46.シャルとクレア
「うぅん」
太陽の光で目が覚めたの。
横にはお姉ちゃんがまだ寝てるよ。
外からはお兄ちゃんが特訓している音が聞こえてくるの。
いつも通りの朝なの。
そのことにホッとしたよ。
いつも朝起きたら大好きなお兄ちゃん、お姉ちゃん達が居なくなってないか心配になるの。
お父さんとお母さんがそうだったから……。
でも寂しくないんだよ!
だって、お兄ちゃんがいるもん!
お兄ちゃんは強くて優しくてカッコいいんだ!
私の自慢のお兄ちゃんなの!
「うぅん。」
あ、お姉ちゃんが起きたみたいなの。
「おはようなの。お姉ちゃん。」
目が覚めると、クレアと目があった。
クレアはもう起きてたみたい。
「おはよう。クレア。」
クレアと一緒にお着替えして、部屋から出た。
そしたら、スッゴいいい匂いがしてきた。
シルフィさんが来て、お料理してるのかなと思って見てみたら、アンドレアおばさんだったよ。
「おばちゃん!おはようなの。」
クレアが元気よく挨拶する。
「おばさん。おはよう。」
「シャルちゃんクレアちゃん、おはよう。」
いつもは、シルフィさんが作ってくれるんだけど、たまにおばさんが朝と夜にお料理を作りに来てくれるんだ。
そして、一緒に食べて一緒にお仕事に行くの。
私とクレアは、おばさんの宿屋でお手伝いしてるんだ。
「あ、お兄ちゃん!」
その声でお兄さんが帰ってきたことがわかった。
声がした方を見ると、クレアがお兄さんに抱きついていた。
羨ましいな。
私もあんな風に抱きつきたいけど、ちょっと恥ずかしいんだ。
私の方がクレアよりお姉ちゃんなんだから、しっかりしないとダメだよね。
「シャルもおいで」
私が素直になれずにいたら、お兄さんの方から言ってきてくれた。
私は思いっきりお兄さんに抱きついた。
お兄さんは頭を優しく撫でてくれる。
そして、お兄さんの匂い。
とても安心するんだ。
「よし、ご飯を食べようか。」
お兄さんが私から離れる。
ちょっと名残惜しいけど我慢しないとダメだよね。
おばさんが作ってくれた料理を皆で一緒に食べる。
この時が一番楽しい。
大好きなお兄さんやおばさんといられるから。
お兄さんは、最近忙しいみたいであまり一緒にいられないんだ。
でも、ご飯だけは必ず一緒に食べてくれるんだ。
だから、ご飯食べてるときが一番幸せなんだ。
ご飯を食べ終えたら、午前中はお部屋のお掃除とかお洗濯とかをするんだ。
まだ、お家には家政婦さんって言う人がいないから、私達でやらないといけないんだ。
お兄さんは忙しいから家事をやる時間もないもんね。
だから、私達が手伝ってるんだ。
そして、それが終わったらクレアと宿屋にしゅぱーつ!
着く頃にはお昼だから大忙し。
お客さんがたくさん来るんだ。
料理を運んだり注文を受けたりするのが私たちのお仕事。
たまにクレアが失敗しちゃうけど、みんな優しいから笑って許してくるよ。
だけど、中には優しくないお客さんもいて、その時は他のお客さんやおばさんが助けてくれるの。
みんな優しいから、このお仕事は好き。
お客さんが少なくなってきたら、お部屋のお掃除をするんだ。
この時間は、ご飯を食べに来るお客さんが少ないから、お掃除する時間なんだよ。
クレアと一緒に、床を拭いたりホウキで掃いたり、お洗濯したりするんだ。
こんな感じで夜までお仕事して、お客さんが少なくなったらお家に帰るんだ。
おばさんはここに住んでるし、後片付けとかいろいろあるからお見送りには来れない――時々一緒に帰ってご飯とか作ってくれるけどね。
だから、私たち2人だけでお家まで帰るんだ。
お外はもう真っ暗だから少し怖いけど、頑張って帰るよ。
そして、家に帰ってお兄さんとご飯食べて、寝るんだ。
これが私の生活だよ。
ある日、今日もいつもと同じ生活だと思ってたけど違ったよ。
お仕事が終わって、真っ暗な中クレアと帰ってたんだ。
「ルンルンルン、ルンルンルン、ルンルンルン、ルン!」
クレアは上機嫌に鼻唄混じりの歌を歌ってる。
いつもは人がたくさんいて、屋台が並んでいるところもこの時間だと誰もいなくて、とても静かなの。
「ねえ、君たち。」
すると、誰かに後ろから声を掛けられた。
後ろを見てみると、顔は暗くてあまり見えなかったけど、男の人ってことは分かったよ。
男の人は、私達と同じ目線までしゃがんで話してきたよ。
その時に、顔が見えたけど、何かニヤっとしてて気持ち悪かったよ。
「宿屋に行きたいんだけど、場所分かるかな。」
なーんだ、ただ、道を聞いただけか。
少し警戒して損したかも。
「ここを真っ直ぐ行くと見えてくるよ。」
「ありがとう。」
男の人は、私が教えた方向に歩き出した。
私達も家へと歩き出したけど、ちょっと気になるのが、クレアがさっきから何も喋らなくなったこと。
少し前まで上機嫌だったのに、さっきは私の服を掴んで、男の人から隠れるようにしていた。
クレアは、お店のお手伝いをしてるから人見知りなんてことは無いはずなんだけどな。
そう思ったとき、私の服を掴んでいたクレアの感触が無くなった。
後ろを振り返ると、さっきの男の人がクレアを抱き抱え口を押さえていた。
「んーー!んー!」
クレアは必死に暴れてるけど、大人の男の人に叶うわけもない。
「クレア!」
「おっと、静かにしな。じゃないとクレアちゃんを殺しちゃうよ。」
殺すという言葉にクレアが大人しくなる。
だけど、顔には涙を滲ませていた。
「シャルちゃん、この子を殺されたくなければこっちに来てね。」
この人は、何故か私の名前知っていた。
そういえば、お兄さんがこの世には小さな女の子のことが好きな変態がいるから、シャルとクレアも気を付けてねって言ってた。
もしかして、この人お兄さんが言ってた変態さん!?
私は、どうすることもでき無かったので男の人の所に行くしかなかった。
男の人は、クレアを下ろして右手でクレアの手を繋いだ。
そして反対の手で、男の人が手を繋いできて気持ち悪かったけど、我慢するしかなかったんだ。
けど、このままじゃダメだからどうにかしないと。
(シャル!クレアをお願いね。)
お母さんの言葉が頭をよぎる。
そうだ。私がクレアを守らないと。
男の人は、私達が子供だからって油断してるはず。
私は覚悟を決めて、男の人の手に思いっきり噛みついた。
「ーー!」
男の人は声になら無い悲鳴を上げた。
私を掴む手が離れたところを狙って逃げたし、クレアの手を掴んだ。
「クレア、逃げるよ!」
「うん!」
私たちは必死に逃げたんだよ。
でも、大人の男の人には勝てなかったみたい。
直ぐに追い付かれて、もう逃げられないことが分かっちゃった。
大声も出して助けも求めたんだよ。
でも、誰にも聞こえなかったみたい。
私達は逃げるのを諦めて、男の人と向かい合った。
男の人が徐々に近づいてくる。
私達は、それに合わせて後ろに下がる。
私はどうなってもいい。
クレアだけは何とか助けないと。
私の頭にはそれしかなかった。
「さっきは良くもやってくれたな。子供だからって優しくしてたら調子乗りやがって。お仕置きが必要だな。」
男の人はゲスな笑みを浮かべながら言う。
「クレア逃げて!」
私はクレアの手を離して、そう言った。
クレアを助けるには私が犠牲になるしかなかった。
「お姉ちゃんも一緒じゃなきゃやだ。」
でも、クレアは逃げてはくれなかった。
男の人はもう私達のすぐ目の前まで来ていた。
ああ、私はクレアを守れなかったんだ。
ごめんなさい。お母さん。
そう思ったときだった。
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