす!!お頭!俺の愛をそのお尻でつぶしぐぼぁ!!」

「カラク、お前懲りないな・・・」

「裁縫教えてほしいって言ったときは驚いたけど、そのためか、納得」

「でも、もらってくれるお頭、最高っす・・・!」

もそっと死んだ目をした悠李が幌馬車に乗り込んできた。

「すごく・・・お疲れ様です・・・・」

「あいつ、ああみえて、すげぇハイスペックなんだ・・・打たれ強いというか・・・」

「・・・どんまい・・・」

「あ、さっきの話だけどな、あの湖にはちょっと特殊な魅了チャームの呪文がかかってるんだ」

「・・・湖に魅了の魔法?誰がそんなこと・・・」

「さぁ?ただあの湖を覗くと高確率で自分が好きで好きでたまらなくなるんだよな・・・強めにビンタするか最初から防ぐ術をかけてれば回避できるんだけど・・・そのせいで湖に映った自分に口づけしようとしたり、飛びつこうとしたりして、湖に入るんだ。で、湖自体も実はあれ、生き物でな湖に入ったものを取り込む。大量の血痕は大方、好きすぎて自分を食べちまったっていうカニバリズムの気があったやつだと思う。残った残骸は森のモンスターか動物が食ったんだろうな」

「・・・・え、それって想像・・・?」

「いや、うちの仲間が何人かかかった。ビンタで起きたやつとかからなかったやつがいた。あと自分を食べようとした奴もいた」

「思わぬ性癖の暴露・・・!」

「というより性欲より食い気が強い奴でな。本人は水面に美味しそうなローストチキンがうつったんだといっていたよ」

「そっち・・・?!なんかちょっとだけ回復した!!精神が!!」

「正直、おっさんが『あぁ、なんて俺は美しいんだ!!』ってうっとりしながら言うのはかなりおぞましかった」

「やめて!想像しちゃう!!思いっきり脳内に再生されちゃう!!」

「あぁ、ちなみにカラクは『ぺろっ、これはお頭にビンタされるチャンス?!』とかいって水面を覗こうとしてたから覗く前にグーで殴っておいた」

「ぶれない!カラクさんぶれない!!安心できないはずの存在なのにこの話だと安心要素だ!!」

ツッコミが!追いつかなくなる!!なんでこうホラーになりえる話が笑い話にチェンジされるんだろう・・・!

「まぁ、そのあといろいろあってそこがアジトにつながる入口の1つになった」

「なにをどうしたらそうなるの?そのあといろいろあった部分がとっても気になる。でも、確かにナルシスの泉って呼ぶ理由はわかった気がする」

ナルシストになっちゃう泉ってことね。多分ギリシャ神話からもとってるね。(気になる人はナルキッソスで検索)

完全に説明するのがめんどくさいですという表情の悠李からなんとか話を聞く。悠李は説明下手だと思う。

で、悠李の話をまとめたところによるとこういうことらしい。

ナルシスの泉は、実は魔物に近しい存在で、大昔に誰かが魅了の魔法をかけたことから意識を持つようになったらしい。

そして人や生き物、モンスターを取り込んでいくうちにはっきりとした意識と魔力を持つようになり、より強い魅了がかけられるようになり、もっと強くなっていった。

でも、元は泉なのでそれを利用した魔法が使えるということ。しかも魔力を持っているので普通よりすごい魔法が使えるとのこと。

ナルシスの泉はそれを利用してたまにいろいろな湖に道をつないで獲物を増やしているらしい

たまに湖に沈んで見つからなくなったということがあれば、多分ナルシスの泉が犯人(・・泉?)とのこと。

・・・私、もう湖に気軽に入れない。

まぁ、基本騒ぎにならない程度に狩っているそうなので、もう不幸としか言いようがないと悠李は言っていた。でも、他の泉なら何か違うものを差し出せば見逃すことも多いとのこと。

悠李たちはそれを利用して、貢物を出す代わりにアジトへの道をつないでもらっているとのこと。

本人は普通に交渉したと言っているけど、多分力業な感じがする。

「お頭ー、着きましたぜー」

「了解」

幌馬車の隙間から見ると大きな泉が・・・・いや、あれ湖じゃない?

「なんか想像してたよりも大きい・・・」

「色んなもん食って大きくなったらしいぜ」

近くにいたクランクさんが答えてくれた。悠李はとっくに幌馬車から降りて湖に向かってる。

そして湖に向かってぽいっと拳ぐらいの石を投げた。水面に波がたつ。

その波がどんどん大きくなっていく。なのに、水が縁からこぼれることはなくて、あ、本当にこの泉魔物よりなんだと思った。

そして跳ね上がった水がぐるりと渦巻き、泉の底が見えるようになった。

でも、そこにそこはなくてトンネルみたいな感じになって、どこかにつながってる感バリバリだ。

「いくぞ」

悠李の掛け声で、盗賊団は迷うことなくそのトンネルに入っていく。私が乗った幌馬車もはいっていく。思わずごくりと唾を飲み込んだ。

殿がはいると水が落ちはじめて、来た道をふさいでいく。これ本当に大丈夫?急に全部沈んだりしない?

「沈んだりしない。そんなことしたら泉の水全部ぶっ飛ばすって言ってある」

「うわぁ!びっくりした!!いつのまに・・!あとそれ、信じられてるの・・・?」

「さっき戻ってきた。水吹っ飛ばすのは実際に二回やってる。交渉の時と、大きくなって調子乗った時」

「やっぱり力業・・・・!」

私の予想はあってた。多分、最初は普通に交渉して泉が向かってきたんだろうなぁ・・・・それで吹っ飛ばしたんだろうな・・・

「あれ、悠李パンチとかで吹っ飛ばしたの?それならもう身体能力すごいね」

「いや、火を噴いた」

「まって?噴いた?え?道具?」

「いや、口」

「まって??」

「あ、ほら着いたぞ」

「ちょ?説明して?なんで火を噴けるの?ドラゴンを食べたせいなの?え?どういうこと?」

「ここが私の思いつく限り安全な場所だ」

幌が少し持ち上げられ外の様子が目全体にうつる。

ざわざわわいわいと賑わいのある街。たくさんの人が歩き、騒ぎあって、明るい。たくさんの種族もいるように見える。

エルフ、獣人、いろいろ、もちろん人もいる。活気のある街だ。











「ここは私たちのアジトのある【クレフティス】、通称盗賊の島だ!」

「悠李の安全の定義を教えて?」

盗賊の島、つまりここにいる全員盗賊だよね?!どこが安全?!

少し得意げな顔をしている悠李にどうツッコミを入れればいいのかわからないよ!!



ちなみに、カラクさんの愛の詰まったハート型クッションは、悠李の背中に置かれていました。


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