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56.刀完成

次の日、俺が向かったのは鍛冶屋であった。


俺が頼んでいた刀がどこまで出来ているのか確認するためだ。


この国には刀という概念が存在しない。


もしかしたら、他の国には有るのかもしれないが、まだこの国には広まっていない。


そこで俺が考えたのは、刀を王に献上することだ。


この国の王は、珍しい武器の収集癖がある。


それはもう、その武器を手に入れるためなら何でもするほどに


過去にも、ダンジョンから発掘された珍しい武器を献上した貴族が、領土を広げてもらったということがある。


だから、俺も刀を献上すれば領土拡大も可能ではないのかなと思った。


ちなみに王のコレクションの中に刀がないこともリサーチ済みだ。


「お、旦那!今日はどういったご用意で?」


鍛冶場に入ると、一仕事終えた後であろうエイグルが声をかけてきた。


鍛冶場には、エイグルの他に2人のドワーフがいる。


「刀の出来はどうかなと思いまして。」


刀の製造を依頼してから3ヶ月が経過している。


まあ、3ヶ月程度では完成はしていないと思うが、それでもいい。


王も所詮コレクションなので、刀を実際に使うことはない。


日本刀特有の美しさを半分でも体現出来ていればそれでいい。


「まだ完成とは言えねーが、これが今までで一番の出来の物だ。」


エイグルから渡されたのは、一見すると刀そのもの。


刀身の反りや鎬という刀身の側面にある山形に高くなっている筋など、中々の出来だ。


完璧とは言えないが、鑑賞用としては十分かな。


流石はドワーフといったところか。


刀身だけとはいえ普通、作り方を教えても3ヶ月でここまで作ることは出来ないのではないだろうか。


「中々の出来ですね。」


「いや、まだまだだ。見た目はかなり綺麗に出来たとは思うが切れ味に納得がいかねー。」


「それでも、たった三ヶ月でここまで出来れば上出来ですよ。それに、ここまで出来てれば、王に献上しても大丈夫かもしれません。」


王という単語を聞いてエイグルの目が大きく開かれた。


「ちょっと待ってくだせー。王に献上するなんてのは初耳ですぜ!?」


「今、初めて言いましたからね。」


俺はイタズラが成功した子供のように笑いながらそう言った。


「何笑ってんですか!?まさか、それを献上するつもりで?」


「いえ、後3ヶ月の内に出来た一番出来の良いのを献上するつもりです。切れ味は二の次で良いので、見た目を美しく仕上がるようにしてください。鞘や柄も合わせた完成品をお願いします。」


「分かった。王に献上しても恥ずかしくないものを作り上げると約束しよう。オメーらも話は聞いてたな!気合い入れていくぞ!」


『おー!』





それからの3ヶ月はあっという間に過ぎた。


一番の変化は、街灯が設置されたことと、3kmの壁の建設が終わったことだろう。


これによって、街の安全度も上がり夜も無店舗の商人達が活動出来るようになった。


さらに、壁の建設が終わったことで、新たな市民も住めるようになった。


これで、さらに街は発展していくことだろう。


他にもスライムを使ったゴミ処理場や自警団なども作った。


スライムは害もあまりなく何でも食べる為、こう言ったことに活用されることが多いらしい。


街が大きくなったことで、門兵や自警団、商会の公務員にかかる出費も大きくなった。


壁を広げるだけじゃなく、馬車が通りやすくするために道の舗装もやらないと行けなかったならな。


だが、ダンジョンで手に入れた指輪のお陰で、金に困ることはなかった。


Aランクの冒険者パーティーを、魔石を高値で買い取ることを条件に4組雇い、月に20個は卸すように指示した。


その買い取った物の中に、指輪の力で作り出した最高ランクの魔石を2、3個紛れ込ませて、他の商人へと売却した。


あまりにも最高ランクの魔石を入れると、稀少価値自体が下がってしまうし何かあるのではと疑われてしまう。


だから、2、3個程度に押さえているのだ。


それでも月の利益は金貨100枚にもなるため金に困ることはない。




さてと、ようやく三ヶ月経った訳だが、エイグル達の様子はどうかな。


「旦那!来やしたね。完成してますぜ!」


俺が鍛冶場に着くなり、エイグルは待ち構えていたかのように寄ってきた。


そうして渡された刀を見ると、鞘はシンプルな黒色。


過度な装飾はされていない。


柄も黒を基本色とし、縦に小さく何ヵ所も三角に切り抜かれ白い生地が見えている。


シンプルな仕上がりだが、美しい。


装飾をすれば見た目がよくなるのは当然だ。


装飾をほとんどせずに、この美しさを作り出すのは苦労しただろう。


そして、鞘を抜くとそこから現れたのは、光輝く銀色の刀。


柄の黒と相まって刀身の美しさを際立てている。


見た目だけで言えば満点と言えるたろう。


「……これは良い刀ですね。」


「切れ味はまだまだだが、言われた通り見た目にこだわったからな。」


「これなら、王に献上しても大丈夫ですね。感謝しますエイグルさん。」


素直にお礼を言うと、エイグルは照れ臭そうに笑った。


「それは俺らの台詞だよ。奴隷という身分とは思えないほど良くして貰ってるし、資金が足りなくて叶わなかった刀も造らせて貰ってる。礼を言うのはこちらの方だぜ。まだ刀も完成とは言えねー。旦那のために、さらに良い物を作るよ。これからもよろしく頼む!」


「こちらこそ、よろしくお願いします。今回の報酬は弾んどきますね。」


さてと、これで下準備は終わった。


後は、書類を書いて送るだけだな。


そうしようと思っていた俺に、秘書のシルフィが待ったをかけた。


「お待ちください。それでは、せっかくの品を盗まれてしまう可能性もあります。それに、顔を王に覚えていただけるチャンスです。実際に持っていく方が良いでしょう。」


「それもそうだな。よし、じゃあ、初の王都行ってくるか。」


「はい。こちらのことはお任せください。」


こうして、街のことはシルフィに任せ、王都に行くことが決定した。

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