表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/56

53.ダンジョン(5)

(クソ、これじゃあ戻れねーじゃねーか。)


これでもうラスボスを倒す以外、この部屋からでる術を失ってしまった。


安易に入るべきじゃなかった。


後悔の念に駆られるが、もう遅い。


覚悟を決めるしかなさそうだ。


10m程度の通路を進むと、その先には円上の広場が広がっていた。


その作りは、闘技場のようであった。


そして、円の中心には大きな魔方陣が描かれていた。


1歩広場へと足を踏み入れると、その魔方陣が青く光る。


そこから現れたのは、7mは有りそうな巨人であった。


オーガをデカくしたようなその風貌に、右手には巨大な剣、左手には盾を持っている。


こいつは本で見たことあるな。


確か、名をオーディス。


Sランクに指定されている魔物だ。


Sランクは、1体で国を滅ぼすことが出来るほどの戦力を持つ魔物に与えられる。


それにしても、デカイな。


こんなのと戦うのかよ。


でも、こんだけデカイと動きは遅いかもな。


そう思ったとき、オーディスは予想よりも遥かに速い動きで踏み出し、気づいたときには巨大な剣が目の前まで迫っていた。


「な!」


距離は50mはあったのに、それを一瞬で縮めてきた。


虚を突かれた攻撃だったが、紙一重でその攻撃をかわした。


「ドン!」


物凄い轟音が洞窟に響く。


剣が振り下ろされたところを見ると、地面が抉れていた。


「あっぶねー!」


オーディスはそこからさらに横薙ぎに払ってきた。


それをジャンプをして何とか避けた。


息つく暇もない。


こいつを倒すのは難しそうだ。


スピードは互角でパワーは俺よりある。


速さを3倍、力を2倍、頭――思考速度を1.5倍の今の強化倍率では分が悪すぎる。


俺は全能力を10倍まで強化することが出来る。


だが、強化魔法は全てが万能というわけではない。


その分多大な魔力を消失するため、10倍まで高めると最強になれるが5分しか持たない。


リミット付きの力を使うのは、勇気がいる。


5分で倒せなかった場合、待っているのは死だからだ。


この力は、他に手が無くなった時に取っておこう。


とりあえず、スピードでは勝っておきたい。


速さを5倍までアップする。


それに伴って、動体視力や耐久性などもアップする。


そうしないと体がスピードに付いていけないし耐えられないのだ。


1つを強化すると、他も強化しないといけなくなるのが難点でもある。


スピードで勝った俺は、オーディスの攻撃が地面を抉った瞬間に、デカイ腕に乗り顔付近まで走る。


オーディスは、急に上がったスピードに驚きを隠せない。


そのまま、肩にたどり着くと思いっきり上段から振り下ろした。


まるで鋼でも斬ったかのようなキーンと甲高い音が響く。


俺の攻撃は、皮膚さえも傷つけることが出来ていなかった。


「硬すぎんだろ!」


自然とその言葉が漏れる。


その直後、オーディスの左手が肩の上の俺を払おうと迫る。


一旦オーディスから降りて体勢を立て直す。


まさか、傷ひとつ付けられないとは。


予想外の硬さだ。


力を強化しても剣が持たないだろう。


強化するとしたら武器の切れ味か。


「武器強化。」


武器を3倍に強化し、もう一度チャレンジした。


同じように、オーディスの腕を伝い、肩までいくと斬りつけた。


オーディスは、さっきで俺の攻撃が効かないことを知ってか余裕の態度だった。


「グオォォォ!」


ち!肉は斬れたが骨までは全然だな。


掠り傷程度ってとこか。


だが、傷を与えたことでオーディスの様子が変わった。


今まではどこか舐めた態度だったが、傷を負って俺を敵と認識したようだ。


「うお!」


オーディスによって振り落とされる。


オーディスのスピードを警戒して一旦距離をとるが、今までと動きが違った。


剣を上段に構え振り下ろそうとしているその攻撃は、俺との距離が50m以上も離れている。


当然当たるわけがないのだが、オーディスはそのまま地面に叩きつけた。


「ドドドドド!」


その瞬間、地面が割れそれが俺の元まで伸びてきた。


「――!」


横に飛び何とかかわしたが、オーディスはすでに盾で体当たりしに来ていた。


オーディスの巨大な盾が俺の目前まで迫っており、これをかわすのは不可能だと瞬時に悟った。


(耐久性7倍強化)


武器と体の耐久性を上げて、その攻撃を受け止めようとしたが、吹っ飛ばされ壁に叩きつけられる。


耐久性強化のお陰で、ダメージはあまりないが危なかった。


まさか、遠距離攻撃があるとは。


あれは、土魔法の一種だろう。


多分、オーディスは武器を媒体にしてしか魔法を使えないのだろう。


武器を媒体にしてしか魔法を使えない人は意外と多い。


杖という武器に需要があるのもそのせいだ。


はあ、打つ手がねぇな。


5倍強化でも、相当な魔力を使うのだが、全然勝てる気配がない。


7~8倍強化して、ようやくまともなダメージを与えられるってとこだろう。


7~8倍の強化での可能戦闘時間は15分程度だが、多分倒しきれないだろう。


それなら10倍強化で、一気に方をつけにいった方が勝てる可能性が高い。


雷魔法もあるが、決定打を与えられるような魔法はない。


覚悟を決めるか。


5分耐えきったらお前の勝ち。


5分で倒せたら俺の勝ち。


「さあ、デスマッチを始めようぜ!」


全ての能力と武器の性能を、最大の10倍まで強化する。


ここからは、俺の独壇場だ。


俺が右腕めがけジャンプすると、ダンという轟音が鳴り響く。


オーディスは俺の動きが見えておらず、簡単に右腕へといけた。


7mもの巨体となると、一撃で斬り落とすことは武器のリーチ上出来ない。


だから、斬り落とせるまで何度も斬る。


「グオォォォ!」


オーディスが斬られた瞬間に悲鳴をあげ、反射的に斬られたところを左手で押さえようとしてくる。


その左手を避けて、右腕の反対側に回り込みさらに斬る。


オーディスは俺を振り落とそうと必死に暴れたり、左手で潰そうとしたりしてくるが、止めることは出来ない。


思考速度と動体視力も強化されているため、オーディスの動きはスローモーションように見えていた。


両側から斬り続けた腕は、最後の一斬りまで来た。


「ウォォォ!」


最後の一振りで、オーディスの体から右腕が無くなった。


ここまでの時間は約30秒


次は左腕だ。


右腕が無くなったお掛げで、オーディスの抵抗手段が1つ減ったので先程より楽にいけた。


しかし、左腕を斬り落とした瞬間、驚くべきことが起きた。


最後に、遮るものが無くなった頭を斬り落としてやろうと、頭を見据えたとき視界の左隅に剣が迫っているのが見えた。


スローモーションで見えているため避けるのは簡単だったのだが、その攻撃はさっき斬り落とした筈の右腕からだった。


見ると、無い筈の右腕が普通に存在していた。


「再生能力も持ってるのかよ!」


残り4分。


オーディスの蹴りをかわしながら、再度右腕を斬り落としに掛かる。


だが、斬り落とした時には左腕が再生しており、このままではジリ貧だ。


もういっそのこと、腕は無視して頭を斬り落とすかと思ったが、首を攻撃すると、盾でガードするのだ。


反対側が空いているため、そこから斬り込むも、右腕が再生し終わった瞬間両腕を使って首を隠しに来た。


これでは無理だ。


腕を斬り落とさなければ、首への攻撃は難しい。


残り3分。


残り2分。


と時間だけが過ぎていく。


しかし、ここで気づいた。


オーディスの再生速度が落ちてきているのだ。


これならば、再生しきる前に頭を落とせるかもしれない。


左腕を斬り落とし、右腕だけとなった状態から首を斬り落としに掛かる。


残り1分。


「ウォォォォ――!」


首を何度も斬りつけ、後もう少しと言うところまでいき、イケると思った。


でも無情にも左腕が再生し終わった。


残り30秒。


魔力切れをお越しかけているため、体が重く感じる。


残された最後の手段。


それは、一撃で首を斬り落とすことだ。


もうこれ以外に方法はなかった。


「サンダーソード。」


もう1つの魔法である雷魔法。


これを今まで使わなかったのは、使うと5分という制限時間が魔力を使うため短くなるからだ。


だが、残り時間が短い今、それはあまり関係ない。


残った魔力を使い、5mの雷剣を造り出す。


オーディスは、それを脅威と感じてか剣を構え接近してきた。


振り下ろされた剣をジャンプして避け、そのまま首に接近した。


「これで終わりだーーーー!」


オーディスは首を盾でガードしていたが、そのまま横薙ぎに払った。


俺の雷剣は、盾を斬り首をも斬った。


「ドスン。」


首が斬り落とされたオーディスは、そのまま後ろに倒れた。


「――やったのか。」


残り時間0秒。


(頼む。このまま死んでいてくれ。)


全魔力を使いきった俺は、オーディスを完全に倒したのか確認できないまま、意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ