第三話
一瞬の浮遊感から解放され、思わず尻餅をつき何が起こったかと周りを確認すると、森の奥にログハウスのような木で造られた手造り感満載だが立派な家が現れた。
「ここが私の家です」
と言いながらロロティアがドアを開けると綺麗な女性が待っていた。
栗色の髪は肩まで長く、大きい目、美人としか言いようがなかった。
「ただいま。ルル。」
「お帰りなさい。その子は何?まさかさらってきたとか?ダメよロロ!返しに行ってきなさい!」
この女性…少し天然が入っているのかもしれない。
「落ち着いて下さい、ルル。この子は拾ったんですよ……息子にしようと連れてきました。」
「あら……そうなの?ロロの息子?ってことは……私の……息子?」
「はい。そうですよ。」
「本当に?」
とロアの方を向いて言うのでロアはコクリと頷いた。
「えぇ。」
更にロロティアが念を押し、ルルがロロティアとロアを交互に見てピクピクし、そして…
「キャー!可愛い!!私の息子!」
ルルが座っていた時には気づかなかったが、ルルは義足だった。
「気付きましたか。ルルは貴族同士が喧嘩を始めた場所に偶然いただけで左足を切断されました。だから私は貴族を許さない……そしてルルの足のために必ず『再生の書』を手に入れてみせます……。」
静かにそして冷静に語るロロティアだったがその目には決意が表れていた。
「それが『義賊』や『大盗賊』と呼ばれてるワケですか……。」
「ねぇ、そういえば名前を聞いてなかったわね?」
今思い出したと言うようにルルが尋ねた。
ロアは少し悲しそうな表情をした後ではっきりと
「『僕』はあの時狼に襲われて死にました……『俺』に新しい名前をくれませんか?」
その顔は決意に満ちていた。
「そうですね……ルル、名前を付けるのも親の楽しみですよ?ルルに任せます」
「そうね!」
ルルはそう言うとテーブルの上にあった紙に真剣に名前を書いてはクシャクシャに丸めて捨てを繰り返した。そう考える事数分。
「決まった!アナタはエルよ!エル・フロウ よ!」
『ロア』は死に、『エル』としての新しい生活が始まった。